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『社会運動』 285号

2004年9月15日

目次

第15回社会経済セミナー報告 長期不況下の中小企業は今 三浦一洋‥‥2
 生活クラブ生協・千葉の中期計画 庄村秀泰‥‥14
<この一枚>ヴァスコ・ダ・ガマから500年の「海賊行為」‥‥20
東アジア・ヨーロッパ・アメリカの進歩的研究者フォーラム2003 グローバル化とマルティラテらリズム 佐藤浩一‥‥21
障害者の労働とB型社会的協同組合 同一賃金と運営参加を保障のイタリア欺瞞的な日本の「福祉的就労」 共同連事務局長 斎藤 縣三‥‥29
東京都の障害者政策 障がい者の「働く場」の現状を報告 山口文江‥‥36
ワーコレ全国会議in北海道 ワーカーズ・コレクティブがあたたかい地域をつくる 河本美智子‥‥41

衆議院議員選挙候補者へメール 「NPO制度」についてのアンケートを実施 WNJ事務局 金忠 紘子‥‥45

<ネット>海老名市議選で2名当選現職、新人ともに当選 神奈川ネットワーク運動・海老名 後藤 晶代‥‥51

《職》の安全再考 ケン・ローチ監督が国労闘争団へカンパ フリーライター 片柳 悦正‥‥53

《書評》3つの研究会の成果を連続出版 市民による構造的改良を求めて 市民セクター政策機構 小塚 尚男‥‥58

多元的歴史観の諸相F学界に衝撃与える放射性炭素C14年代測定 東アジア交流学院 内倉 武久‥‥63

雑記帖 古田 睦美‥‥68

第15回 社会経済セミナー報告@

長期不況下の中小企業は今…競争より協同・連携こそ活力源

全国中小企業団体中央会調査部主幹 

三浦 一洋

はじめに
 全国中小企業団体中央会というと、あまり馴染みがないかもしれませんけれども、農業協同組合中央会と同じようなかたちで、中小企業の協同組合の支援・指導のために設立されている組織です。中小企業の場合、協同組合以外にもいろいろな組織があるので中小企業団体という名称を使っていますが、中小企業が協同組合をつくり、お互いに力を合わせて何かをやっていこうという時に、組織づくりから運営までのお手伝いをしております。
 小塚理事長のお話の中にもありましたが、世の中競争一辺倒の考え方で動いている。政府の政策にしても新聞にしても、とにかく競争が大事だと言っています。競争して強い者が勝ち弱い者は負ける。しかし、強い者だけが残れば世の中が良くなるのか、経済が良くなるのか、中小企業で働く人たちの状況が良くなるのか。競争は本当に経済社会を動かす原理なのか。
 私はそんな気持で仕事をしておりますが、後でお話ししますように、今は必ずしも競争の時代ではなくて、お互いに力を合わせ、また手を携えて問題を解決しなければ、やっていけない時代になっている。そういうことが世界中で起きていながら、はっきりと意識されていないのではないかと思います。

1.中小企業の景況の現状
 10年以上にわたる日本経済の不況の中で、このところ、景気に回復の兆しが見えるというような話が出てきています。しかし、そういった実感は中小企業の現場ではあまりない。もちろん、中小企業にもいろいろありますから、業績を上げている企業、従業員が毎日午後10時頃まで残業をしないと仕事をこなせない、というような企業もあります。しかし、そういう企業は例外です。
 私どもは中小企業の景況度調査をやっておりまして、全国約3000人のいろいろな業種の連絡員から、毎月、売上、収益、全体の景況等の報告をいただいています。‥‥続く

第15回 社会経済セミナー報告A

生活クラブ千葉の<中期方針>組合員は運動に、専従は経営に責任をもつ

生活クラブ生活協同組合・千葉専務理事

庄村 秀泰

 今日私に与えられた課題は、生活クラブ千葉の〈中期方針〉の説明です。お手もとの資料には、7次中期計画の主な政策を載せています。これは後で読んでいただくことにして、限られた時間ですので、7次中計のエキスと思われるところをお話ししたいと思いますが、6次中計の話をしないとつながらないと思いますので、私なりの視点で6次中計を振り返りながら7次中計をご説明して、皆さんのご参考になればと思います。

第6次中期計画からの飛躍
 7次中計は2003〜2005年度の3か年の中期計画です。その前の6次中計では、事業のシステム改革を含む構造改革と併せて、組織運営改革に取り組みました。これによって、経営改善、共同購入事業の拡大を中心課題として取り組んできたと思っていますので、組織運営改革を振り返りながらお話します。
 組織運営改革の基になっていることは、生活クラブ生協における事業を運動と経営に分けた場合、組合員が運動に責任を持ち、専従事務局が経営に責任を持とう、というふうに分担したということです。なお、専従事務局という呼び方も6次中計で決定しました。
 組合員は組合員自らの手で事務局(「組合員事務局」と言います)を新たに生み出してパートナーとし、地域を大切にした運動を行うようになりました。この時の事務局の位置づけは、事務方というような位置づけだったと思いますけれども、7次中計では、これをもう一歩進めたかたちで、「組合員事務局」とは別に「地域コーディネーター」というものを生み出すに至っています。 ‥‥続く

東アジア・ヨーロッパ・アメリカ進歩的研究者フォーラム2003

グローバル化とマルティラテラリズム東アジア・欧・米の進歩的政治をつなぐために

運動史研究家

佐藤 浩一

 2003年10月11日・12日、「グローバル化とマルティラテラリズム※−東アジア・欧・米の進歩的政治をつなぐために」をテーマとする東アジア・ヨーロッパ・アメリカ進歩的研究者東京フォーラムが開催された。北海道大学法学研究科付属高等法政教育研究センター、早稲田大学国際福祉研究科、(社)生活経済研究所とフリードリヒ・エーベルト財団東京事務所の主催で内外から多彩な人々が参加した。プログラムは、11日の基調報告とシンポジウム、12日の第1・第2セッションからなり、14日・15日に札幌で「グローバル化時代のソーシャル・ガバナンス−20世紀社会民主主義を越えて」がもたれる。このうち東京の2日間に参加した。そのおおよその内容を紹介しよう。

 

T 2つの基調報告
 まず2本の基調報告が用意された。
 第1はポール・ラスムッセン前デンマーク首相による「グローバリズムとマルティラテラリズム 新たな連鎖」と題する報告。ラスムッセン氏は、新しいグローバル秩序へのニーズに応える2国間関係、多国間関係−マルティラテラリズムの中での国民国家の役割をとりあげる。9年間の首相経験を通して社会民主主義者として「正義、人間の安全保障」の重要性を強調、今こそ個人の人権を守らなければ、それも国境以上に守らなければならないと言う。では国民国家においていかに多元主義をつくれるか。すべての人に平等な機会、権利・義務をともなう社会保障を、課税はすべての人からなどを指針とし、「デンマークでは解雇するのは簡単。なぜなら高い失業保険、就業のための教育、学校などが整い、仕事は簡単に見つけられるから」と言う。そして氏の就任時には13.5%あった失業率は2001年に4.5%となった。しかしそれにもかかわらず選挙で敗北した。
 その反省として、雇用が回復し経済は良好でも、新しい現象である移民は将来の不安を、子供たちの未来への不安をかきたてる…、これに応えてくれないと、すなわち相互依存−外の出来事とのリンクをつくらねば政権を奪われる。例えば安全保障−安心感−をつくることは、変化から身を守るのではなく変化の中で生きる術を教えることである。そしてヨーロッパ共通の価値観をつくること、共通の移民政策をもつこと等々をふまえ、2004年5月には25カ国4億5800万人の統一市場をもつEUでの新しい多元主義が問われると言う。新しいブレトンウッズ体制、新しいロードマップ、新しい条約を作らなければならないと。
 氏の基調報告は、21世紀にはいりオーストリア、イタリア、ノルウェー、デンマーク‥‥続く

障害者の労働とB型社会協同組合

同一賃金と運営参加を保障 イタリア 欺瞞的な日本の「福祉的就労」

共同連事務局長

斎藤 縣三

 今年の8月イタリアからCOIN理事長マウリツィオ・マロッタさんを大阪での第20回共同連全国大会に招請し、その後、9月、生活クラブ生協やワーカーズ・コレクティブネットワーク ジャパン、生活者ネットワーク、参加型システム研究所などの皆さんの協力をえて、東京・神奈川で講演会、交流会を持つことができた。この機に改めて、わが国とイタリアにおける障害者の就労状態の対比、障害者の労働における協同組合の可能性を考えてみたい。

1.わが国における障害者の就労状況
 日本における障害者の就労状況は毎年発表の障害者雇用調査では昨年度18.1万人(内知的障害者は13%、残りは身体障害者)。これは56人以上の規模の民間企業における常用雇用者数である。5年毎に行なわれる実態調査では身体障害者39.6万人、知的障害者6.9万人、精神障害者5.1万人、計51.6万人が働いていることとなっている。これは平成10年度の推計値で、5人以上の事業所での常用雇用者数である。一方、有効求職者数(職安に登録しているが職のない人)は昨年度15.2万人(内身体障害者11万人、知的障害者3万人、精神障害者1.2万人)なので、いわゆる失業率は5%なんてものではないことがわかる。
 しかし、これだけではよくわからない。本年3月に発表された身体及び知的障害者就業実態調査をみてみよう。
 平成13年度の身体障害者就業者数は52万人、知的障害者数は13万人とされている。これも推計値である。より詳しくみると、身体障害者の場合、常用雇用は21.4万人、臨時雇用等と合わせても25万人でしかない。自営業、家族従事者、役員が18万人もいる。授産施設、作業所などが2.6万人である。一方知的障害者をみれば、常用雇用は3.1万人、臨時雇用‥‥続く

東京都の障がい者政策

都庁でマロッタ氏歓迎の市民集会開かれる 障がい者の「働く場」の現状を報告

練馬生活者ネットワーク都議会議員

山口 文江

 イタリアには障がい者も出資し、ともに働くB型社会協同組合が現在2300団体あるそうで、そのひとつローマの協同組合連合会長であるマウリツィオ・マロッタ氏の来日を機に、生活者ネットワーク、東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合、アビリティクラブたすけあい(ACT)、生活クラブ生協などで構成する運動グループ福祉協議会が事務局となって、都庁で歓迎市民集会を開催しました。その時の同氏の基調講演、続いてパネルディスカッションという2部構成の市民集会をレポートします。

マロッタ氏の基調講演
 イタリアでは約30年前、当事者や関係者によって障がい者の権利を求める運動が始まり、まず、すべての障がい者(児)の公立学校への入学が認められました。さらに、1987年精神病院の解体により、障がい者の地域生活も進み、自立のための就労の場として協同組合が雇用を創りだしました。協同組合の民主的な運営は、障がい者が主体となって働くのにふさわしく、ひとり一票の決定権は、障がい者の主体が尊重され、自分を表現する訓練にもなるものです。
 しかし、わずかな行政の委託事業を中心とする事業は、中心メンバーの力が大きく影響し失敗も多く、80年代初めには、協同組合が連合形成することにより、経験や問題を共有し,市場獲得や資金力の強化を図りました。世論への訴えや国や地方公共団体への働きかけにより、1991年には社会協同組合(B型)設立法を獲得し、一層の促進につなげ現在も年15.6%の伸び率ということです。この法律では、障がい者のみでなく受刑者・アルコール依存者・薬物中毒者等「社会的に不利な立場にたつ人」を組合員として認め、30%以上雇用することを義務付けています。
 不利な立場の人の社会保障免除や協同組合の税制優遇、立ち上げ等資金援助、20万ユーロ未満の事業について、地方公共団体は優先的に委託するなど優遇策が講じられ、公的事業の民営化と共に多‥‥続く

第6回ワーカーズ・コレクティブ全国会議in北海道2003.10/4〜5

働きづくり まちづくりワーカーズ・コレクティブがあたたかい地域をつくる

法制化運動で浜辺哲也氏が激励と提言

 1993年第1回ワーカーズ・コレクティブ全国会議が埼玉県嵐山町、国立婦人会館で開催された。10年目にあたる2003年第6回全国会議は、これまで開催された首都圏を離れ、札幌の真新しいコンベンションホールで開かれた。ワーカーズ・コレクティブは全国で556団体、約1万5000人、事業高90億円(2001年度)規模となり、多分野で活躍している。ワーカーズ・コレクティブのメンバー310名と関連団体などを含め373名が集い、2日間にわたり、熱のこもった討議が繰り広げられた。

 

日頃の思いをぶつけた分科会
 6つの分科会にわかれ、次の分野で、ワーカーズ・コレクティブの抱えている問題を語り合い、翌日の5日に各分科会より報告された。
 第1分科会〜子育て(座長・長谷川敦子さん)では、今後の課題として、中高生の居場所つくりなどの新しい課題もみえてきた。ネットワークを組み、自分たちらしい方法を考えていきたい。
 第2分科会〜福祉(座長・小竹美智子さん)では、一般の介護福祉団体とは一味ちがう、お仕着せではなく、きめ細かな、福祉をめざしていきたい。専門性のある適正価格で独自の介護事業などに取組みたい、との意欲をもっているが、メンバー不足が悩みであること、さらに掲げる理念を語っていく必要性を感じている、との報告。
 第3部会〜食(座長・井瀧佐智子さん、報告者・柳沼みゆきさん)では、デフレ下、食部門は厳しい環境の中、あらたな事業展開をめざしている事例が紹介された。点在しているワーカーズ・コレクティブが連携を組んで1000人弱のパーティに対応する態勢がとれたこと(北海道)、大量注文に応じることの経験から危機管理のノウハウをつかんだこと(東京)、歴史のある神奈川のにんじんが20周年事業として洋菓子づくりのブランチをもったこと、など報告した‥‥
続く

衆議院議員選挙候補者へメール

「非営利協同法人制度」についてのアンケートを実施 アンケート実施の8団体で共同記者会見

ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン
事務局 金忠 紘子

 衆議院議員選挙では政党のマニフェストが話題になった。しかし、政策争点としては、今後の市民社会を切り拓いていく上で、個別の重要な課題が逆に見えなくなった面がある。選挙を前に、議員に対し、アンケートを実施している8つの市民団体が国会の議員会館で共同記者会見し、立候補している議員一人ひとりへのアンケートの実施と回答状況をマスコミに報告した。

衆議院議員選挙候補者へアンケート実施の共同記者会見を行う8つの市民団体(議員会館。10月24日)

 衆議院議員選挙が終わり、民主党が議席を増やすも、与党は安定多数の議席の確保となり、与野党の勢力関係は変わらず、イラクへの自衛隊派遣、年金改革等さまざまな懸案事項がまた政府主導で進んで行くことに危機感を感じてしまう。その中でもなかなか一般市民に分かりにくいのが「公益法人改革」である。情報公開が十分にされないまま、今どこまで進んでいるのかも分からない状況である。そういう中で「公益法人改革オンブズマン」の浜辺哲也氏と連携して衆議院議員選挙候補者へ「非営利協同法人制度」についてのアンケートを行った。
 10月4、5日の「第6回ワーカーズ・コレクティブ全国会議in北海道」に参加した浜辺氏より衆議院議員選挙候補者へ「非営利協同法人制度」についてのアンケートを行うことを提案され協力依頼があった。アンケートを行う意味は、@何が問題か、何が争点か分かりにくい「公益法人改革」(真の目的が意図的に隠されていることに起因する)の問題点を立候補者にアピールし、当選してからも問題意識を持ってもらう。Aもちろんこのアンケートに回答したかどうか、回答内容で有権者の投票の参考にして貰う。という両方の意味があるということであった。早速協力することになり、北海道NPOサポートセンター、市民セクター政策機構、ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン(WNJ)で候補者のメールアドレスを調べることに協力した。
 10月13日アンケートを発信し(趣旨説明、アンケート内容別掲)、10月18日第一次集計をホームページに公開、10月31日第2次集計を公開という予定で進んだが、その間10月24日候補者へアンケート実施している市民団体8団体で合同記者会見を参議院議員会館で行った。‥‥続く

<ネットの動き>

海老名市議選で2名当選 現職、新人ともに当選

神奈川ネットワーク運動・海老名
後藤 晶代

 海老名ネットは1990年の秋に活動を開始しました。91年に成瀬もと子を議会に送りだし、95年には成瀬もと子、後藤あき代の2人の当選を果たしました。続いて、99年には後藤あき代、三谷ゆみ子を、そして、2003年11月9日、深夜2時過ぎに、新人三宅なが子の当選が確定し、先に当確となっていた現職三谷ゆみ子と共に、2人体制を維持することに成功しました。三宅なが子で4人目のネット議員が誕生したことになります。今回の選挙は海老名ネットが設立されてから四回目の市議選になりますが、二期八年の議員の交代を2度に亘って実現してきたことを意味しています。ちなみに三谷ゆみ子は2,134票で16位、三宅なが子は1,955票で20位でした。(海老名市議会の定数は24名。)

 

今回の選挙状況
 今回の市議選は一言で表現すると、「先の読めない選挙」ということが言えるでしょう。まず、市民派と呼ばれる20代、30代の立候補者が、複数名乗りを上げたこと、その立候補者を含めて32名もの人が立候補するという情報がありました。実際、投票結果は29歳の無所属新人が3,132票を獲得し、トップ当選を果たしました。また、33歳の市民の党新人が2,955で3位当選でした。
 そして、海老名市は神奈川初の電子投票を市議選、市長選で実‥‥続く

《職》の安全再考

ケン・ローチ監督が国労闘争団へカンパ
=歌あり、踊りあり、フェスタあり=

フリーライター 片柳 悦正

起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し
さめよ我がはらから 暁は来ぬ
暴虐の鎖たつ日 旗は血に燃えて
海をへだてつ我等 かいな結びゆく
いざ闘わんいざ ふるい起ていざ
あゝインターナショナル 我等がもの

 パリ・コミューン時に作詞・作曲され、日本では一昔前の労働歌として知られて来た『インターナショナル』が今再び労働界で注目を集めようとしているのをご存知だろうか。失業問題が蓄積の一途をたどり解決の糸口を見出せない中、どこからともなく口ずさみ始められている。集会でも歌われることが多くなって来ている。11月にはニュータイプの労働文化祭『レイバーフェスタ2003』が東京で開催され、新旧の労働歌の披露や、ビデオを通して労働現場の実態やメッセージを伝え合う3分ビデオなどの上映等もなされた。
 こうしたことが起きてきたということは、高失業率・リストラ・低賃金長時間労働等が日常化したことにより、私たちの生活水準が歌詞の示すところの「飢え」の内容に近づいて来てしまっているからかも知れない。『インターナショナル』が受け入れられるような社会状況というのは生活破壊が起きている可能性が高いということを意味するかも知れないので素直に喜べないのだが、このままにしてはいけないというメッセージとしてまずは受け止め、職の安全というものを再考してみたい。‥‥続く

《書  評》

3つの研究会の成果を連続出版 市民による構造的改良を求めて

市民セクター政策機構
小塚 尚男

 今年の秋、まったく思いもよらぬことで、私が近年研究会を重ねてきた3つの会で続けて本にまとめられ発刊された。いずれにも私が執筆し、また編集にかかわったもので、少し驚きながらも、その内容と意図を3冊の本について紹介させて頂く。

@ 坪郷實編『新しい公共空間をつくる――市民活動の営みから―』
                    日本評論社  価格2,200円
A 社会的経済促進プロジェクト編『社会的経済の促進に向けて―もうひとつの構造改革
  <市民・協同セクター>形成へ―』  同時代社  価格2,200円
B 市民立法機構編『市民セクター経済圏の形成―市民ポートフォリオとNPO活動―』
                    日本評論社  価格2,200円

@『新しい公共空間をつくる』
 この本は1997年から坪郷實、林和孝、宮崎徹、柴田武男、宮城健一の諸氏が集まり、「公共性」についての研究会に継続的に参加して議論をしてきて、それを基に2000年当市民セクター政策機構へ「NPOのある公共空間研究会」立ち上げの提案があった。市民セクター政策機構の「研究会」として承認、専務理事の柏井宏之と私が加わって、ほぼ月一度のペースで行われたものである。各自のレポートや何人かの講師からのヒアリングを続ける中で、2002年の始めに「どうせなら本にして出版しよう」ということになり、執筆分担→議論→改訂をくり返し、途中日本評論社の金田功氏が参加して、出版の運びとなったものである。
 公共空間ないしは公共圏の定義は多義にわたっているが、本書では、「市民が共通に直面し共同で解決する必要のある課題のために公共政策を形成し、実施する場を『公共空間』と呼ぶことにする。」(p20坪郷)と定義するとともに、それにともなう市民のアソシエーション、コミュニティ活動を「市民活動」として表現することで全体として統一した。
 本書の内容は第1部で「公共空間とはどのようなものなのか」(林)を序として「市民活動と公共空間の現在」(坪郷)、「市民活動の変容と公共空間」(小塚)、「ボランタリー経済と公共空間」(宮崎)、「市民活動からNPOをとらえる」(林)。第2部では「まちづくりと公共空間」(宮崎)「福祉ボランタリズムがつくる新しい関係とは」(林)「地域通貨はコミュニティをつくるか」(柴田)「参加・分節型組織と公共空間の創出」(宮城)「地域政治の可能性」(坪郷)‥‥続く

<リレー連載>

多元的歴史観の諸相F

学界に衝撃与える放射性炭素C14年代測定 古代史の年代が変わる

東アジア交流学院 内倉 武久

◆500年早まる弥生時代
 今年5月19日の夕方、たまたまスイッチを入れたテレビの画面に「放射性炭素(C14)年代測定」の文字が躍っているのを見て「オオッ」とびっくりした。そしてわずか数十秒の短いコメントであったが、「放射性炭素の年代測定で、北部九州の弥生時代が定説より約500年早い紀元前800年ごろから始まったことが国立歴史民俗博物館(歴博)の調査でわかった」と報じていた。そして翌朝のほとんどの新聞はこのニュースを一面トップで扱った。日本の考古学界と古代史学界にとって実に衝撃的かつ画期的なニュースであった。これまで語られてきた古代史像を一変させることになる、ようやくその入り口に立ったのである。
 まず「放射性炭素による年代測定」について簡単に説明しよう。炭素原子(C)には質量が違う3種類の原子があり、空気中に含まれる炭素原子の中にごく微量に含まれているのがC14である。C14はそれぞれの原子がβ(べーた)線を放出して約5730年で量が半減する。生物が死ぬと新しい空気を体内に取り入れなくなるので、死骸に残っているC14の量を測ればその生物が死後何年たっているかを知ることができるのである。過去4万年ほど前までを調べられる。
 現在、世界中の考古学界がこの方法で遺跡の年代を調べている。日本では縄文時代以前の調査には使ってきたが、弥生時代以降についてはその測定結果をかたくなに拒否してきた。仮説や推測の上に立った「土器年代」を基本にしていたからである。拒否していた、あるいは現在も拒否している理由について考古研究者はいろいろ言うが、本当の理由は「土器年代」とC14など理化学的な年代測定値がかけ離れているからである。「土器年代」と日本書紀、古事記(記紀)‥‥続く

雑記帖

古田 睦美

 独立行政法人化、任期制の導入と大学を巡る状況が激変する中で、大学人は、既得権益への固執・保守と、奇をてらった大改革のはざまで方向を見失っているようにみえる。他方、地域にめをやれば、学びと実践の相互作用を繰り返す草の根のとりくみが決して絶えることなく続けられている。
 上田でも今年、私の所属する長野大学の学生たちが中心となって「学生地域くらし創り考房」というNPO活動をはじめた。放棄されていた保育園の建物を学生たちと地域のボランティアで改修しコミニティーの拠点を作った。開所式には地産地消のコミニティバザールを開いて地域通貨で楽しんでもらった。今日は拠点に併設されたオーガニック・カフェ(地域通貨が二割使える)が営業をはじめた。サブシステンス、コモンズの再創造、地域通貨やNPO等の新しい形態の地域づくりへの挑戦。若者の新しい発想が地域を繋ぎなおして行く。昨夜のイベント「みんなで学ぼう有機堆肥」には、学生と地域の老若男女が入り混じって、玄米おにぎりをほおばりながら、生ゴミを堆肥化する循環型農業の話に聞き入った。そこには、大正期の上田自由大学やブドリの学校にあったのと同じ熱気と、それらを現代的なパースペクティヴから超えていく、命に根ざした学びの躍動感があった。
 エリートを集めて遺伝子組み換え等の先端研究をする機関?そんな破滅へとむかう機関はもう要らない。そこに生きる人の命に根ざした創造的な学びの欲求、どんなに形が変わっても、この欲求に応え、この営みとともにあることが大学の、とくに地方大学の原点なのではないだろうか。



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