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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

生きづらさを抱える若者を支援する場を地域でつくる-NPO法人 リロード/ワーカーズ・コレクティブ はっぴいさん

季刊『社会運動』 2017年4月号【426号】20年後、子どもたちの貧困問題 格差社会を終わらせよう

高齢者の暮らしをサポートする生きづらさを抱える若者たち

―「はっぴいさん」設立の経緯は?

 

 神奈川には「ワーカーズ・コレクティブ協会」(以下、ワーコレ協会)という団体

があります。その起業講座には、意欲があっても様々な事情で働くことが困難な

障がいのある人や無業・失業中の若者なども参加するため、そうした人びとを対象に、

就労支援を展開していました。

 2011年に神奈川県は若者の就労支援をすすめるために「くらしのサポートプロジェク

ト」を始めました。ワーコレ協会は助成金を受け、地域の高齢者の暮らしを若者が中

心となってサポートする事業を立ち上げることにしました。そこでワーコレ協会と横

浜市西区で家事支援サービスを行っているNPOが協力し、若者の「居場所兼働き場」づ

くりのプロジェクトを進めたのがはっぴいさん設立のきっかけでした。集まってきた

若者たちは、ひきこもっていたが働いてみたい人や、仕事に疲れてしまって職場を離

れたがもう一度復帰したい人、いろいろな職場に行ったが長続きしなかった人などで

した。

 8月に準備会を立ち上げ、13回もの会議を重ね、事業目的や計画、ワーカーズの名前ま

で決めました。そして、2013年2月、イタリアの社会的協同組合B型モデルを目指

してはっぴいさんを設立しました。

 西区には「ばぁばの家あさだ」という多世代交流の場があり、そこに事務所を置きま

した。当初のメンバーは、ひきこもり経験者や障がいをもつ若者たち5人と、家事介護

サービスの仕事をしてきたシニア世代のワーカーズメンバー6人でした。「ばぁばの家

あさだ」を通じて仕事を請けるようになったのです。

 

―はっぴいさんの仕事内容を教えてください。

 

 地域の高齢者の暮らしのちょっとした困りごとのサポートで、部屋の片づけ・清掃、

窓拭き、家具の移動、障子の張り替え、草むしり・庭木の剪定、ゴミ出し、買い物の

手伝いなどでした。生活体験や社会経験が少ない若者と人生経験豊かなシニアがセッ

トで作業に携わることにしました。シニア世代は経験豊富ですが、力仕事は不向きで、

一方、若者は力があり、記憶力もしっかりしていて、お互いに補完しながら仕事がで

きます。

 電話で依頼内容を受け付け、日時などを打ち合わせて2人以上で現場に行って作業する

というのが仕事の流れです。月曜日から金曜日の9時~17時(時間外あり)で、料金は、

1人あたり1時間1200円です。

 現場に行くと、準備していた仕事以外にもさまざまな依頼に遭遇します。たとえば、

お掃除のついでに壁紙貼りを急に頼まれたことがありました。躊躇したものの「やっ

てみましょう」と引き受けてやり遂げた時には「やればできるじゃない」と励まされ

ました。決められた仕事をして帰っていくのではなく、おしゃべりしたり、時には一

緒に歌を歌うなどの交流もあります。普段、若者と関わることの少ない高齢者には楽

しい時間になり、元気になった方が美術館への付き添いを依頼するなど、サービスの

範囲が広がっていきます。

 

 

 

(P.78~P.80記事から抜粋)

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