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市民セクター政策機構

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「貧困は自己責任」と放置すれば日本は危機的状況的になる(市民セクター政策機構 専務理事 白井和宏)

季刊『社会運動』 2017年4月号【426号】20年後、子どもたちの貧困問題 格差社会を終わらせよう

「子どもの貧困」とは、「貧困状態にある家庭の問題」

 子どもの6人に1人が相対的貧困状態にあるという。これまで「見えない貧困」と言わ

れてきたが、少しずつ支援の輪が広がり、子ども食堂も全国各地に広がりつつある。

だがそもそもは「家庭が貧しいために、子どもが貧困状態に置かれている」のであり、

本来、支援すべきは家庭そのもののはずだ。

 ところが貧困状態にある「大人」に対して、世間の眼は極めて冷たい。「子どもに罪

はないが、大人の貧困は自己責任」というのが今も日本の社会常識になっているから

だ。

 

20年後、すべての子どもは大人になる

 しかし当然のことながら今は子どもであっても10年後、20年後には皆、大人になる。

少子高齢化と人口減少が急速に進む、日本の今後は極めて暗い。わずか8年後の2025年

には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、「超・超高齢社会」を

迎える。

 65歳以上の人口は3500万人を突破する一方で、15歳〜64歳の生産年齢人口は7000万人

まで落ち込む。子どもたちが大人になった時の経済状況が日本社会に大きな影響を与

えるのだ。

 

子どもの貧困がもたらす、大きな社会的損失

 貧困状態にある子どもは貧困の連鎖に巻き込まれる。自己評価や学習意欲が低下し、

進学や就職への期待も下がる。

 そのため、さらに非正規社員や失業者・無業者が増え、1人あたりの生涯所得も大きく

減少する。社会保険料や年金を納入できなくなる人びとや、生活保護受給者も増える

だろう。

 結果として、社会的損失は40兆円にのぼるという試算もある(『子どもの貧困が日本を

滅ぼす』日本財団子どもの貧困対策チーム、文春新書、2016)。

 子どもの貧困対策は急務の問題である。「貧困は自己責任」として放置すればやがて

日本社会全体が危機的状況になる。

 

「自己責任」社会から、「社会的貯蓄」社会へ

 そこで阿部彩氏は「子どもの貧困対策は(社会的な)〝投資〟」と考えようと主張する。

衣食住の提供にとどまらず、成人するまでの20年という長期的観点で支援政策を考え

るべきなのだ(本誌84頁)。

 そのための財源はどうするのか。井手英策氏は、これまでのように「自分のために貯

蓄」するのではなく、「社会に蓄える」という発想の転換を訴える(100頁)。税金や社

会保障費の負担率を高めて、「全員に分配すれば格差は必ず小さくなる」と考えてい

るのだ。

 増税に抵抗感の強い日本で、果たして実現可能だろうか?

 しかし、高負担によって「子どもの幸福度先進国1位」を実現したオランダというモデ

ルがある。リヒテルズ直子氏の報告をお読みいただきたい(117頁)。

 

(P.6~P.7記事全文)

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