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市民セクター政策機構

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3.東京都練馬区「都市農業でコミュニティ再生(白石農園)

季刊『社会運動』 2016年10月【424号】 特集:地域自給で生きる 

野菜作りのカルチャースクール農業体験農園


 7月下旬の日曜日、白石農園では「大泉風のがっこう」(以下風のがっこう)という農業体験農園の「野菜づくり講座」が開かれていた。農園内にあるビニールハウスに集まった参加者は70人以上。はじめに白石さんは、現在、畑で育てているインゲン、枝豆などの最後の収穫と後片付けまでを説明し、秋に向けて育てるニンジンの種蒔き、水やり、その次のネギを植える溝の作り方や苗の植え方を丁寧に話す。
 その後、畑に出て、ニンジンの種蒔きを実際にやってみせる。回りを囲んだ参加者たちは真剣なまなざしで白石さんの手元を見ながら、メモを取っている。
 炎天下での実技指導が30分ほどで終了すると、参加者は自分の区画に戻り農作業を始める。年配の夫婦から幼い子どもを連れた家族まで、トウモロコシやナスなど夏野菜の収穫に励んでいた。
 白石さんは農業体験農園について、「一般の市民農園は農地を借りた人が作業を全部やるが、体験農園は農家から技術指導を受けながら、野菜を育て、収穫する。市民農園では農家は農地を貸すだけだが、体験農園は農家も農業をしながら、自分の経験や技術を指導し、参加者には農家に負けない野菜を収穫してもらう野菜作りのカルチャースクール」と説明する。ちなみに練馬区の農業体験農園には、区から施設整備費などが助成される。
 2016年には17園が開設され、約1800組の家族や個人が1区画(30平方メートル)を年間利用料3万8000円(種子、肥料、農具などは農園で用意)で利用している。
最長5年間継続できるので、土づくりや低農薬にもチャレンジできる。  
市民が自己流で栽培するのとは違い、地域に受け継がれてきた品種と農法による栽培指導がされるので、ほとんど失敗なく農産物を作ることができ、スーパーでの購入価格に換算すると1年間で8万円ほどの収穫になるという。農家も天候に関わりなく安定した収入が得られ、農作業の負担も軽減する。
 白石さんは1997年から体験農園に取り組み、1・4ヘクタールの農地のうち、現在は0・6ヘクタール(134区画)を体験農園が占める。もともとは、練馬区の農家の友人と「これからの時代、野菜を売るより野菜作りのノウハウを売る農業の方がおもしろい」という発想で始めたことだった。しかし、体験農園に参加する人たちの反応は、農家の白石さんには想定していた以上のものであった。
「体験農園を続ける中で、農(耕す、収穫する)を求める人がたくさんいることを知った。参加者との交流で都市農業への理解も広がった。また、自らの農業技術の向上にもつながり、農民であることにより誇りが持てるようになった。農に感動や、癒しがあることも新しい学びだった」と、「農の多様な機能」を改めて認識した。「畑の周囲に有刺鉄線を張って誰も入れず、作った農産物は市場に出すというのでは、地域の人たちとうまくやっていけない。都市農業の一つのあり方として、畑に参加してもらい、地域の人と共生していくことを考えていきたい」と話す。
 農業とは無縁の生活をする人が大半の都市において、白石農園は、農産物や体験農園を通して、地域とのネットワークを作っていった。さらに、白石農園に関わる地域の人たちのつながりも広がり、地域住民の新しいコミュニティ形成にも役立っている。
 農園の一角には農家レストラン「La 毛利ターブルペイザンヌ」がある。オーナーシェフの毛利彰伸さんは、風のがっこうの参加者で、白石農園の穫れたての野菜を使って料理を提供している。「作り手や生産地がわかるものを使うことは、提供する側にとって大きな魅力だし、お客さんにとっても安心なこと」と話す。地場野菜の魅力が、レストランと農園の出会いからも発信されている。


(P.68~P.71 記事から抜粋) 66-67

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