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『社会運動』 286号

2004年1月15日

目次

副理事長・新年の抱負 生活クラブ・東京と神奈川の今年の活動 和田安希代/大嶋朝香‥‥ 2
<この一枚>1枚の写真が国家を動かすこともある‥‥ 4
生活クラブを生んだ思想的淵源を探る 初期生活クラブ運動における「地域」「社会」「政治」 道場親信‥‥ 6
岩手の遺伝子組み換えイネ 全国から40万越す反対署名 Sub29の開発を断念させた!永井邦子‥‥17
GM作物比較実験栽培 英国:GM作物農場実験評価報告発表 倉形正則‥‥24
シリーズ:監視社会@ 監視社会から抜け出そう 小倉利丸‥‥27
第23回協同組合学会大会報告 会社化の流れや新協同組合の試練 柏井宏之‥‥32
第9回ソーシャル・アジア・フォーラムに参加して 非正規雇用が共通の課題に 成島道官‥‥40
第15回社会経済セミナー報告B こどもたちのからだと化学物質 坂下 栄‥‥49
食糧・農業についてのメッセージ@ 食糧の未来についてのマニフェスト ヴァンダナ・シヴァ‥‥59
「アソシエーション・ミニフォーラム」はじまる!‥‥ 62
<リレー連載>多元的歴史観の諸相G なぜ倭と百済は仲がよいのか(上) 兼川晋‥‥67
PACEの旗、ボードリヤールそしてフリーダ 編集子K‥‥72
月刊『社会運動』2003年バックナンバー ‥‥73
雑記帖 加藤好一‥‥76

市民セクター政策機構副理事長・新年の抱負−生活クラブ生協・東京と神奈川の今年の活動

東京

生活クラブでつくる一枚の写真から

和田 安希代
生活クラブ生協東京
理事長

 生活クラブ東京は2000年からの第3次長期計画で組織運営において、30年という生活クラブのひとつの時代にピリオドを打ちました。共同購入運動から生み出した様々な機能は、まさに生活クラブに関わる人と人の関係性を、数倍、数十倍の力にすることで形づくってきました。それは使命感でなく自分の為に必要だから他者と協同するという、極めてシンプルな動線で結んできたことでもあり今も変わりません。
 70年代は高度経済成長期という効率優先の中で起きた食・環境の問題、80年代のバブル期が引き起こした異常な経済成長と人々の孤立化、90年代の自殺者の増加、これらは経済成長をひとつの豊かさの象徴として追い求めた時代と捉えることが出来るでしょうか。私たちがピリオドを打つまでも無く今、社会的な状況は明らかにひとつのエポック(転換期)に入ったのです。今後が問われる大切な時期、だからこそもう一度シンプルに「私」という個人の意思がつながりやすい組織に転換しました。
 神野直彦氏(財政学教授)が語るエポックとは歴史的に見ても必ずしもひとつの時代の始まりではなく、その結末は新生と破局の両面を持ち合わせているとのこと。つまり既存のレールをひた走ることが許されない時代、‥‥続く

神奈川−決定権をより身近なものに

大 嶋 朝 香
生活クラブ生協神奈川理事長

 生活クラブ生協神奈川は2003年12月に10年来の念願であった法人格をもった地域生協を5つ、創立しました。地域生協は1万人規模で、「横浜北」、「みなみ」、「かわさき」、「湘南」、「さがみ」、そして地域生協の自立と発展に貢献する「ユニオン」の6つが連帯して、神奈川の生活クラブを構成します。班、戸配、デポーという3つの道具を活用して、共同購入とまちづくりを行なう地域生協、共済、福祉事業等と生活クラブ運動全般にわたる神奈川共通政策を推進するユニオンをもって2004年、新たなスタートの年を迎えることになりました。

 80年代まで経済成長していた日本は、企業社会でした。経済の繁栄が最優先される構造の中で私たちの生活全体の質は大きく変わりました。そのような中での生活クラブ運動は、生活者・市民の側から使用価値による生産、流通、消費のあり方を提案してきました。また人間を疎外して成り立つ社会に対しては、心豊かに暮らせる市民社会をめざして、さまざまなオルタナティブを実践し、『非営利、協同』の価値を拡大してきたといえます。生活クラブの運動や事業は組合員主権による自主管理、運営です。これは、問題解決を他におまかせにしないという私たちの大切な理念ですが、同時に共同購入への参加から生活や生き方を能動的に変え、『自分で考え、自分で行動する』自由で‥‥続く

「一枚の写真が国家を動かすこともある」

 メディアが事実を迅速かつ正確に報道するという本来の責務から逸脱したとき、世界は恐ろしい方向に向かいます。そして、犠牲になるのはいつの時代も声なき弱者です。氾濫する情報から信頼に足るものを見極めることは難しく、時として情報そのものにバイヤスがかかっているのが現状です。状況を正確に伝える責任あるジャーナリストがいないわけではありません。しかし、残念ながらそれらの情報を発信する場があまりにも少なすぎるのです。危機に瀕したメディアは、切迫した現在の諸問題を社会に提起することができないばかりか、問題の悪化を助長させてしまうことにもつながります。

イラク南部ハラスで白血病になった子ども。この一帯で多くの劣化ウラン弾が使用されてきた。

生活クラブを生んだ思想的淵源を探る
60年代の<地域>の発見―岩根邦雄論

初期生活クラブ運動における「地域」「社会運動」「政治」

早稲田大学非常勤講師

道場 親信

 生活クラブはどのようにして生まれたのか? 2004年の新春にあたり、すでに歴史となった生活クラブの思想的淵源を、気鋭の社会学者、道場親信氏をわずらわしてさぐってもらった。1960年の「安保・三池」の未曾有の闘いと敗北をはさんで<戦後>は終わり<高度成長>という都市社会が全国各地に興った。企業社会が全盛に向かう時代、岩根邦雄・志津子夫妻らの「地域」の発見が生活クラブというアソシエーションを生む。今、時代も大きく変わりアソシエーションの再組織化時代、改めて、初期生活クラブ運動を振り返ることは未来への糧である。(編集部)

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 一昨年私は『現代思想』誌(2002年5月号)に「1960年代における「地域」の発見と「公共性」の再定義」という論文を発表したが、ここでは「60年安保」後に社会党が採用した松下圭一・鳴海正泰(以下、原則として敬称略)らの「地域民主主義」論の登場に見られるような「地域」の発見があったと論じた。その際、生活クラブを創立した岩根邦雄の活動の出発にも「地域民主主義」論があったことに言及したところ、市民セクター政策機構の「現代アソシエーション研究会」から報告の依頼をいただいた。同研究会では2002年11月27日、03年2月25日、9月25日と3回にわたって、私自身の報告、岩根邦雄氏へのインタビュー(以下、「岩イ」と略記)、鳴海正泰氏へのインタビュー(以下、「鳴イ」と略記)というシリーズ企画を行なうことになった。以下では、研究会での報告とインタビューを踏まえ、岩根氏の動向に即して、初期生活クラブにおいて「地域」「社会運動」「政治」とはどのようなものだったのかについて考えてみたい。‥‥続く

岩手の遺伝子組み換えイネ

全国から40万越す反対署名−Sub29の開発を断念させた!

生活クラブ生協・岩手遺伝子組み換えイネ担当理事

永井 邦子

 岩手県が遺伝子組み換えイネの研究・開発を断念した。「環境首都宣言」を発した岩手県の農業と環境を守ろうという消費者・農業者の声が県に届いた画期的な瞬間と言えよう。2002年12月に愛知県が遺伝子組み換えイネ「祭り晴」(モンサント社との共同開発)を断念したのに続く開発中止であり、遺伝子組み換え作物の開発に対する自治体レベルの姿勢は、明らかに大きな変化を見せている。組合員2000名の生活クラブ生協・岩手から始まった運動が、40万筆を越える署名を集めるまでに発展した経緯を、この運動に当初から関わってきた永井邦子さんにレポートしていただいた。

■屋外実験の終了が告げられた瞬間
 11月28日、岩手県庁5階の農林水産部長室には、全国から寄せられた「遺伝子組み換えイネSub29系統」研究開発に反対する署名用紙が、うずたかく積み上げられました。その数、実に407,212筆。(右の写真は積み上げられた署名)
 署名用紙を受け取った佐々木正勝農林水産部長は、開口一番「遺伝子組み換えイネについては、当初2年計画で開始した屋外実験を、今年度で終了すること」を告げたのです。ついに、4月以来追い続けてきた課題に対して、一つの結果が実を結んだ瞬間でした。
 この8ヶ月は、まさに私たちにとって、疾風怒濤の月日だったと言えます。組合員数わずか2000名弱の生活クラブ生協岩手が、ここまで一貫して運動を続けてくることができたことは、結局、私たちがこれまで生活クラブ生協の一員として、遺伝子組み換え食品にNOの立場を堅持してきた取り組みの実績と積み重ねがあったからこ‥‥続く

GM作物比較実験栽培

英国:GM作物農場スケール評価報告発表

倉形正則)

 英国では遺伝子組み換え(GM)作物に対する全国的な論議が行われています。EUは、GM食品への全面的な表示制度導入と引き替えに、これまで続けてきたGM作物の新規承認凍結(モラトリアム)の解除を予定していますが、これと並行して英国におけるGM作物の栽培に関する可否をいくつかの側面から論議しているものです。こうした英国に於けるGM論争は、GM作物の推進を望むブレア首相の一方で、有機農業の推進とGM作物への反対を表明しているチャールズ皇太子の対立にも象徴的です。
 この間の各種報告は、ざっと列挙するだけで、
「GM作物のコストと便益に関する首相府戦略ユニットの報告」(2003.7.11)
「英国GM科学レビュー委員会の報告」(2003.7.21)
「遺伝子組み換え体(GMO)に関する国民論争の総括報告書」(2003.9.24)
「GM作物フィールド実験結果評価(農場スケール評価(FSEs))英国王立協会(2003.10.16)
等々が発表されています。
 9月に発表された英国政府が組織した遺伝子組み換え体(GMO)に関する、国民論争の結果を総括する報告書は、2003年6月から7月にかけて全国で600以上に及ぶ会合が開かれ、3万7千人以上が意見を寄せた結果の総括的な報告です。その報告では、GM食品を食べるという考えには86%が「不快だ」、GMが環境に悪影響を与える恐れがあると言う者は91%、GM技術は国民の利益よりも利潤追求に駆り立てられたものだという者が93%に達していると報告しています。GMOに対する英国民の受け止め方は、用心から懐疑を経て敵対・拒絶に至る否定的雰囲気に溢れていると総括しています。‥‥
続く

シリーズ:監視社会@

監視社会から抜け出そう

小倉 利丸
ピープルズ・プラン研究所共同代表JCA-NET理事

 必ず起きるといわれている「関東大震災」は、防災対策の必要性を確かに明らかにしている。これと軌跡を併せるように、外国人犯罪の増加や犯罪検挙率の低下などが理由とされて、その対策が声高に叫ばれている。どれもこれも、私たちの身近なところから発生して、どれも「しかたがない」ように思える。しかし、何かこうした雰囲気の管理強化がイラク派兵にあらわれるように、どこか「キナ臭ささ」を伴っている。本誌では、本号の小倉論文を初回に、「監視社会」をキーワードにシリーズを企画し、その問題点を探っていきたい。(編集部)

■――対症療法としての監視社会
 米国の同時多発テロ以降、市民の自由やプライバシーよりも、いわゆる「テロ対策」のために、警察などによる監視体制を強化する動きがかなり加速されてきた。日本の場合も、空港の監視強化から路上の監視カメラに至るまで、「監視」が話題にならない日はないといってもいいくらいだ。これまでも便宜的な言い回しとして「監視社会」という呼ぶ呼び方は以前からあったが、ある種のたとえとしてではなく、文字通りの意味として、現在の日本社会を監視社会と呼んでも差し支えないと思う。
 監視社会とは、「監視」の技術を利用して社会の秩序を維持しようとする社会のことであると定義することができる。車社会とか高齢化社会という言い回しが端的に社会の価値観や社会が関心を示す課題がどこにあるのかを示すように、監視社会は人々を監視し、また監視されることに社会が重要な価値を見いだしているということを意味している。現代の日本社会は監視社会を唯一の特徴としているわけではない。むしろ監視社会という特徴はその他の日本の社会の特徴と密接に関わる社会の一つの重要な側面である。具体的に言えば、車社会であるということは、交通監視システムの発達と不可分であるし、高齢化社会は医療、福祉、年金などの分野で人々の健康や所得などさまざまな個人データの収集と監視を生み出す。同様に、2003年3月のイラク戦争以降、日本が事実上このイラク戦争に自衛隊を出兵させるに至ってからは、日本はある種の戦時体制に移行しつつある。そうなれば、国民保護法制なども含めて、人々を戦争に動員するうえで不可欠な戦時監視体制が構築されるようになるに違いない。こうした社会のもろもろの傾向を、「監視」という観点から描くことが可能なほどに、監視が社会の重要な条件、あるいは問題となっているということを「監視社会」という捉え方は指摘しようとするものだ。
 監視社会それ自体は、あたらしい社会の理念を創ることができるわけではない。また、監視社会は現にある社会の諸問題を解決できるわけではない。むしろ社会の諸矛盾がもたらす政治、軍事、社会の諸問題を監視という手法を通じて対症療法的に押さえ込むところにその特徴がある。しかも多くの場合、深刻な副作用をもたらして市民生活が持つべき基礎的な安全に対する自治的な能力を低下させて、警察やセキュリティ産業などの監視利権への依存がますます進行する。‥‥続く

第23回協同組合学会大会報告

協同組合に国連、ILOから高まる期待
会社化の流れや新協同組合の試練
現代的特徴は“多様性の中の結合”

市民セクター政策機構 柏井 宏之

 日本協同組合学会の第23回大会は、「協同組合運動の到達段階と戦略課題」をテーマに、11月15日から2日間、東京・明治大学のリバティタワーで開かれた。日本の場合、協同組合基本法がないために、個別分野別に協同組合が論じられがちななかで、協同組合学会は、全体を概観し、議論する大事な機会と機能を果たしている。多様に論じられた議論の中から、国際協同組合運動にふれた栗本昭氏の報告とドイツのH.ミュンクナー教授の迫力ある発言を追ってみた。(編集部)

2つのキーワード「グローバリゼーション」と「地域社会」
Winner takes all に decent workを対置
中川 雄一郎 氏(明治大学教授)
勝ったものが全て取る尊厳ある労働

 <座長解題>ということで、主宰者を代表して、中川雄一郎氏は「日本社会再生」という重い課題をもった学会大会と位置付け、二つのキー・ワードを示した。一つは「グローバリーゼーション」であり、もう一つは「地域社会(コミュニテイ)」である。
 中川氏は、M.ウォーターズやA.ギテンズの定義を引きながらグローバリーゼーションそれ自体は、直ちに「市場原理主義」あるいは「市場一元主義」を意味するものでない、と強調した。
 ところが、グローバリーゼーションを市場原理主義にもとづく世界的規模での経済競争とみなして、新自由主義あるいは新保守主義を先導する流れは、“winner takes all”(勝ったものが全部取る:一人勝ちの意)をめざす結果、「貧困の拡大」と「地域社会の崩壊」が生まれている。‥‥続く

第9回ソーシャル・アジア・フォーラム(上海)に参加して

グローバリゼーションへの日・中・韓・台の対応 非正規労働が共通課題に

「アジアの風 地域の風」編集長
成島 道官

 グローバリゼーションと新自由主義の波動は、世界各国・地域の社会に大きな影響を与えてきた。そして、その影の部分は、市場経済化の圏外におかれた、いわゆる最貧国はもとより、急速度な経済成長を遂げた諸国、同時不況に陥った先進工業国、それぞれに異なるが、いずれも深刻な社会のゆがみとして、浮上・拡大してきたのである。
 2003年9月18日・19日に中国・上海市で開催された第9回ソーシャル・アジア・フォーラムは、そのような状況に際して、社会運動の一翼を担うべき労働組合運動の課題をめぐって、日・中・韓・台の労働組合リーダーと労使関係論の研究者が一堂に会して意見交換を行なった。そこでの議論のすべてをお伝えすることはできないが、主要な内容を紹介しつつ、感じたことを述べてみたい。

ソーシャル・アジア・フォーラムの性格
 このフォーラムは、もともと日本の研究者、公企業労働組合の国際部などによる働きかけとサポートで、東北アジアの4つの国と地域でそれぞれ組合や研究機関で責任ある地位の人たちに呼びかけて実現したものである。毎年1回、会場持ちまわりで開催され、すでに今年で9回目を迎えている。会議にはすべて個人の資格で臨み、発言の内容も個人としての見解ということで相互に了解されているようだ。
 実際に出席した会場での発言も、それぞれが抱える困難・問題点も含めて、かなり率直な内容のものが多かった。とくに印象的だったのは、市場経済化の進展に伴い、労働問題が切迫してきている中国が、関係法制度の整備と労働組合の実質的な確立に向けて取り組んでいること、軍事体制から民主化・高度成長、そして、通貨危機・IMF管理を経て、FTA(自由貿易協定)や非正規・不安定雇用労働者の組織化などの新しいテーマに向かって、韓国労働運動が展開している豊富で生々しい実践であった。
 また、政府や多国籍企業が進める東アジア地域での地域主義(リージョナリズム)の動きに、労働組合、NGOや市民団体が、いかになる構想をもち、連携して対処していくべきか。この問題は、まだ議論の端緒についた段階ではあったが、今後ますます重要になってくるだろう。‥‥続く

第15回社会経済セミナー報告B

こどもたちのからだと化学物質 アレルギーの罹患率は50%にも

前生活クラブ連合会検査室長
坂下 栄

 きょうは、私が中学・高校生を対象に行った調査を中心に話をさせていただいて、私がいま非常に関心のある問題と、今後、どうしたらいいかというか、どうしようかというところに行ければいいなと思っています。

◆全国的な調査のきっかけ
 この調査のきっかけは、私は生活クラブの組合員のところやいろいろなところに講演に行きますが、ある高校に行った時に「学校の先生がいないところで話をしたい」という女子生徒がいて、学校が終わってから話を聞いたら、生理が年間20回ぐらいあると言うんです。「人間進んでいるのか」と思っているうちに、あちこちでそういう話があって、1か月のうち3週間も生理があるという生徒もいました。あるいは、男児を持つあるお母さんは、うちの子は精巣が外に出ていない。いわゆる精巣降下不全だと言うのです。
 そういう話を聞いて私は、人間社会に、環境ホルモンというか重大な問題が忍び寄ってきているのではないか、何としても調査したいと思いました。
 私は合成洗剤問題を追及して三十数年経ちます。その初期の頃、合成洗剤によって精子の数が非常に少なくなることに気づいて、アンケート調査をしたいと思いましたけれども、この時は、婦人科または泌尿器科系の医師の協力が必要なので断念しました。しかし、今回は無理をお願いして、市民セクター政策機構の調査部門と、生活クラブ連合会の財政的な援助をいただいて調査を行ったわけです。
 当初は、環境汚染と子どもたちの二次性徴への影響を見たい。そこで、教職員組合や学校長に二、三当たりましたが、どうもすっきり乗ってくれない。たまたま良識のある先生グループに行き当たって、その先生方が担任している教室でアンケート調査をやっていただくことにしました。
 そして、私にこの調査を決心させた女子生徒が、「学校の先生がいないところで」と要望しましたので、アンケート用紙と封筒を配って、先生が全く見られないかたちで提出していただく、というシステムにしました。その結果、そういう調査方法の効果かなと思うのは、九十数%という、アンケートとしては非常に良い回答率を得たことです。‥‥続く

食糧・農業についてのメッセージ@

食糧の未来についてのマニフェスト 食糧・農業の未来国際委員会

(議長・ヴァンダナ・シヴァ)

 以下に掲載するのは、イタリアのトスカーニ州政府のよびかけでまとめられた「食糧の未来についてのマニフェスト」の第一部です。原著の前書きにあるように、このマニフェストは一連の国際会議の成果として2003年7月15日に発行されました。会議の出席者には、ヴァンダナ・シヴァ(委員会の議長)、ジェリー・マンダー(マニフェストの編者)、エドワード・ゴールドスミス(雑誌『エコロジスト』編集長)、アンドリュー・キンブレル、フランシス・ムア・ラッペ、ティム・ラング、パーシー・シュマイザーなど、食糧・環境・グローバル化などの問題に長年取り組んでいる活動家たちが名前を連ねており、われわれの今日の食糧をめぐる問題点を指摘すると同時に、これからの食糧・農業のあるべき姿を具体的かつ詳細に描いています。今月から4回に分けて、このマニフェストの全文の翻訳を掲載します。(編集部)

 

まえがき
 このマニフェストは2002年暮れから2003年初めにかけてイタリアのトスカーニで開催された「食糧の未来国際委員会」(International Commission on the Future of Food)の会合に出席したメンバーたちの共同作業の成果です。トスカーニ州政府も、この委員会の作業に積極的に参加し、支援しました。このマニフェストは、世界中の数百もの組織、何千人もの人々によって支持されている意見や活動の集大成を目指して作られました。これらの人々は、食糧生産が工業化・グローバル化に向かう現在の不吉な傾向にとどめをかけようと、活発に活動しています。
 このマニフェストには、現在の危険な方向に対する警鐘が盛り込まれていますが、なかでも最も重要なのは、現実的なビジョン・考え方・計画について説明している点です。これらは、食糧と農業を社会的・経済的に持続可能で、もっと手の届きやすいものにするためのものであり、企業収益よりも食べ物の品質や安全性そして人々の健康が優先されるようにするためのものです。
 このマニフェストが、持続可能な農業、食糧主権、生物多様性、農業の多様性のための運動を結束させ、強化するための触媒となり、世界中の飢餓や貧困を軽減することに繋がることを願っています。多くの人たちが自分たちの必要に応じてこのマニフェストを翻訳、利用し、マニフェストに盛り込まれた方針や考え方ができるだけいろいろな方法で広まることを切に願うものです。

 

第一部
序:工業化農業モデルの失敗
 世界の農業・食糧供給の工業化、グローバル‥‥続く

「アソシエーション・ミニフォーラム」はじまる!

東京・埼玉・愛知で自主企画

国立・国分寺「食品安全条例」への取り組み

国立・生活者ネット 大西由紀子

 昨年の予算特別委員会で「今こそ東京都に食品安全条例を策定すべき」との提案に「条例を設けることは非常に意味がある」との知事答弁で実現に向け動き出した東京都の「食品安全条例」は、2004年3月に上程されます。そこで、10月8日国分寺労働会館で、都の食品安全条例を市民にとってよりよいものとするため、かつての食品安全条例の直接請求から今日までの政策の流れを総括するとともに、現在、全国的な問題となっている、遺伝子組み換え作物の作付けについての情報をシンポジウム形式で交換するミニフォーラムを開催しました。元都議会議員の池田敦子さんからは、14年前の直接請求を巡っての議会活動の報告、大西からは97年以降から今日までのプロセス、市民セクターの倉形さんからは、遺伝子組換え食品をめぐる動向などについて報告をしてもらいました。1987年のチェルノブイリ原発事故後に起きた世界的な食の不安から、当時直接請求の必要署名数は有権者の50分の1(18万筆)であったにもかかわらず、署名数は55万筆集まったこと、所属会派である社会党・都民会議は、マドンナブーム後で、第二会派であったこと等の条件下、二回の継続審議になりました。しかし、「直接請求など生意気な」という鈴木知事の発言が最期まで尾を引き、与党は請求の趣旨に賛意を示しつつも条例案に問題があると反対しました。結果として「食品安全条例」は否決されたものの、食品安全関係予算が5億1900万円から11億4200万円に倍増したことなど、食品安全へ施策が拡充されました。1997年以降、急増する輸入食品や、遺伝子組み換え食品に対応できていないため、90年に策定された「食品安全確保対策の基本指針の改定」を求め、翌年には新たな不安として浮上した「環境ホルモン」で、生活実態に即した検査の実施‥‥続く

ミニフォーラム新宿 『熟年離婚』の著者・増永朋子さん
―茶飲み話バージョンー開催報告

生活クラブ連合会 亀田旬子

 10月31日の夜、生活クラブ連合会新宿事務所・会議室で市民セクター政策機構のミニフォーラムが開かれました。講師は日経マスターズ、ニューヨークタイムズ、週刊ポストなどに取上げられ、男性読者層のメディアでも反響を呼んだ『熟年離婚』(ユック舎)の著者・増永朋子さん。参加者は生活クラブグループの職員、ワーカーズ、組合員、大学院生など20歳代から60歳代までの女性11人、男性3人でした。
 増永さんが本を書いた経緯と離婚を巡る夫婦のずれについて話すと、それに触発されたように、参加者からさまざまな意見が出されました。
 増永さんの結婚生活は、戦後育ちの第一世代女性の典型といえます。民主主義教育を受け、就職。26歳で結婚、専業主婦となり生活クラブ生協に加入。組合員活動では機関紙畑を歩き、『生活と自治』編集委員をへて編集ワーカーズを設立します。52歳で離婚を決意。直接の理由は性格の不一致に夫の親の同居問題が絡んだものですが、取材・執筆の仕事を通し性別役割分業に基づく夫婦間の不平等性に気づいたといいます。‥‥続く

ミニフォーラム杉並
「子ども基準」と「安全評価」を盛り込んだ「東京都食品安全条例の制定を」

杉並生活者ネットワーク 高瀬 美紀

 ミニフォーラムは、11月6日杉並区産業商工会館で開催されました。
 14年前に東京都に直接請求を行った「食品安全条例」は、2004年3月にようやく制定の運びになります。
 この間、私たちがこだわり訴えてきた「食の安全」は、不幸にもBSE(狂牛病)や不正表示問題によって、社会の認知を得ました。「素性を知ってから中身をはっきりさせた上で選択したい」「ルーツのわかるものを食べたい」「使われた添加物の情報を知りたい」「命をはぐくむ食は基本的人権の一つである」というごく当たり前の消費者の欲求を、社会の中で当然のこととするまでに至っておりませんが、ようやく生活者の視点が食品行政にとりいられる入り口に来たといえます。
 今回のフォーラムでは、14年前の取り組みから経過をたどり、現在の食品行政の課題を掘り起こす中で、条例をという形にするところでもう一押しの活動の意味を確認しました。‥‥続く

埼玉
WTOカンクン閣僚会議報告

生活クラブ生協・埼玉 荻原圭子

 11月7日午後7時より、生活クラブ生協・埼玉本部で、「WTOカンクン閣僚会議報告」をテーマにミニフォーラムを開催し、NGOの抗議行動などを中心に、市民セクター政策機構事務局の清水が報告しました。参加者は生活クラブ埼玉の本部職員6名でした。
 まず、カンクンのまちの様子や警備の状況を地図や写真を使って簡単に紹介した後に、韓国のNGOが撮影したビデオを上映しました。韓国の教職員組合の人たちが来日した際、持ってきたもので、韓国語、英語の字幕つきです。スペイン語や韓国語が分からないため、実のところ現地では、状況がよく把握できない部分が多かったのですが、このビデオからは、世界中の農民、女性たちの「WTOが農民を殺す」「WTOが多様な文化を潰す」といった声が強烈に伝わってきます。
 ビデオに続いて、なぜこれほどに、世界中のたくさんの人々がWTOに反対しているのか、どういった対立点からカンクンの閣僚会議が決裂したのか、外務省などの資料を使って概説しました。農業交渉については、本誌284号(2003年11月)でも詳しく報告しましたが、サービス交渉(水・電力など公共サービスとして現在提供されているサービスの民営化を進めることが目指されている)など、さまざま重要な対立点をWTOは抱えています。それがゆえに、世界中でこれほどまでに激しい反対運動が巻き起こっているのです。‥‥続く

<リレー連載>多元的歴史観の諸相G

なぜ倭と百済は仲がよいのか(上)
沸流系百済の爆発的膨脹と関連

九州古代史の会 兼川 晋

 明仁天皇が01年12月、68歳の誕生日に「恒武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると『続日本紀』に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています。」と発言、韓国・中国はもとより欧米でも反響があった。『ニューズウィーク』は「明仁天皇の"韓国とのゆかり"発言で日本人が歴史の真実を見据える時がきた?」「今回の天皇発言は13年間の在位中で最も心に響く、そして最も政治的な発言だった」(02.3.20)と書いたが、日本のテレビ、マスコミは沈黙した。8世紀の高野新笠という百済の武寧王の血を引く一女性にスポットがあたったが、百済と倭の関係はさらに溯る。90年の早くに李鐘恒の『韓半島からきた倭国―古代加耶国が建てた九州王朝』(新泉社)の訳者で知られる兼川晋氏に、日本歴史のこの未解明な部分を寄稿いただいた。

仲がよかった百済と倭
 百済、高句麗、新羅の三国と当時の日本列島の関係を考えてみるとき、期間的にも長期にわたって友好的に通交したのは百済だったようです。当時の日本は倭国といいました。新羅と倭国は、建国以来、浅からぬ関係を持ってはいましたが、記録された記事から見ると、どうも、あまり友好的な関係とは言いにくいようです。たとえば『三国史記』を開いてみても、二十一代の新羅王・■知麻立干の二十二(西暦500)年までの間に、倭の記事は四十八回もありますが、その大半は戦闘記事なのです。
 一方、百済では十七代の阿■王の六(397)年から唐の龍朔二(662)年までの間に倭の記事は十回書かれていますが、両国の戦闘記事はありません。高句麗には倭の記事が一行もなく、『三国史記』を読む限りでは、高句麗と倭は仲がよかったのか、悪かったのか、それさえ知ることはできません。
 これは理由のあることで、『三国史記』を編纂した金富軾がこの本で主張したかったのは、古代の日本列島と最も関係が深かった国は他でもない、高麗王朝の直前まで存在した統一新羅だ、ということだったのでしょう。新羅の始祖・朴居世に仕えて唯一人だけ名前まで載せられている瓠公は倭人でした。四代目の新羅王・昔脱解も倭人でした。倭国の卑弥呼のことも記録しています(但し、年次は干支一周間違っている)。しかし、倭国はしばしば新羅を侵略しました。その度に新羅は勇敢に戦いました。加羅を統合したのも新羅です。最後には唐と連合して、‥‥続く

PACEの旗、ボードリヤールそしてフリーダ

編集子・K

■窓々に花のようにつるされて…
 「ここは貧しい人々の地域でネオ・ナチの勢力が強いところ」と案内されたローマの住宅地の窓には、イラク戦争に反対する七色の布地にPACEと染めぬいた色あせた旗が点々とあった。私はこの地域で「社会的に不利な立場の人々(障害者・アルコール中毒・麻薬患者・外国人移民女性)」のための仕事をつくりだしているB型社会協同組合を見聞にきたのだが、訪ねる先々の部屋の中にもつるされているPACEの旗をみて、1人ひとりが意思表示する市民社会の気風に心打たれた。そしてTVが日本が軍隊をイラクに派兵するという、短いスポットを日本からイラクまで赤線の矢印の入った地図入りで放映しているのをみて感慨を禁じえなかった。
 イタリアはベルルスコーニ首相が一早くイラクに派兵、多くの兵士がテロで死んだ。その国葬がかつてムッソリーニがいつも演説したバルコニーの横の、ヴェネチア広場の壮大なビットリオ・エマヌエーレ記念碑で行われたばかりだが、どこに行っても七色のPACEの旗が花のようにつるされている光景に出あう。‥‥続く

雑記帖

【加藤好一】

 昨年は、大きな犠牲を伴ったイラク問題で国内外が終始し、また市場原理主義の横行とデフレ圧力、加えて冷夏・暖冬で農畜産物の作況と価格が異常事態となるなど、ポジティブに評価できることが少なかった。そんななかにあって特筆されるのが、本号で報告のある岩手県の反GMイネ運動の大勝利であろう。
 冷害によりコメの作況が極度に「著しい不良」となった岩手県で、耐冷性目的の遺伝子組み換えイネの野外実験とその商品化を断念させたことは、まさに画期的であった。同様に北海道でも、道議会が国にGM作物の商品化を承認しないよう意見書を提出するという。
一昨年の愛知県での反GMイネ運動の勝利を受けて、「戦後日本の消費者運動・市民運動の一ページを飾るであろう」と思わずある所で書いてしまい、大言壮語でスミマセンとコメントを付したようなこともあったが、もうそんな必要はない。
 一方、先日、農水省の畜産振興課長に面会し、そこで採卵鶏、肉用牛等の国産畜種の維持・育成についての努力の必要を訴える機会を得た。年末の慌しいなかで1時間以上にわたって遣り取りし、別れ際に「夢の共有」という言葉を、外交辞令ではなく気持ちのこもった言葉として聞くことができた。作物ではなく畜種の話だが今後への期待が膨らむ。
 このように運動は着実に成果をあげつつある。生活クラブでは今年、「遺伝子組み換え食品問題協議会」を立ち上げ、次なる課題の明確化とより主体的な運動の構築をめざす。読者諸氏のご助言とご支援をお願いしたい。末筆ながら、謹賀新年。

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