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2)EUカルタヘナ法  (参考:原文)

遺伝子組み換え生物の越境移動に関する2003年7月15日付け欧州議会・欧州委員会規則No.1946/2003(欧州経済領域関連テキスト)

翻訳:カルタヘナ法研究会
(天笠啓祐・近藤惠津子・真下俊樹・松山朋子・山浦康明・清水亮子・倉形正則)

監修:真下俊樹

  欧州議会とEU委員会は、委員会からの提言 を考慮し、欧州経済社会委員会の意見 を考慮し、地方委員会の意見 を考慮し、本条約251条に規定された手続きに沿って行動し 、以下の事がらに鑑みて、本規則を採択した。

(1) 生物多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(以下、議定書) は、2000年に欧州共同体とその加盟国によって署名され、欧州共同体を代表して議定書を締結する理事会決定2002/628/EC が、2002年6月25日に採択された。

(2) 議定書第1条の規定によると、環境および開発に関するリオ宣言第15原則に定められている予防的アプローチに則り、議定書の目的は、生物多様性の保全および持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のある、モダン・バイオテクノロジーから帰結した遺伝子組み換え生物(GMO) の安全な移送、取り扱いおよび利用の分野において、人の健康への危険性も考慮し、特に越境移動に焦点を置きつつ、十分な水準の保護を確保することに寄与することである。

(3) 議定書は各締約国に対し、議定書が定める義務を実施するために必要かつ適切な法的、行政的、その他の手段を取ることを求めている。遺伝子組み換え生物の環境への意図的放出に関する2001年3月12日付け欧州議会・欧州理事会指令2001/18/ECは欧州委員会に対して、議定書に定められた手続きを実施し、議定書に則りEUの輸出者に対して議定書第7条から第10条、第12条、第14条に定められた事前の情報に基づく合意の要件をすべて満たすよう要請するための法案を提出するよう求めた。

(4) 人の健康への危険性も考慮しつつ、またGMOをめぐって市民が自由かつ充分な情報に基づく選択ができるように、生物多様性の保全および持続可能な利用に悪影響を及ぼす可能性のあるGMOの安全な移送、取り扱いおよび利用の分野において十分な水準の保護を確保することに寄与するため、GMOの越境移動の監視および制御を組織的に行うことが重要である。

(5) EUの法規は、GMOの第三国に対する輸出に関する特別な要件を定めていないため、GMOの越境移動に関して議定書が定める義務の確実な遵守を確保するためには、そのような輸出者について共通の法的枠組みが確立されなければならない。

(6) 輸入する締約国または非締約国のバイオセーフティのための法的枠組みを尊重することの必要性を、議定書と一貫性のあるやり方で認める必要がある。

(7) EUまたは関係加盟国が締約国となっている他の国際協定、あるいは、EUまたは関係加盟国が加盟している機関が取り扱っているヒト用の医薬品は、本規則の適用範囲から除外されるべきである。

(8) 環境への意図的放出を意図したGMOの輸出は、輸入国が科学的に健全な方法で実施されたリスクアセスメントに基づいて、充分な情報に基づく決定ができるよう、輸入する締約国または非締約国に通知されなければならない。

(9) この通報は、輸出者によって行われなければならない。輸出者は、この通報に含まれる情報の正確さに責任を持たねばならない。

(10) 輸出者は、環境への意図的放出を意図したGMOの最初の越境移動の前に、輸入する締約国または非締約国からの事前の書面による明示的な同意を得なければならない。

(11) 発展途上国および移行経済諸国の中には、こうした充分な情報に基づく決定を行うに足る能力を欠く国もあることを認識し、欧州委員会と加盟国は、これらの国が人材と制度的能力を開発できるよう持続的な努力を行わなければならない。

(12) 議定書によれば、EUあるいは他のいかなる締約国も、生物多様性の保全および持続可能な利用について議定書が定める措置以上の保護を与える行動を取ることができる。ただし、そのような行動は、この議定書の目的および規定に適合し、かつ、国際法に基づく当該締約国の他の義務に従うものである必要がある。

(13) 議定書によれば、EU域内のGMOの移動に関しては、EU域内の法規を適用することができる。

(14) 既存のEU法規、特に指令2001/18/ECおよびこの指令で定められた方針に則り実施される特定のリスクアセスメントについて定めた部門法規が、議定書の目的に沿った規則を既に含んでいるため、EUへのGMOの輸入に関する補足的な条項を採用する必要はない。

(15) GMOの輸送、取り扱い、包装の安全を確保する必要がある。既存のEU法規、特に94年11月21日付の危険物の陸上輸送に関する指令94/55/ECと1996年7月23日付の危険物の鉄道輸送に関する指令96/49/ECが既に適切な規則を含んでいるため、この点について補足的な条項を採用する必要はない。
(16) EUから輸出またはEUへ輸入されるGMOの識別を確保する必要がある。EUへの輸入品のトレーサビリティー、表示、識別については、EU法規の規則に従わなければならない。輸出についても同様の規則が適用されるべきである。[要EC見解]

(17) 欧州委員会と加盟国は、GMOの越境移動から生ずる損害に関する責任および救済の分野における国際規則および手続の適切な作成をめぐるプロセスが、議定書第27条の定めに従い議定書締約国の会合である議定書締約国会議の第一回会議において合意されることを支援する。

(18) 欧州委員会と加盟国は、議定書第18条に沿って行われている、GMOの識別に関する添付書類の共通書式のより一層の開発と適用を支援する。

(19) 人の健康への危険性も考慮しつつ、生物多様性の保全および持続可能な利用に著しい悪影響を及ぼす恐れのあるGMOの非意図的な越境移動に効果的に対応するために、加盟国は、自国の管轄下でそのような影響を及ぼす恐れのあるGMOの非意図的な越境移動につながる可能性のある放出をもたらす事態を察知した場合には、公衆に通報するための適切な措置を遅滞なく取るとともに、欧州委員会と他の加盟国、影響を受けた国あるいは受ける可能性がある国、バイオセーフティに関する情報交換センター(BCH) 、そして適当な場合には関連する国際機関に通報しなければならない。また、その加盟国は、影響を受けたあるいは受ける可能性のある国が適切な対応を決定し、必要な行動を開始できるよう、遅滞なく協議しなければならない。

(20) BCHの発展を助けるために、ECと加盟国は、必要な情報がBCHに伝達されるとともに、EUにおける議定書の実施に関するモニタリングと報告が履行されることを保証しなければならない。

(21) EU加盟国は、本EU規則への違反に適用する罰則についての規定を定めなければならない。これらの罰則は、効果的で、相当性があり、抑止効果をもつものでなければならない。

(22) 本規則の適用にあたっては、予防原則が考慮されなければならない。

(23) 本規則は、基本的人権を尊重し、特に欧州連合基本権憲章で認められている原則を遵守するものである。

 

第1章 目的、適用範囲、および定義

第1条 目的
予防原則に従い、指令2001/18/ECに抵触することなく、本EU規則の目的は、遺伝子組み換え生物(GMO)の越境移動のための共通の通報・情報制度を構築し、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を及ぼす可能性のあるGMOの安全な移送、取扱いおよび利用の分野において十分な水準の保護を確保することに寄与するために、EUを代表して議定書の規定の一貫性のある実施を確保することである。

第2条 適用範囲

1.本EU規則は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を及ぼす可能性のあるすべてのGMOの越境移動に適用される。

2.他の関連した国際協定または国際組織によって取り扱われるヒト用の医薬品は、本EU規則の適用範囲から除外される。

第3条 定義
本EU規則では、以下の定義を適用する。

1.「生物」とは、指令2201/18/EC第2条1項で定義された生物である。

2.「遺伝子組み換え生物」または「GMO」とは、指令2001/18/EC第2条2項で定義されたGMOであり、指令2001/18/EC付属文書IBで列挙された遺伝子組み換え技術によって得られる生物は除外する。

3.「意図的放出」とは、指令2001/18/EC第2条(3) で定義される意図的放出を意味する。

4.「上市化」とは、指令2001/18/EC第2条4項で、定義した上市化を意味する。

5.封じ込め使用とは、次のものを意味する。

(a) EU指令90/219/EEC 第2条(c)で定義された活動[実験室使用規定、物理的、生物学的、微生物、組み換え微生物の実験室内使用規定]。

(b) 微生物以外の生物が遺伝子を組み換えられ、あるいはそのようなGMOが栽培、貯蔵、輸送、破壊、廃棄、またはその他のあらゆる方法で使用され、一般住民や環境との接触を制限するために指令90/219/EECにあるような封じ込め原則に基づく具体的な封じ込め手段が用いられる活動。

6.「食品」とは、EU規則178/2002[食品法の一般原則] 第3条14項で規定されているもの。

7.「飼料」とは、EU規則(EC) No.178/2002第3条4項で定義された飼料を意味する。

8.「通報」とは、本EU規則の下で要請される情報を輸出者から議定書の締約国の管轄当局または非締約国の管轄当局に提示することを意味する。

9.「バイオセーフティ情報交換センター」(BCH) とは、カルタヘナ議定書第20条の下に設立されたBCHを意味する。

10.「輸出」とは、次のものを意味する。

(a) 条約第23条2項の条件を満たしつつ、GMOのEU関税領域から恒常的または一時的に離れること。

(b) (a)で言及した条件を満たさないGMOの再輸出のうち、通過以外の関税手続きに付されるもの。

11.「輸入」とは、EU内の締約国からEU外の締約国または非締約国の関税領域に導入されたGMOを通過手続き以外の関税手続きに付すことを意味する。

12.「輸出者」とは、それによって、またはそれに代わって通報が行われたあらゆる自然人または法人を意味する。つまり通報が送付された時点で第三国の荷受人との契約を保有しており、かつGMOをEU関税域外に送出することを決定する権限をもつ者である。輸出契約が締結されていないか、契約保有者が自ら実行しない場合は、GMOをEU関税域外に送出することを決定する権限をもつことが決定要因となる。

13.「輸入者」とは、輸入する締約国または非締約国の司法権の下で、GMOが輸入されるよう手配した自然人または法人を意味する。

14.「越境移動」とは、加盟国または非加盟国と他の加盟国または非加盟国との間の意図的もしく非意図的なGMOの移動を意味する。ただし、EU内の締約国間の意図的移動は除く。

15.「締約国」とは、カルタヘナ議定書の締約国であるあらゆる国または地域的経済統合機関を意味する。

16.「非締約国」とは、カルタヘナ議定書の締約国でないあらゆる国または地域的経済統合機関を意味する。

17.「議定書」とは、生物多様性に関する条約(条約) のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書を意味する。

18.「生物多様性」とは、すべての生物(特に、陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系) の間の変異性を意味し、種内の多様性、種間の多様性および生態系の多様性を含む。

19.「管轄当局」とは、議定書締約国によって指定された管轄当局、または非締約国のこれと同等の機関である。これらの機関は、議定書の求める行政的機能を果たす責任を負うもの、あるいは非締約国の場合にはこれと同等の機能を果たす責任を負い、これらの機能の面で各国を代表して行動する権限を与えられたものを意味する。

20.「中央連絡先」とは、締約国を代表して事務局との連絡に責任をもつよう締約国によって指定された機関を意味する。

21.「事務局」とは、議定書事務局を意味する。

 

第2章 第3国へのGMOの輸出

第一節 意図的環境放出を意図したGMO

第4条 輸入する締約国または非締約国への通報
意図的環境放出を意図し、付属書Tの(i) に沿った具体的使用法を目的とするGMOの最初の意図的な越境移動に先立って、輸出者は、輸入する締約国の管轄当局に対して書面による通報を確実に行わねばならない。その通報は最低限、付属書Tに定める情報を含まなければならない。輸出者は通報の正確さを確保する。

第5条 決定が行われない場合

1.輸入する締約国が通報の受領に気づかない場合、あるいは決定を伝えない場合、これは越境移動への同意を含意するものではない。輸入する締約国または適切な場合には非締約国の書面による合意がない場合、最初の越境移動を行わない。

2.輸入する締約国が、通報受領後270日以内に通報に対する決定を伝えない場合、輸出者は輸入締約国の管轄当局に対して書面による督促を、この督促受領後60日以内の回答期限付きで送付するとともに、その写しを事務局、輸出する加盟国、欧州委員会に送付する。輸入する締約国が回答すべき期限を計算するさいには、この締約国が追加的な関連情報を得るために必要な日数は除く。

3.第1パラグラフに抵触しない範囲で、締約国によって議定書第9条、第10条に則り決定された手続き、または適切な場合には非締約国が求める同等の手続きがとられない限り、輸出者は、意図的環境放出を意図したGMOの最初の越境移動を進めない。

4.第1.第2.第3パラグラフは、議定書第13条・第14条に則り締結された二国間、地域的、多国間の協定または取決め、あるいは略式手続きの対象となる越境移動の場合には適用されない。

5.欧州委員会と加盟国は、事務局と協議の上、輸入締約国の政策決定を容易にし、あるいは議定書の締約国の会合としての役割を果たす生物多様性条約締約国会議によって決められたように、輸入締約国による議定書条項の遵守を促すため、あらゆる適切な手続きとメカニズムに従って、適切な行動を取る。

第6条 輸出締約国への通知
輸出者は、少なくとも5年間、第4条で言及された通報の記録、通報受領証、輸入締約国あるいは適切な場合には非締約国の決定を保存するとともに、これらの文書の写しをGMOが輸出される加盟国の管轄当局と欧州委員会に送付する。

第16条に抵触しない形で、欧州委員会は、環境情報の入手に関するEUの規則に従って、これらの文書を一般市民が入手できるようにする。

第7条 決定の見直し

1.輸出者が、決定の根拠となったリスクアセスメントの結果に影響を与えるような状況の変化が生じたと考える場合、あるいは、関連する追加的な科学的あるいは技術的情報が入手可能になったと考える場合、輸出者は輸入する締約国または適当な場合は非締約国に対して、議定書第10条に準じて行った通報に関して行った決定を見直すよう求めることができる。

2.輸入する締約国または非締約国がそうした要求に90日以内に回答しない場合、輸出者は締約国または適切な場合は非締約国の管轄当局に書面による督促状を、その受領後の期限を設定して送付して返答を求めるとともに、その写しを事務局に送付する。

第8条 本章第1節の特例

1.議定書締約国の会合としての役割を果たす生物多様性条約締約国会議の決定によって、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を及ぼす可能性がないと識別されたGMOの意図的環境放出は、本章第1節の適用範囲から除外される。

2.本章第1節は、食料、飼料、加工用として直接使用することを意図したGMOには適用されない。

3.本章第1節で言及された義務は、議定書第13条(1) (b) と第14条 (3) に従って輸入締約国がそのようなGMOの輸入が議定書第7条から第10条、第12条および第14条に定められたAIA手続きから除外されることをBCHに対して事前に指定している場合、免除される。ただしこれは、議定書の目的に沿った安全な意図的越境移動を確保するための適切な手段が取られる場合に限られる。

 

第二節 食料・飼料・加工用として直接使用することを意図したGMO

第9条 BCHへの通知

1. EUを代表して欧州委員会または適切な場合には決定を行った加盟国は、BCHとBCHを通して他の加盟国に対して、食用、飼料用、加工用として直接使用されるために越境移動するGMOのEUまたは加盟国内での使用(上市化を含む)に関する最終決定を通知する。この通知は決定から15日以内にBCHに送付する。
このパラグラフは、第三国において、次の決定がなければ食用、資料用、加工用として直接的に使用することが意図されないGMOの、指令2001/18/ECのパート Bに沿った意図的放出に関する決定には適用されない。

2.第1パラグラフで言及され、BCHに送付される通知には最小限、付属書Uに規定された情報が含まれる。

3.第1パラグラフで言及されている欧州委員会と加盟国は、締約国または非締約国から第一パラグラフで言及された決定に関わるような追加的情報を求められた場合、その要求に対応する。

4.第1.第2.第3パラグラフで言及された通知の写しは、第1パラグラフで言及された欧州委員会または加盟国によって、BCHにアクセスできないことを事前に事務局に通知した各締約国の中央連絡先に書面で送付される。

第10条 輸出に関する締約国と非締約国の国の決定

1.輸出者は、議定書第11条4項に沿って締約国が行った食料、飼料、加工品のGMOの輸入に関するあらゆる決定、あるいは非締約国が議定書の目的に添った国内の法的枠組みのもとで行ったあらゆる決定を尊重する。

2.発展途上国の輸入締約国または非締約国、または移行経済締約国または非締約国が、食料、飼料、加工品として直接的に使用することを意図した特定のGMOの輸入に先立って議定書の第11条6項に従った決定を行うことをBCHを通じて宣言した場合、輸出者はその条項で定められた手続きが取られない限り、そのようなGMOの最初の輸出手続きを進めない。

3.輸入締約国または非締約国が通報の受領を連絡しなかったり、第2パラグラフに沿った決定を連絡しないことは、食料、飼料、加工品として直接使用することを意図したGMOの輸入に同意または拒否したことを意味しない。欧州委員会で承認されない限り、あるいは、第三国の管轄当局が、規則(EC) No178/2002第12条の下で求められているように、明確に輸入に同意しない限り、食料、飼料、加工品として直接使用されることを意図したGMOは輸出されない。

 

第三節 封じ込め利用

第11条

1.第二章第1節の条項は、輸入締約国と非締約国の基準に則って行われる封じ込め利用を意図したGMOの越境移動には適用されない。

2.第1パラグラフは、輸入に関する決定に先立ってあらゆるGMOをリスクアセスメントに付する締約国または非締約国の権利、そしてそれらの国が自国の司法管轄域内で封じ込め利用に関する基準を設定する権利に抵触するものではない。

 

第4節 共通条項

第12条 識別と添付資料

1.輸出者は以下の情報を、GMOに添付する書類に確実に記載する。また、そのような情報をGMOを受け取る輸入者に伝える。
(a) GMOを含むか、GMOで構成されること。
(b) 固有の識別コードがある場合はそのコード。

2.食料、飼料、加工品としての直接利用を意図したGMOについては、輸出者は宣言によって、第1パラグラフで言及された情報を以下の情報で補足する。
(a) これらのGMOが食料、飼料、加工品としての直接使用を意図したものであり、意図的環境放出を意図したものでないことの言明。
(b) より詳細な情報を得るための連絡先。
第1パラグラフ (b) は、食料、飼料、加工品用としてのみ直接使用されることを意図したGMOからなる製品、あるいはそのようなGMOの混合物を含む製品には適用されない。このような製品は、指令2001/18/ECの定めるトレーサビリティーの要件と、適用可能な場合には、GMOのトレーサビリティー、表示、識別を対象とする今後のEU法規に則る。

3.封じ込め利用を意図したGMOについては、輸出者は宣言によって以下の点を明示し、第1パラグラフで言及された情報を補足する。
(a) これらのGMOの安全な取り扱い、貯蔵、移送、使用のための要件。
(b) これらのGMOの出荷元と荷受先の個人または組織の名称と住所など、より詳しい情報を得るための連絡先。

4.意図的放出を意図したGMOと、本EU規則が適用される他のあらゆるGMOについては、輸出者は宣言によって以下の点を明示し、第1パラグラフで言及された情報を補足する。
(a) GMOの識別、関連する特質、特性。
(b) これらのGMOの安全な取り扱い、貯蔵、移送、使用のための必要条件。
(c) より詳しい情報を得るための連絡先、適切な場合には輸出者と輸入者の名称と住所。
(d) 輸出者に適用される議定書の要件に則って移動がなされていることの宣言。

5.第1パラグラフから第4パラグラフは、EU法規が定める他の特定の要件ならびに議定書第18条が定める国際的な識別要件に抵触するものではない。

第13条 通過
輸出者は、自国領土内のGMOの通過を規制することを決定し、その決定をBCHに報告している締約国に対し、GMOの通過を確実に通報する。

 

第3章

第14条 GMOの非意図的な越境移動

1.加盟国は、GMOの非意図的な越境移動を防止するために適切な処置を取る。

2.加盟国は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響(人の健康に対する危険も考慮したもの)を及ぼす可能性のある非意図的な越境移動につながる、あるいはつながる可能性のあるGMOの放出が生じるような事態が自国の司法管轄域内で起きていることに気づいた場合、ただちに以下のようなことを行う。
(a) 公衆に通知するための適切な措置をとり、遅滞なく欧州委員会、他のすべての加盟国、影響を受けた、あるいは受ける可能性のある国家、BCH、そして適切な場合には、関連国際機関に通報する。
(b) 影響を受けた、あるいは影響を受ける可能性のある国家が、適切な対応を決定し、あらゆる重要な悪影響を最低限に抑えるための緊急措置といった必要な行動が取れるよう、これらの国々と遅滞なく協議する。

3.第2パラグラフから生じるあらゆる情報は、付属書Vで指定される情報を含む。

 

第4章 共通条項

第15条 国際情報手続きへの参加

1.加盟国は、議定書の秘密条項に抵触することなく、BCHと欧州委員会に以下のことを通知する。
(a) 議定書第11条5項、第20条3項(a)に沿った議定書の実施に関係する国内法と指針。
(b) 非意図的な越境移動について、議定書第17条に基づく通報のための国内の連絡先。
(c) GMOの意図的な越境移動について、議定書第20条3項に則り加盟国によってなされた二国間、地域的および多国間の協定および取決め。
(d) 加盟国に関係する非意図的あるいは不法なGMOの越境移動について、議定書第17条および第25条に則った情報。
(e) 加盟国内のGMOの使用について、加盟国が下した最終決定。その決定には、以下のものが含まれる。
−越境移動が行われる可能性のあるGMOのリスク・クラス3あるいは4に分類される封じ込め使用についての決定。
−指令2001/18/ECのパートB[屋外実験に関する条項]に沿ったGMOの意図的放出に関する決定。
−GMOのEU内への輸入に関する決定。
  議定書の第11条と第20条3項 (d) に則り、決定されてから15日以内に通知されなければならない。
(f) 欧州委員会の法的手続きによるGMOのリスクアセスメントと環境レビューのあらゆる要約、そして議定書第15条に沿って行われる、GMOのリスクアセスメントと環境レビューのあらゆる要約。適切な場合には、そのGMOから作られた製品、特にGMO由来であり、議定書の第20条3項 (c)に則りモダン・バイオテクノロジーを用いて得られた複製可能な遺伝物質の新規な組み合わせが検出可能なレベルで含まれる加工原料についての関連情報。
(g) 意図的な越境移動に関する国家決定の議定書12条に則った再検討。
(h) 指令2001/18/ECの第23条の下でのセーフガード措置について加盟国によって行われる決定、またはGM食品と飼料に関するEU法規の下で加盟国が取る緊急処置。

2.欧州委員会は、議定書の条項に則り、EUを代表してBCHに以下のことを伝える。
(a) 議定書第11条5項、第20条3項Bに則り議定書を実施するためのEUの法規と指針。
(b) 意図的な越境移動に関するEUレベルでの議定書第20条3項(b) に沿った2国間、地域間、多国間の協定と取り決め。
(c) 議定書第11条ならびに第20条3項 (d) に則りEU域内でのGMOの使用に関してEUレベルでなされた最終決定。例えばGMOの上市化あるいはGMOの輸入に関する決定。
(d) 欧州委員会の法的手続きと、EU指令2001/18/ECの付属書Uの定める同様の手続きに則り実施されるGMOのリスクアセスメントと環境レビューのあらゆる要約。適切な場合には、そのGMOから作られた製品、特にGMO由来で、議定書第20条3項 (c) に則りモダン・バイオテクノロジーを用いて得られた複製可能な遺伝物質の新規な組み合わせが検出可能なレベルで含まれる加工原料についての関連情報。
(e) 意図的な越境移動に関するEUレベルの決定について議定書第12条に則った再検討。
(f) GMOのEU域内での意図的移動とEUへのGMOの輸入に関して、議定書第14条3項および4項に則り議定書の定める手続きの代わりに適用するEU法規。
(g) 本EU規則第19条に関して提出される報告。その報告には、議定書第20条3項(e) に則ったAIA手続きの実施に関するものも含まれる。

第 16条 機密事項

1.欧州委員会と加盟国は、第三国に対し、本EU規則の下で受け取った、あるいは交換されるいかなる機密情報も漏らさない。

2.輸出者は第4条に基づく通報の中で、部外秘として取り扱うべき情報を指定することができる。そうした場合、要求に応じて、正当化の理由が提供される。

3.第4条、第9条あるいは第12条に基づいて提出された次のような情報は、いかなる場合でも部外秘としない。
(a) 輸入者と輸出者の名前と住所。
(b) GMOに関する一般的描写。
(c) 生物多様性の保全および持続可能な利用への影響(人の健康に対する危険も考慮したもの) についてのリスクアセスメントの要約。
(d) 緊急対応のためのあらゆる手段と計画。

4.いかなる理由であれ、輸出者が通知を取り下げる場合は、加盟国と欧州委員会は、研究開発の情報を含む商業情報および工業情報、ならびに輸入する締約国または非締約国と輸出者との間で機密性について合意されていない情報の機密性を尊重しなければならない。

第17条 管轄当局と中央連絡先

1.欧州委員会はEUの中央連絡先を指定すると同時に、適切な場合には、管轄当局を特定する。

2.各加盟国は一つの中央連絡先を指定し、一つ以上の管轄当局を指定する。

3.EUを代表する欧州委員会と各加盟国はそれぞれ、議定書が施行される日付に遅れることなく、中央連絡先と管轄当局の名称と住所を事務局に通知する。加盟国あるいは欧州委員会が一つ以上の管轄当局を指定する場合、事務局に通知するさいにこれらの当局のそれぞれの責任についての関連情報も含める。適用可能な場合、そのような情報は最小限、どの当局がどのタイプのGMOに責任を持つのかを特定する。欧州委員会および加盟国は、指定された中央連絡先の変更、あるいは管轄当局の名称および住所、あるいは責任の変更を事務局に遅滞なく通知する。

第18条 罰則
EU加盟国は、本EU規則への違反に対して適用する罰則規定を定めなければならない。これらの罰則は効果的で相当性があり、抑止効果のあるものでなければならない。加盟国はこれらの条項について2004年11月5日までに欧州委員会に通知しなければならない。もし変更のある場合は、遅滞なく通知しなければならない。

第19条 モニタリングと報告

1.議定書第33条で別の定めがある場合を除いて、加盟国は、この規則の実施に関する報告を定期的かつ最低3年ごとに欧州委員会に提出する。

2.欧州委員会は、議定書の締約国会議として開催される生物多様性条約締約国会議で決められた間隔で、各加盟国から提供される情報にもとづいた報告書を編集し、議定書の締約国会議として開催される生物多様性条約締約国会議に提出する。

第20条 発効

1.本EU規則は、「欧州委員会官報」の発行後20日目に発効する。

2.本EU規則は、カルタヘナ議定書第37条1項に従った議定書の発効日か、本EU規則の発効日のうち、いずれか遅い日に適用される。

附属書T 第4条において必要とされる情報
(a) 輸出者の氏名または名称、住所および連絡先についての詳細。
(b) 輸入者の氏名または名称、住所および連絡先についての詳細。
(c) GMOの名称およびその識別についての情報並びにGMOのバイオセーフティの水準について輸出国における国内の分類がある場合にはその分類。
(d) 越境移動が予定される日が判明している場合にはその日。
(e) バイオセーフティーに関連する受容体生物または親生物の分類学上の位置、一般名称、採集または取得された場所および特性。
(f) 受容体生物または親生物の起原の中心および遺伝的多様性の中心が判明している場合にはそれらの中心並びにこれらの生物が存続または繁殖する可能性のある生息地に関する説明。
(g) 供与体生物あるいはバイオセーフティに関連する生物の分類学上の位置、一般名称、採集または取得された場所および特性。
(h) 導入された核酸または改変、使用された技術およびこれらの結果GMOに生じた特性に関する説明。
(i) GMOまたはこれを用いた生産物(GMOを起源とする加工された素材であって、指令2001/18/ECの付属書 I Aパート1に列挙されたモダン・バイオテクノロジーの利用によって得られる、複製可能な遺伝素材の検出可能な新たな組合せ)の意図された用途。
(j) 移送される改変された生物の数量または容積。
(k) 指令2001/18/ECの附属書Uの規定に適合する既存のリスクアセスメントに関する報告。
(l) 適当な場合には、包装、ラベル等による表示、文書の添付、処分および緊急時の手続を含む安全な取扱い、保管、輸送および利用の方法についての提案GMOの規制の状況(例えば、当該GMOが輸出国において禁止されているか否か、他に制限があるか否か、または当該GMOの一般的な放出が承認されているか否か) および当該GMOが輸出国において禁止されている場合にはその禁止の理由。
(n) 移送されるGMOに関し輸出者が他の国に対して行った通報の結果および目的。
(o) 上記の情報が事実関係について正確であることの宣言。

 

附属書U 第9条の規定により必要とされる情報
(a) 国内利用に係る決定についての申請を行う者の氏名または名称および連絡先についての詳細。
(b) (a)の決定について責任を有する当局の名称および連絡先についての詳細。
(c) GMOの名称およびその識別についての情報。
(d) 遺伝子の改変、使用された技術およびこれらの結果GMO生じた特性に関する説明。
(e) GMOの固有の識別記号。
(f) GMOのバイオセーフティに関連する受容体生物または親生物の分類学上の位置、一般名称、採集または取得された場所および特性。
(g) 受容体生物または親生物の起原の中心および遺伝的多様性の中心が判明している場合にはそれらの中心並びにこれらの生物が存続または繁殖する可能性のある生息地に関する説明。
(h) 供与体生物とバイオセーフティに関連する生物の分類学上の位置、一般名称、採集または取得された場所および特性。
(i) GMOの承認された用途。
(j) 指令2001/18/ECの附属書Uの規定に適合する既存のリスクアセスメントに関する報告。
(k) 適当な場合には、包装、ラベル等による表示、文書の添付、処分および緊急時の手続を含む安全な取扱い、保管、輸送および利用の方法についての提案。
付属書V 第14条において必要とされる情報
(a) GMOの推測される量と特性・特質についての入手可能な関連情報。
(b) 放出の状況と推定される日付、もともとGMOが存在した締約国での使用法についての情報。
(c) 生物多様性の保全および持続可能な利用に与える可能性のある影響(人の健康に対する危険も考慮したもの) について、入手可能な情報。
(d) その他あらゆる関連情報。
(e) 追加的情報の問合せ先。

 


1 OJ C 151 E, 25.6.2002, p. 121.
2 OJ C 241, 7.10.2002, p. 62.
3 OJ C 278, 14.11.2002, p. 31.
4 2002年9月24日付欧州議会意見(官報未掲載)、2003年3月4日付評議会共通見解 (官報 C 107 E, 6.5.2003, p. 1)、2003年6月4日付欧州議会決定(官報未掲載)、および2003年6月16日付評議会決定。
5 OJ L 201, 31.7.2002, p. 48.


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