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何も知らない子どもたちを被害者にしないために(市民セクター政策機構 専務理事 白井 和宏)

季刊『社会運動』 2017年7月号【427号】特集:ワクチンで子どもは守れるか?

何も知らない子どもたちを被害者にしないために

市民セクター政策機構 専務理事 白井 和宏

 

医師が処方する薬やワクチンは安全なのか?

 

 日本で使用されている医薬品のうち、人々が薬局などで購入する風邪薬や胃薬などの「一般用医薬品」は1割だけ。後の9割は医師が発行する処方箋に基づく「医療用医薬品」である。したがって私たちは医師の勧めに従って、様々な薬を接取している。ところが、その効果はどの程度あるのか。副作用はないのか、ほとんど知らないのが現実だ。

 しかし薬やワクチンの副作用によって多数の死者や感染者が多数発生した薬害事件はいっこうになくならない。1960年代に起きた「サリドマイド禍」や、80年代から90年代の「薬害エイズ事件」。そして近年、問題になっているのが「ワクチンの予防接種による副反応」だ。とりわけ子どもたちに多くの被害が出ている。

 

コンビニの売上高より大きな医薬品市場

 

 日本における医薬品の市場は11兆円を超える。全国に5万4000店もあるコンビニの総売上高より大きな規模だ。左の表は、日本に380社あるといわれる製薬メーカーの中で、売上高の上位3社である。売上高に対して、なんと10%から20%もの利益を上げていることがわかる。

 

10年で利益を上げるために

 

 一つの新薬を販売すれば大きな利益があがる。ただし、その開発には、数百億円から1000億円もの費用がかかる。しかも、発売開始から10年程度で特許が切れる(注)。特許が切れると、他の製薬メーカーも、同じ有効成分の「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」を安価で販売できるので、先発薬の売り上げは急速に下がる。

 そこで製薬メーカーは10年間で、新薬の開発コストを回収し、利益を上げるため、積極的に営業活動を行う。

 たとえば、病気の基準値や治療方針の変更に大きな影響力をもつ大学病院に莫大な寄付をしたり、医学学会を通して新薬を医師にPRするのだ。

 今日の社会では、薬やワクチンを全面的に否定することは困難だし、それがどのような成分なのか知ることもできない。だからこそせめて新薬の販売がどのように進められているのか。薬の副作用でどのような問題が起きているのか、ぜひ知っていただきたい。何も知らない子どもたちを被害者にしないために。

 

(注) 特許法では、特許権の存続期間を出願から20年と定めている。ただし通常、製薬メーカーは特許の出願を行ってから、人間を対象とした臨床試験を行い、厚生労働省の承認を得るまで10〜15年ほどかかる。そのため販売開始から特許が切れるまで5〜 10年しかない。

 そこで国は5年を上限に特許の延長を認めているが、製薬メーカーが新薬を独占的に販売できる期間は実質10年程度となる。

(P.6~P.7記事から抜粋)

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