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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

02:地域の人たちと一緒に楽しくゴミを減らしたい(くるくるひろば)

季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

子どもの喘息をきっかけにゴミを減らす必要性を感じた

 

 伊藤さんがくるくるひろばを始めたきっかけは、12年ほど前にさかのぼる。
「当時5歳だった息子が、ひどい喘息で苦しんでいたんです。私は愛知県豊橋市から東京都練馬区に住んだのですが、大都市の大気汚染に気づき、ショックを受けましたね。世田谷に引っ越してから、生活クラブ生協で松葉のダイオキシン調査(注)に参加しました。毎年ダイオキシンが増えているということが分かったし、ゴミ処理場の見学ではあまりのゴミの量に驚いてしまって…。使えるものなのにドンドン捨てられているんだなと」
 子どもの喘息をなくすにはどうしたらいいのだろう。そこから大気汚染への関心が生じ、ゴミを減らす必要性を痛感した。
「私は元々ものを捨てられない性格だったので、捨てる前にご近所の方に見てもらって使えるものがあれば持って行ってもらいたいなと思って。まず自宅のガレージで『ご自由にお持ちください』と紙に書いて始めたんです。ご近所にも同じように考えていた人がいたので、お誘いして一緒に並べました」
 海外でもよく見かけるガレージセールの無料版である。毎月第3土曜日と決めて、町会でチラシも配った。すると、あれよあれよという間に参加者が増えて、家のガレージだと人が入りきらなくなってしまった。伊藤さんたちは近くの羽根木公園に場所を移し、希望者数人でシートを広げピクニック形式で始めるようになった。
「平日は働いていましたから月に2回、午前中2時間だけでした。そうしたら今度は100人、200人とすごい人になっちゃって。公園も迷惑だろうし、どうするか悩んでいたんですよね。そのときカンパ箱を置いていたのですが、結構たくさんの方が『後片付けも大変でしょ』『手伝えないからカンパします』ってお金を置いて行ってくださって。1時間で1000円ぐらいは集まりました。このペースで人が来てカンパも集まるのなら、お店を借りて常設にすることもできるかな、と考えたんですね」
 いまの空き店舗に出会ったのが、オープンの半年前。駅にも近く人通りがあり、賃料もちょうどよい物件だと思って賃貸契約しようとしたものの、伊藤さんにはお店経営の経験も全くない。最初に2カ月ずつの敷金礼金が必要になった。「寄附を呼びかけてみたら?」との仲間の発案で、クラウドファンディングにもチャレンジ。公園での常連さんたちなどの寄附でお金も集まり、店を持つことができた。
「成り行きというか、必要に迫られてここで始めちゃった感じですね。せっかく場所を確保したので毎日オープンしたい、でも毎日となると私もそんなに時間を割くわけにもいかなくて。主に経理を見ているぐらいです。そのかわり近所の方がボランティアで店番をしてくださるんですよ」

注 松葉は空気中のダイオキシンを蓄積しやすいことから、生活クラブでは組合員活動として各地の松葉を採取して、検査機関に分析してもらう活動を継続している。

(P.75~P.77記事抜粋)

 

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