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『社会運動』 287号

2004年2月15日

目次

<インタビュウ>これからの生協と生活クラブ運動 人口縮小社会下の「中期方針」 河野栄次‥‥ 2
 協同組合を軸に食料主権と環境対応
広がる「STOP!イラク派兵」 各ネット‥‥16
<この一枚>(インドの種子運動) ‥‥18
<座談会>東京都の食品安全条例 食の安全を基礎から支える条例に

  天笠啓祐×大西由紀子×近藤惠津子×倉形正則‥‥19
社会的経済促進プロジェクト@ 新しい「非営利協同法人」制度を 浜辺哲也‥‥28
欧米・東アジア進歩的研究者フォーラムin札幌A 『第3の道政治』とソーシャル・ガバナンス 住沢博紀‥‥37
企業の社会的責任の現状と問題点 価値選択としての社会的責任投資 柴田武男‥‥47
シリーズ:監視社会A マレーシアの「MyKad」―韓国の住民登録制度と比較して―板垣竜太‥‥53
子育て支援 仕事も子育ても輝きたい 米倉克良‥‥58
「アソシエーション・ミニフォーラム」A 東京・東村山の再開発事業からみたまちづくり 島崎よう子‥‥60
食糧・農業についてのメッセージA 環境的・社会的に持続可能な農業とフードシステムのための原則
  ヴァンダナ・シヴァ‥‥61
市民の歴史運動の諸相H なぜ倭と百済は仲がよいのか(下) 兼川 晋‥‥66
露天カラオケ撤去、鬼と共存の火祭り&ラスト・サムライ 編集子K‥‥71
雑記帖 小塚尚男‥‥72

<インタビュウ>

これからの生協と生活クラブ運動

人口縮小社会下の「中期方針」協同組合を軸に食糧主権と環境対応

語る人:河野 栄次

生活クラブ生協連合会会長

――生協の今後ということで、生活クラブ連合会の「中期計画」はどういう点が柱建てになるのかを中心にザックバランにお伺いします。河野さんは「日本の2006年頃からはじまる“人口縮小社会”の到来によって、いままでと全く違う方針が必要だ」と、かねがねおっしゃっていますが、その辺りを中心にお話しを‥‥。

 

◆日本生協連の方向
河野 まず、日本の生協の方向です。日本生協連「第9次全国中期計画(2004〜2006年度)・第一次案」が、全国の生協に配られたところです。日本の生協は、生活クラブと違って店舗型が多く、激烈な競争にさらされています。従って、基本的にはスーパー業界がやっている規模の再編と同じような考え方に基づき、全国を経済圏ごとに、経済圏を単位にして整理していこうという方針です。ですから協同組合として本来どうするのかということより、どちらかというとイオンとかイトーヨーカ堂、そしてこれから参入してくるウォルマート、これらに対抗して地域経済の中で、ある事業規模の水準に高めていくこと、またナショナルセンターとしての政治的、経済的役割を担っていくことを明らかにした内容になっており、経営力を強化する方向で書かれています。
 最新の情報では、小倉会長が『生協流通新聞』(2004年新春号)ではっきりと「停滞打開に“統合的連帯”は不可欠」「無店舗事業は“独善的リスク”を内包」、「10のリージョナル連帯が理想」と語り、「生協陣営は4兆円企業になるべきだ」と言い切っています。
 数値計画を見ると、2006年度の数値目標は2.9兆円、経常剰余2%だと書いてあります。2002年から2003年、2004年、2005年、2006年で事業規模を約3,000億円増加させようというわけですが、小倉さんはもっと踏み込んでいます。事業規模で4兆円というと、イオングループ、イトーヨーカ堂グループの数字です。昔のダイエーグループ、西友グループの数字です。それに対応しようというわけです。しかも、コアになる事業規模の単位は4,000億円です。
 さらに中計を先き読みすると、どうやらコープこうべ中心ではなくコープネット中心、もっと言うとコープさいたまと事業統合したコープとうきょうが中心です。そこがリーダーになって、日本生協連の物流機能とコープネットが統合する形でこれから日本の生協をリードしていこうという考え方が見られます。
 これは、ヨーロッパで消費生協が多国籍企業の10社ぐらいと競争するためには、合併し「規模の経済」をめざさざるを得ない中で、構造改革をすすめ、今もすすめている事実を日本的に先取りして、まさに経済の仕組みで対抗しようという考え方です。
 そのためには、今の「生協法」の地域制限撤廃、員外利用をやめて、要するに一般の小売業と同じ土俵で競争していくという考え方です。その一つの方向として、コープネットを中心に、日生協の機能を統合した「コープネット+日生協」という仕組みが見えてきます。

 

◆世界の協同組合の傾向
 これについて非常におもしろい現象があります。昨年の日本協同組合学会の総会でドイツ・マールブルグ大学のハンス・ミュンクナー教授が特別講演しています。「世界の協同組合の傾向」ということで、会社化の流れが強まる中、協同組合はもう一回、協同組合の価値・原則をきちんと考える必要があると報告しています。
 『社会運動』の前号(286号37頁)でミュンクナー教授の図が載っていますが、「開かれた協同組合」というとき、協同組合の特徴を持たない市場と結びついた協同組合化であり、その行く末は破綻であったり、会社への転換だったり、商業上の競争相手による乗っ取りであったりする。ヨーロッパの歴史をふまえてそう語っています。また協同組合的特徴が薄い、あるいは無い協同組合との経済的協力は、統合的協同組合の枠組みになっていく可能性が十分にある。つまり脱イデオロギー化・商業化といっています。   ‥‥続く

広がる『STOP!イラク派兵』の行動

生活者・市民ネットワークの活動などから

 米国ブッシュジュニア政権の財務長官だったポール・オニール氏は、先頃、「9.11テロ」より遙か以前、ブッシュ政権成立直後からイラク侵略が計画されていた、と証言しました。米英によるイラク侵略の理由は、「9.11テロへの関与」、「大量破壊兵器の保持」、「イラクの民主化」と次々と姿を変えています。

でっち上げを根拠にした侵略から生じた占領状態、そこに日本がついに派兵しました。全国各地でイラク派兵反対の行動が取り組まれています。ここでは市民ネットを中心にそれらの行動を紹介します。

 

東京・生活者ネット緊急集会
「私たちはテロ以降をどう生きるか−イラク自衛隊派兵を考える視点」
 東京・生活者ネットワークでは1月5日、緊急集会04年1月5日「私たちはテロ以降をどう生きるか−イラク自衛隊派兵を考える視点」を開催しました。日本青年館の国際ホールに松の内にも関わらず100名の参加者を前に上村英明さん(市民外交センター代表)の基調講演と地域ネットからの行動報告と提起を受けました。

キャンドルと音楽でイラク派兵中止を訴え―神奈川ネットワーク運動

 神奈川ネットワーク運動では1月9日、桜木町駅前を皮切りに、県下にピースキャンドルの活動を拡げています。
 抗議に共鳴し署名や飛び入り参加してキャンドルをかかげる通行人らと一緒に派遣反対を訴えました。
 以降、2月にかけて県下の駅頭でキャンドル活動を予定しています。

 

1/18朝霞基地で抗議行動
 朝霞基地では1月から2月にかけて日米軍合同による図上演習が行われています。1月18日に基地周辺において、イラク派兵と演習反対する集会とデモが行われ、練馬ネットやさいたまネットが参加しました。

 

習志野でも基地前行動に参加
 昨年11月16日に、陸上自衛隊習志野駐屯地に対して、「イラク派遣反対」要請行動を行いました。市民ネットワーク・千葉県ほか複数の市民グループが合同で行ったものです。写真は駐屯地の門前で市民ネットワーク・千葉県の「要請文」を読み上げているところです。

 

1/17千葉の佐倉市
 さくら・市民ネットワークでは、1月17日(土)の「自衛隊イラク派遣反対市民行動集会」に参加し、市内をデモ行進しました。参加者は全体で120名ほどでした。   ‥‥続く

座談会:

東京都の食品安全条例
食の安全を基礎から支える条例に!

天笠啓祐×大西由紀子×近藤惠津子×倉形正則
聞き手:編集部

 東京都で食品安全条例策定の動きが進んでいる(『社会運動』No.280,283号で既報)。今回は、その基本条例を巡る問題点を、条例制定運動を推進してきた生活者ネットの大西由紀子さん(都議)と生活クラブ生協東京の副理事長で「食品安全条例を市民が作る会」の代表である近藤惠津子さん、食の安全監視・市民委員会の天笠啓祐さん、本誌から倉形正則が参加してお話しいただいた。

 

直接請求から14年

――まずは、食品安全条例の経過を大西さんに簡単に振り返っていただけますか。

 

大西:1989年、生活クラブ生協、東京生活者ネットで食品安全条例の直接請求運動(経過は『社会運動』280号参照)を行いました。55万筆の請願署名が集まり、当時の他会派都議の奥さんからも署名しました、とかの反応もありました。
 当時の鈴木都知事の反応は「直接請求とは生意気な」というものでした。結局、2回の継続審議を経て、否決となりました。しかし、継続審議の最中には都庁内から協力者も現れたり、いろいろな反応がありました。
 この動きは90年の基本指針策定へと繋がり、その年の食品安全行政予算は、前年の5億円から11億円へ倍増。東京都の消費生活条例の改善を実現しました。94年には輸入食品対策、その後の都の有機農産物基準の策定と進みます。
 私は97年から都議会へ行くことになるのですが、当時の東京都の食品安全確保対策の基本指針はいろいろ問題を抱えていて、その改定を提起しました。増え続ける輸入食品、あるいは遺伝子組み換え(GM)食品のことが何ら反映されていない指針だったのですね。議会では指針改訂の答弁があり、以降、市民と行政の協議会を積み重ねることになります。当時、環境ホルモン    ‥‥続く

「社会的経済」促進プロジェクト報告@

新しい「非営利協同法人」制度を−出資型で準則主義の非営利法人は必要

公益法人改革オンブズマン
浜辺 哲也

★はじめに
 私は、経済産業省の産業構造審議会の中にNPO部会を設けて、NPOが新しい経済主体として発展していくのではないか、というようなことをレポートにまとめる仕事をたりしていました。その当時からワーカーズ・コレクティブの皆さんから、法制化の運動があるという話は伺っていました。
 ’02年8月に独立行政法人の研究所に移ってから、公益法人改革の動きが急速になり、今までの行政の許認可主義から準則主義に変わるということなので、結構な動きではないかと思っていました。ところが、’03年2月政府税調から 突然、いま収益事業を除いて非課税になっているところは、寄付や会費も含めて、全部、原則課税にするというアナウンスを受けて、何としても反対しなければいけないと思いました。
 これに対してどういうポジションで対応、反対していくかということについては、役所の税担当者に相談し声を掛けたことがあるのですが、公益法人は評判が悪いのでNPOが声を上げないと相手にされないと断られました。
 そこで、役所にお願いするのではなく、職場は当てにならないから個人の活動としてやっていこうと思って、公益法人改革オンブズマンという任意のグループとしてNGOの有志が集まり、政策提言活動や異議申し立てなどをしております。
 '03年4月、参加型システム研究所というところから、ワーカーズ・コレクティブ法と新しい非営利法人制度の関係について考えることができないか、という宿題をいただいて、やはり出資型の非営利法人が必要ではないかということで、まだ生煮えの議論ですけれども、原稿を書  ‥‥続く

東アジア・ヨーロッパ・アメリカ進歩的研究者フォーラム2003A

「第3の道政治」とソーシャル・ガバナンス―札幌フォーラムでの提起を中心として―

住沢 博紀

日本女子大教授

1.東京・札幌フォーラム2003年の趣旨
 『社会運動』285号(2003・12)では、東アジア・ヨーロッパ・アメリカ進歩的研究者フォーラム2003の前半部分である東京フォーラム(早稲田大学10・11〜12)について、佐藤浩一が報告している。ここでは実行委員会の一員として、後半部分の札幌フォーラム(北海道大学10・14〜15)を中心に報告したい。


 「社会運動」とは、19世紀・20世紀の労働運動=旧い社会運動と、20世紀・21世紀の市民運動=新しい社会運動の全体を意味するとすれば、東京・札幌フォーラムの問題提起は『社会運動』誌上で論じるにふさわしいテーマであるといえる。なぜなら、それは20世紀の社会民主主義を総括し、21世紀の進歩的ガバナンスを展望しようとする企画であるからである。したがって本論に入る前に、このフォーラム全体の趣旨と背景について、もう一度説明しておきたい。ここでは関係者に配布した「趣意書」から引用しつつ解説する。

 

1)東京フォーラム2002の継承
 2003年東京・札幌フォーラムは、2002年4月の東京フォーラムを継承している。そこでまず第1回目東京フォーラムにさかのぼり、その意義を明確にしたい。
 ヨーロッパ社会民主主義や「第3の道」政治を日本に積極的に紹介してきた生活経済政策研究所とエーベルト財団(ドイツ社民党シンクタンク組織)東京事務所が共催して、2002年4月に「東アジア・ヨーロッパ・アメリカ進歩的研究者フォーラム」(以下第1回東京フォーラムと略)を開催した。この成果は、高木郁朗・住沢博紀・T.マイヤー編『グローバル化と政治のイノベーション』(ミネルヴァ書房2003)として出版されている。ここではヨーロッパの「第3の道」政治や社会民主主義の現代化をめぐる問題を、クリントンのニュー・デモクラッツのアメリカ、さらには日本・中国・韓国という  ‥‥続く

企業の社会的責任(CSR)の現状と問題点

価値選択としての社会的責任投資

聖学院大学政治経済学部教授
柴田 武男

1.はじめに
 企業の社会的責任論がまた流行になっているようだ。企業経営者が急に社会意識に目覚めたわけでもなく、社会現象的にはむしろますます問題企業続出の中で、この流行は一見すると不可思議な気もするが、日本で流行する理由は明白である。
 (社)日本経済団体連合会のホームページを見ると、「昨今、特に消費者・ユーザーとの関係で企業不祥事が相次いで発生し、当該企業のみならず、経済界全体が社会の強い批判にさらされている。企業活動の存立の基盤は、社会の信頼と共感にある。最近の事態は、これを損ねるのみならず、市場経済への不信にもつながりかねない。」とある。もちろんこれは、具体的には、2000年6月の雪印乳業の食中毒事件を指している。雪印は2001年三月期決算が1950年の設立以来初めて赤字に転落したなどという程度で収まらず、厳しいリストラと工場閉鎖に追い込まれている。
 さらにショッキングだったのは、雪印食品のケースである。雪印乳業の子会社で、ハム、ソーセージなどを製造している雪印食品の牛肉偽装事件が報道されたのは、2002年1月23日のことである。報道当初は、「そのような不正はやっていない。疑惑があれば緊急に社内で帳簿類の調査をしたい」という脳天気な調子であったが、すぐ謝罪に追い込まれた。そして、同年3月31日には、清算業務に当たる一部社員を除き全員を解雇するとして、実質的に経営破綻に追い込まれたのである。東証二部、社歴50年以上、年商約900億円、従業員はパートも含めて約1900人という大企業が親会社の不祥事という逆風はあったにしても、事件発覚からたった二ヶ月で倒
‥‥続く

シリーズ:監視社会A

マレーシアの「MyKad」韓国の住民登録制度と比較して

板垣 竜太
東京大学助手、朝鮮近代社会史研究

 前号286号に引き続いて、シリーズ監視社会Aを掲載する。監視社会のシステムについては、街角の「カメラ」のように、その存在を肯定する人にあっても「不気味さ」は否定できない人が多い。しかし、このシステムが、「住民登録制度」との関連において「不気味さ」を感じ取る人は少ない筈だ。日本の「住基ネット」の問題が今一つ浮かび上がる。(編集部)

 

 2003年6月にマレーシアから来日したスティーブン・ガン氏(『マレーシアキニ』編集長)、8月に来日したヤップ・スィーセン氏(人権NGO・スワラム)から聞いた「MyKad」(マイカード)の話は、私にとって本当に驚きだった。私は韓国の住民登録制度の歴史について関心をもって調べていたので、それとの構造的な類似性がとりわけ大きな発見だった。そのことは私の話を聞いたガン氏やヤップ氏も感じたようで、韓国との連帯にも強く関心を寄せていた。監視社会の構築において導入される監視技術にはさまざまなものがあるが、特定地域に住む全ての個人を登録、識別しようとする住民登録制度は、監視社会の基礎的なインフラとしての位置をしめている。私自身、マレーシアの状況には全く詳しくないが、以下、韓国の住民登録制度との関係で、マレーシアの「MyKad」について、歴史的な観点を導入しつつ論じてみたい。

 まずMyKadの概要を説明しよう。MyKadは、ICチップ(より正確にはスマートカード)入りの政府多目的カード(GMPC)として開発され、2001年9月から正式に稼働しはじめた。開発を主導したのは、マレーシアで建設計画が進められているハイテク首都、マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)である。MyKadの「My」は「マレーシア」の略であるとともに、英語の「私の」をかけている。「Kad」は“Kad Akuan Diri”、すなわち「個人識別カード」の略語であるとともに、“Kad Aplikasi Digital”、すなわち「デジタル・アプリケーション・カード」の意味もかけているという。64KBの容量をもつICチップには、大きく7つのアプリケーションが含まれている。身分証(カード表面情報、指紋画像、顔写真など)、運転免許証(有効期限、資格区分、所持者類型など)、パスポート(有効期限、旅券番号など)、医療情報(アレルギー、血液型など)、電子商取引(キャッシュ・バランスなど)、そして個人認証情報(PKI)がそれであるi。MyKadは旧来の身分証に代替するもので、2003年7月までに、全人口2200万人中の570万人が新しいカードに移行したという。‥‥続く

NP0法人「CCCNET」が拓く子育て支援と就労支援
仕事も子育ても輝きたい
〜全国初のNPOによるファミリーサポート事業

取材・市民セクター政策機構 米倉克良

 子育て支援施策は、少子化問題が浮上する中で、抜本的な改革が迫られています。しかし、「子育て」と「働き」の連携については、施策の項目と挙げられていますが、企業の対応を含めて極めて物足りません。この中で、市民事業の中に、子育て支援と就労支援を柱とする事業が存在します。東京のJR町田駅近くのCCCNET事務所の瓜生ふみ子さん、肥後美智子さんに取材に応じていただきました。(編集部)

 

<市民事業から生まれて、国の事業を獲得>
 「なんといっても国の事業を全国で初めてNPOとしてとったことが大きいですよ」と瓜生さんは静かに語ります。NPO法人CCCNETは、地域の市民事業の立ち上げ支援や調査活動の中から、事業を立ち上げ、2000年5月にNPO法人の認証を獲得します。その三つのCが意味するところは、「多くの女性たちにchanceを」「女性がchallengeしやすい環境に」「女性が翔ける社会にchange」です。
 このNETが獲得した大きな柱は、2000年10月より、国(厚生労働省)の事業「仕事と育児両立支援特別事業」です。この事業は、94年から国がスタートさせたもので、既存の学童保育や保育園、幼稚園などの「施設保育」では対応しきれない保育ニーズに対応しようとするものです。具体的には、子育て支援を希望する会員と自宅で預かる援助会員をコーディネイトする事業です。この需要は既存の子育て制度の狭間にある「保育園や学童までの送迎」そして「まだ既存制度ではニーズに追いつけない保育の前後に子どもを預かる」「親の急用や」など短期あるいは補助的なものです。現在、依頼会員は、約1390人、援助会員は、約450人、利用料金は、1時間700円から900円、1ヶ月で1000件弱の利用があるといいます。しかし、この事業を市から委託されるのは簡単なことではありませんでした。
<条件づくりの「インターネット講座」が一歩>
 行政は、よく「前例がないとだめ」と前例主義を持ち出します。このため、瓜生さんが語る「市からは、実績がないし、独自事業がない委託できないといわれて、駅前のインターネットカフェを借りて、初心者のためのインターネット講座をはじめた」というのが、もう一つの柱、IT活用の就労支援事業の始まりです。2001年の町田市パソコン講習会総合事務局(1万2000人分)を受託、その内4000人を受託しました。「ある意味で行政
‥‥続く

<アソシエーション・ミニフォーラム>

東村山

東村山・生活者ネットワーク 島崎よう子

再開発事業からみたまちづくりのすすめかた
 現在東村山市は再開発事業がすすめられていて、再開発事業についておさえておかなければいけないことを学ぶ目的で学習会を開きました。
 東村山駅西口の1.2ヘクタールに交通広場、4本のアクセス道路を整備し再開発ビル、駐車場棟を建設するものです。’91年から駅西口を中心にまちづくり研究会を発足し検討してきた経過があります。が17階建て54m案できていたものが、昨年12月、急に28階建100m案に変更になったため、市民の関心が高まり大きな議論になっています。東村山市はベッドタウンでとりわけ駅の西口から北西部地域は自然と歴史の豊かな地域なのです。100mビルは後背地の景観にそぐわない、というのが私たちを始め大方の市民の反応です。高さを低くできないものか。そもそも再開発事業は必要なのか。また、財政負担を含めた行政の責任はどこまでなのか。今から修正可能な点はあるのか。これらの疑問を抱えていました。学習会では再開発事業のタイプ等基本的なことから説明をうけ、一番重要な点は再開発事業のコンセプトはなにか、市全体の発展をどう描いているかにあることでした。
 ご多聞に漏れず当市でもマンションの建設ラッシュですが中古マンションは売れなくなる状況の把握も必要なこと。都市マスタープランを担保させるためのまちづくり条例の必要性も実感しました。更に広場、区画道路の負担はどこがするのか。ディベロッパーは企画からの関わりか、販売は委託か、買取りをするのか等等確認事項のアドバイスを受けました。
 学習会後、講師の伊藤・辻(東京ランポ)さんから参考事例の紹介もあり府中と調布へ視察にいきました。どちらの市も再開発の目的が明確でした。府中市は当市とまちの性格がちがいますが、商業スペースと公共施設のコンセプトをはっきりもち、職員の話から夢を感じました。税金を投入するのに一部の地権者のための事業であってはならないという思いを強くしたのです。学習会、視察で学んだことをもとに12月議会では、コンセプトや財政負担等の確認公益施設になにを望むか、東村山らしい事業にしていく市民議論が足りない。市民参加を保障する仕組み、まちづくり条例の必要性などを中心に一般質問し、自治基本条例の必要性と考え方の答弁を引き出しました。(2003年10月11日東村山市民センターにて)‥‥続く

食糧の未来についてのマニフェストA

環境的・社会的に持続可能な農業とフード・システムのための原則

ヴァンダナ・シヴァ

食糧・農業の未来国際委員会議長

1.最終目標
 これまで挙げてきた社会的、経済的、環境上の諸問題に対する究極の解決策は、地域分散的で民主的、協同的で企業によらない小規模な有機農業であり、つまり伝統的農村地域、農業エコロジスト、先住諸民族が、何千年にもわたって実践してきたことである。そのような伝統的農村地域では、多様性、人と自然との共働、循環の原則にもとづいて、持続可能な農業を行ってきた。あらゆるレベルにおける規則や政策が綿密に連携して、このような解決策を促進しなければならないし、社会の他の分野も変革しなければならない。それが持続性を強調することにつながるのだ。

2.食糧は人権
 地球上の人間は誰でも基本的人権として、自らの生命と地域社会の維持に十分な食糧を得る権利、生産する権利を持つ。あらゆる規則や政策は一致して、この基本的権利を認めなければならない。地方自治体から国の政府、国際的統治機構に至るまですべてが、この権利を保障する義務がある。この権利は、国際的商行為や貿易上の利益、その他いかなる理由によっても否定されてはならない。
 自然災害やその他の事情により、この義務を国内で果たせない場合、他の全ての国家は、求めに応じて、必要な手助けをしなければならない。

3.地域分散型農業は効率的で生産性に富む
 地域の多様な地場農業あるいは地域の文化に深く根ざした伝統的な農業に比べて、工業化され科学技術に頼った農業をグローバル化して農業の均質化を進める方が効率的である、という考えはとらない
‥‥続く

<リレー連載>

市民の歴史運動の諸相H

なぜ倭と百済は仲がよいのか(下)

温祚系百済が倭の沸流系に贈った七支刀

九州古代史の会 兼川 晋

 前号で、九州古代史の会の兼川晋氏は、四世紀から五世紀にかけて、扶余族の沸流系百済が、渤海湾から山東半島、長江の河口北岸・南岸へ進出しただけでなく、その爆発的膨張と南下は玄界灘を越えて倭に到ったという画期の展開を行なった。今回は、その沸流系百済の血脈にあった「旨」が大東=東韓のアリナレを発って筑後に来寇・賊徒を撃って倭王を称し、それを慶賀して兄弟王朝の温祚系百済が「百兵を辟ける百錬の七支刀」を贈った――そう理解してこそ、その後の両国の急接近が理解できるとする論を展開する。しかし「白村江の敗戦」で百済の復興は空しく、亡国の貴族を受け入れたのは新しく日本に誕生した大和朝だったのである。(編集部

 

玉垂=神功=倭王「旨」
 初代玉垂命を考えてみると、『筑後国神名帳』に玉垂姫神があり、『太宰管内誌』にある『袖下抄』に「高良山と申す処に玉垂の姫はますなり」とあります。とすると初代は女性だったのではないでしょうか。高良記第五三三条にもクハウクウ(皇功?)とあり、この玉垂命の渡来を、神功皇后の韓半島往復の片道ででもあるかのようににおわせています。玉垂宮の造営はクハウクウ崩御の後になっていますが、その時期は仁徳五七(369)年です。この年は、末松説の己巳=369年にあたり、日本と百済の関係成立に深く関わる丙寅年から壬申年に至る六条の中でも中心とみられる年なのです。さらに泰和四(369)年といえば、百済から贈られた七支刀の銘文に倭王「旨」の名前が刻まれている年と一致しています。つまり、倭王「旨」=神功皇后=初代玉垂命ではなかったのでしょうか。
 沸流系百済の血脈にあった「旨」が大東=東韓のアリナレを発って筑後に来寇、賊徒を退治し、玉垂宮を造営して倭王を称した。それを記念して温祚系百済の王は「百兵を辟ける百錬の」七支刀を贈った。泰和四年に在位した温祚系百済の王は近肖古王です。しかし、『三国史記』にこの記事はありません。『日本書紀』にもありません。このことを隠蔽して、七支刀の記事だけを七枝刀として壬申年=392年に記録しています。その七支刀は現在、天理市石上神社に伝えられていますが、今も七支刀を手にした百済の使者と倭王像をまつる「こうやの宮」は福岡県山門郡瀬高町大字太神字長島にあります。伽耶=加羅のように通称「こうやの宮」は「こうらの宮」であり、正式名称は磯上物部神社です。七支刀は、物部
‥‥続く

露天カラオケ撤去、鬼と共存の火祭り&ラスト・サムライ

◆十手きどりの行政
 大阪の青空カラオケ小屋の強制撤去された天王寺美術館横を歩いた。20年つづいた屋台カラオケを、大阪市が「不法占拠」と「道路を快適な歩行者空間に」を理由に12月15日、強制代執行法により市職員200人を動員して追い払い、今は鉄パイプで囲っている。ガランと人もまばら‥。
 カラオケ屋台が立ち並ぶようになったのは、天王寺公園が有料化され、めっきり家族連れがなくなって以来だ。公園横を美術館、動物園、茶臼山へ行くための歩行者道路。ここに最初はラジカセでやがて一曲200円で歌えるカラオケ道路にウップンばらしをする“極楽トンボ”のたまり場となった。東京・原宿の少女たちの仮装ひろばとは違って、オバハン・オッサンの演歌・ブルース・軍歌の騒がしい空間の出現――。最後まで自主撤去に応じなかった店主・山本一夫さん(73)は、「これで一つ、大阪の文化がなくなった」といったという。これを執行したのはその名もなんと「ゆとりとみどり振興局」――。公共性を十手と勘違いし<社会的排除>に走る日本のコワッパ役人。公園を有料にし、歩行者道路の半分近くを鉄パイプで囲って何が「快適な空間」か。公園や歩行者道路は<ひろば>である。重い荷物を背負って生きる人々にとってそれは「雑居・共存・癒し」のアジールなのだ
‥‥続く

雑記帖

【小塚尚男】

 2004年が開けて間もない。しかし、新しい年が明け、さらに世はかまびすしい。第一、とうとう小泉政権下で戦後初めてイラクへと自衛隊が海外派兵することになった。第二は、年が明け民主党の菅代表は「憲法改正の発議をしたい。それによって民主党のイニシアティブで新しい今日的な憲法をつくりたい。」と述べ積極的な発言をし、小泉首相は「民主党と一緒に創りたい」と後出しジャンケンの余裕をみせている。第三は2003年末になってアメリカでBSE牛の発見が報じられ、日本はアメリカからの牛肉輸入を「全頭検査を行うまで」輸入禁止とした。
 これらは国家および国際社会から台所・食卓に至るまでの大問題である。だが、連日のマスメディアがかまびすしく報じている割にはすべてが淡々と進んでいるかに思える。
 第一のイラク派兵は「行くか 行かないか」とマスメディアは騒いでいるようだが、問題はイラク派兵の合法性をつくったのは特措法であり、はたしてこれが合憲か否かが問われなくてはならなかったが、民主党はこれを国会を通してしまった。その上で第二の改憲発議のイニシアティブとなるといささか危ういものがある。
 第三のBSEは起るべくして起きたといえよう。ヨーロッパや日本でも発生してアメリカで発生しないい保障は何もないかったというべきで問題は飼料、飼育、産地の情報公開がなされるか否かである。
 各ネットを中心にイラク派兵反対のさまざまな会がもたれ出している。憲法についてのミニフォーラムも行われている。今はだまっていることが一番危険な時ではないか。沈黙は罪である。

 

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