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書評①『地球が燃えている』ナオミ・クライン著/ 中野真紀子、関房江訳 (大月書店 2020)

季刊『社会運動』2021年10月発行【444号】特集:再生可能エネルギー――気候危機と生活クラブ

気候危機に立ち向かうために、必要なことは何か?

 

生活クラブ生協・神奈川 常務理事 柳下信宏

 

 著者のナオミ・クラインは『ブランドなんか、いらない』、『ショック・ドクトリン』などの邦訳でも著名なカナダ国籍を持つジャーナリスト・活動家である。『地球が燃えている(邦訳)』(原題ON FIRE)は、2010年から2019年までの気候危機をめぐるクラインの論文や講演などをまとめたものである。ハリケーン、海底油田の爆発、山火事など、具体的な出来事を詳細に描写しながら、気候危機の問題と、気候危機を招いている新自由主義の構造的な問題が記述される。

 

問題を正しく言語化することの重要性

 

 日本では新自由主義的な「改革」で世のなかが良くならないのは「改革」が足りないからだとの言説がはびこる。いまや「改革」とは、失政を正当化し、私物化をすすめる盗人猛々しい主張になった。過去には年越し派遣村など、問題が可視化されたことで、政権交代も起こったが、民主党の未熟さへの失望が、アベノミクスへの期待となり、嘘と忖度で塗り固められた政治、公共的な言葉が意味を失う事態を招いている。
 序章ではグレタ・トゥーンベリらによる学校ストライキについて述べる。「子どもたちが一斉に授業を放棄して行進することにした理由は、気候変動について学んだからだけではない。彼らの多くにとって気候変動は現実の生活体験だったのだ」と。確かに、猛暑、台風、豪雨など気候変動は激しさを増し「異常」気象が常態化している。洪水や干魃、海面上昇など、島嶼国の人々が生きる場を追われ、人類全体も持続可能性が危機に瀕している。食料は不足し低地にある人間が住む土地の多くも海面下に没する。残された時間は少ない。「海面ではなく、声を」上げなければならない。「人生を目一杯生きるという基本的な権利」のために闘わなくてはならない。
 必要なことは「気候危機の緊急性についての知識と、実際の行動の間のギャップを縮めることだ。最初の一歩は緊急事態に名前をつけることだ。なぜなら、緊急態勢に入ってはじめて、必要なことを実行する能力が見つかるからだ」。

(p.26-P.27 記事抜粋)

 

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