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新たな遺伝子操作技術「ゲノム編集」の問題点(北海道大学教授 石井哲也)

季刊『社会運動』 2016年10月【424号】 特集:地域自給で生きる 

─ゲノム編集という技術に問題はないのでしょうか?

 ゲノム編集は、遺伝子組み換えよりも精度の高い技術です。ただし進歩しているとはいえ、100%確実というわけではありません。「狙った遺伝子だけをターゲットにする」と言われますが、そうならない場合もあるのです。切断しようとした場所と遺伝情報が似ている場合、誤った場所を切断してしまうことがあります。これを「オフターゲット作用」と呼びます。もしも誤って切断した場所に重要な遺伝子があると、ガンなどの病気を発症してしまう恐れがあります。食用作物の場合、アレルギー物質などが生じる恐れもあります。
 今後、ゲノム編集を使った医療や、食品の安全性、環境への影響評価などを議論する際に、この「オフターゲット」の問題は避けて通れない重要な課題となるはずです。

─ゲノム編集で開発された生物に規制は必要ないのでしょうか?

遺伝子組み換え作物について言えば、これまで、「従来の作物と実質的に同等である」という米国の主張を前提に、流通しているのが 現状です。他方では「同等ではない」という見解もあります。農産物の輸出国であるニュージーランドは、自国製品のブランドの信頼度を守るため、「遺伝子組み換え作物もゲノム編集も全てが規制対象である」と規制を改正しました。結局、各国の状況に応じて判断しているのが実態です。
 ただし、ゲノム編集では、これまでのような「実質的同等性」議論を超える生物の開発が、あり得るかもしれません。ゲノム編集を遺伝子組み換えの一分野と考えるのか、別の新しい技術と位置づけるのかについては、今後、世界全体の課題となるでしょう。


(P.140~P.141 記事から抜粋) 136-137

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