生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

33年前の生協運動との出会いがスタートに(韓国・城南市 社会的経済政策官/市民セクター政策機構客員研究員 崔 珉竟<チェ・ミンギョン>)

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1.住民消費者生活協同組合 1990~2013年

 

 1989年のこと、それは私が通う住民教会の李海學牧師が「住民信用協同組合」を設立して10年目にあたり、牧師は教会の女性信者を主体とする生活協同組合を設立しようと考えました。その目的は、ウルグアイラウンド(貿易自由化を促進するために行われた多国間の通商交渉)で打撃を受ける農村経済の回復と、食べ物の安全性を確保することでした。そして李海學牧師の提案を受けて私は設立準備運営委員会(7人)を組織し、組合員の加入促進と教育活動、生産地開発と供給事業など、教会の後輩である女性とともに生協活動を始めました。
 1990年3月には、住民消費者生活協同組合として本格的に事業を開始しました。しかし活動するなかで、信協京畿連合会から日本の生活クラブ生協が研修生を募集しているとの情報を得、生協運動が地域社会に定着するためにはより専門的な知識と経験が必要と判断し、生活クラブ生協・東京に1990年末から1年間の研修に参加しました(注1)。
 帰国後、私は住民生協の専従職員として地域の市民に生協への加入を勧めました。組合員が運営する共同班、地区や各種委員会、月別予約共同購入、信頼される生産地の開発、毎月の増資活動など、これらは当時、韓国で活動していた生協としては初めての組織運営方式だったので、多くの生協が住民生協へ見学や研修に来ました。
 私が2013年に常務理事(日本の専務理事に相当)を退任するまで、1996年度には生活クラブ・東京との姉妹提携を締結、1997年度には仁川と京畿地域の生協によって「首都圏事業連合会(現トゥレ生協連合会)」を設立するなど、様々なことがありました。1990年に37世帯でスタートした住民生協は、いまや1万6000世帯、8つの直営店舗、年間売上高70億ウォン(約7億円)の規模に成長しました。さらに住民生協は様々な委員会活動を通じて地域の環境運動、生活政治、代案教育など多様な運動の基盤をつくり、市民活動家を輩出する役割を果たしています。

 

2.「城南市 サルリムの経済 ハンマダン」執行委員長、社会的経済ネットワーク準備委員長

 

 2011年に私は「城南市サルリムの経済 ハンマダン」(注2)の執行委員長を務め、韓国社会で社会的経済の「多様性、ガバナンス、ネットワーク」を公論化(注3)する重要な契機をつくりました。そして、2013年には官民の協力により「城南市社会的経済活性化のための9つの政策議題」を発表し、課題を解決するための重要な指標をつくり出しました。この3年間は、城南市において社会的経済が定着していく重要な時期であり、民間と行政のガバナンス、社会的経済組織間の相互連帯をつくる役割を果たしてきました。

 

3.「京畿道協同組合協議会」及び「社会的経済連帯会議」運営委員長 2013年3月~2015年5月

 

 韓国で2012年に協同組合基本法が施行された後、京畿道内の協同組合の連帯による事業力の強化、制度の改善、広報のために「京畿道協同組合協議会」が設立され、私は運営委員長となって京畿道内に11の協同組合協議会を設立しました。また、京畿道内の社会的経済(社会的企業、マウル企業(注4)、協同組合、自活企業(注5))の連帯組織である「京畿道社会的経済連帯会議」の運営委員長として、部門間の協業と地域ネットワークの構築、さらに「京畿道社会的経済育成支援条例」の制定過程にかかわりました。

注1 当時は生活クラブ連合会と韓国の信用協同組合とで提携協議会を開催しており、信用協同組合を通じて研修生を募集し、崔珉竟氏がそれに応じた経過がある。

注2 サルリムとは生かす、ハンマダンはみんなが集まって祭りを行うという意味。城南市サルリムの経済ハンマダンでは、城南市が事業費を支援し、全国の社会的経済組織が集まってシンポジウムと現場訪問などが2泊3日にわたり行われた。

注3 行政中心に進められたことを社会的経済企業の当事者組織が主体的に世論化させることで社会的な論点を作り出すこと。

注4 地域社会に必要なビジネスの担い手であり、①地域資源を活用した収益事業であること、②地域社会の問題を解決して所得や雇用をもたらす企業であること、③地域コミュニティの利益を効果的に実現する企業、の特性を持つ。自治体が認定して支援を行っている。

注5 「国民基礎生活基本法」(日本の生活保護法にあたる)は、貧困層の経済的自立のための活動を推進する事業を定めており、その事業から生まれたのが自活企業である。

(P.121-P.123 記事抜粋)

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