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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

社会運動には笑いの技術が有効でしょ(芸人・記者 おしどりマコ)

季刊『社会運動』2017年1月【425号】特集:STOP THE WAR! 護憲派による「新九条」論争

 はー、今の世の中、原発事故以外にもいろいろ問題が山積みですからね! さて、世の中をどうやって動かしていくか、について先日こんなやりとりがありました。著名な先生とご一緒する講演会があったのですが、その方が「社会運動は希望がないといけない、いろいろ酷い状況を並べるだけではダメだ、希望がなければ人は動かないのだから。酷いことを並べるだけの社会運動が多いから続かないんだ」と、おっしゃってました。えええ? そうかな? だって夢も希望もないわ! みたいなこと実際多いもんね、その当事者の方々が「辛いっす!」と言っても、希望がなければ周囲は動かねえよ、なんて、おかしくない??

 私はこう言いました。

「確かに、希望がなければ人は動きにくいですよね、でも本当に救いのないことってあるでしょ、でも何とかしたい。私は希望がなくても『笑い』があれば人は動くのでは、と思います。実際、いろいろ取材をしていて、酷い状況を笑い飛ばすことができる人たちは強いです。先日、山形に自主避難している元原発作業員のご家族を取材に行ったとき、お子さんが3人もいて大変な状況なのに『俺、無職になっちゃったんすよ、もんじゅと一緒、スーパーニートっすよ! もんじゅはいいな、働かなくてもいっぱい金もらえるもんな!』と面白いことばっかり言ってました。大変な状況なのに、ご家族仲良くて明るくて、でもきっちり怒ったり抗議したりもされていて。

 また、芸人が原発事故を取材することについて、仲良くなった被災地の方々に伺ってまわったことがあります。そうしたら多くの方にこう言われました。『原発事故後、たくさんの人が安全だ、危険だ、と話をしにきた。どちらの側の人も、怖い顔で難しい話。本当はちゃんと聞かないといけないけど事故の話は恐ろしくて耐えられない。でも芸人がちょいちょい面白いことを挟みながら原発事故の話をしてくれると最後まで聞ける。私たちのために取材をして、そして話をしにきて』。と、いうわけで、私は、希望がなくても、酷いことを笑い飛ばす技術があれば、伝えることも、そして人を巻きこむこともできるのでは、と思います。怒り続けるためにも、笑い飛ばす技術は有効です。水俣病や米軍基地問題や、あちこちで取材をして感じることは、明るい人は強いし、うっかり人を巻き込めるのです!」

 と、いうわけで、酷い問題があちこちにあるけれど、しかめつらしてため息ついても、避けられちゃう一方なので、明るく楽しげに「ひゃーこんな酷いこといっぱい‼」と話しながら「ふざけんじゃないよ?」と全力で怒るコツを身に付けましょうぜ!

(P.132~P133 記事から抜粋)

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