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市民セクター政策機構

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4.東京都墨田区「廃食油の回収から地域発電へ」(TOKYO油田プロジェクト)

季刊『社会運動』 2016年10月【424号】 特集:地域自給で生きる 

「ゴミ」を「資源」に!
廃食油からバイオ燃料を開発


 染谷さんは、1968年、東京の下町・墨田区の廃油処理業「染谷商店」に生まれた。墨田区には戦前から大手のせっけん会社が集中し ていたため、その原料となる廃油の回収業者がかなりあった。かつてせっけんが高価だった時代は、その材料である廃油も米や醤油と同じくらいの値段で売れたのである。
 しかし、高度経済成長期に入るとせっけんなどの原料は輸入に依存するようになり、国内の廃油は徐々に使われなくなった。そのため廃油回収業は次々に廃業に追い込まれていく。そうした中で、1991年、23歳の染谷さんは「環境の仕事がしたい」と、染谷商店への入社を決めたのである。アジア各地を旅する中で、自然と人間の共生を考えるようになった染谷さんが、環境とビジネスを結びつける仕事をしたいと模索し、行き着いたのが家業の廃油回収業だったのだ。
 92年末、染谷さんと染谷商店のその後を決定づける情報が新聞に書かれていた。アメリカのミズーリ州で、新品の大豆サラダ油からバイオ燃料(BDF)(注1)が作られ、すでに200台もの空港バスがそれを使って走っているというのだ。染谷さんたちは、「廃食油でもできるかもしれない」と研究を始め、翌93年、世界ではじめて廃食油からのバイオ燃料の開発に成功。野菜(植物)のディーゼル燃料という意味で「VDF(Vegitable Diesel Fuel:ベジタブル・ディーゼル・フューエル)」と名付けた。当時、バイオやバイオマスという言葉は全く知られていなかったため、大豆や菜種などの植物から搾った植物油から作った自動車燃料と言った方がわかりやすく、また、自分たちの想いを表現できると思ったからだ。
 1リットルの廃食油から900〜950ミリリットルのVDFができる。これを2トントラックに給油すると、約6・3キロ走らせることができる。「ゴミ」が「燃料(資源)」に生まれ変わったのである。


(P.80~P.81 記事から抜粋) 78-79

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