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外資系製薬会社の“実験場”日本(フリージャーナリスト 横田 一)

季刊『社会運動』 2017年7月号【427号】特集:ワクチンで子どもは守れるか?

 

外資系製薬会社に「積極的勧奨」を求められている安倍政権

 

 「子宮頸がんワクチンは2013年4月、全額公費負担となりましたが、被害事例が相次いだため、2カ月後に厚生労働省は、積極的勧奨を中止しました。これに対しアメリカのシンクタンク『戦略国際問題研究所(CSIS)』は2014年5月、『日本におけるHPVワクチン接種状況』と題するリポートを出し、被害者救済のリーダー的存在の池田としえ日野市市議(『全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会』事務局長)を名指しで批判、『ワクチンの積極的勧奨の再開』を日本政府に提言しています」

 こう話すのは、ヒトパピローマウイルスワクチンの積極的勧奨に反対した唯一の国会議員、はたともこ・元参議院議員だ。

 薬剤師でもあるはた氏は、被害事例の詳しい説明をせずに、税金を使った半強制的な定期接種を問題視していたのだ。「接種しても全員に予防効果があるわけではなく、定期検査や早期治療でも十分に対応できます。副作用についてきちんと説明をしたら、接種を受ける人が激減するのは確実です。外資系製薬会社にとって日本は、効果不明で危険な新薬をテストするのに格好の国と映っているのでしょう」(はた氏)。

 一方戦略国際問題研究所は、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」事務局長の池田市議のことを、たしかに先の報告書で問題視していた。

「日本のソーシャルネットワーク経由でも、HPVワクチンに関する懸念の声が広がっている。女性政治家の池田としえ議員は、被害者を支援する団体である全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の事務局長を務めている」「池田議員は、ツイッターのアカウントやフェイスブックのページを利用して、被害者団体の懸念に対して理解を求めている」

 また戦略国際問題研究所のリポートの結論を見ると、「解決には現政権の首脳陣による政治リーダーシップが不可欠」と安倍政権(首相)にはっぱをかけていた。こうした米国側の圧力に加えて、日本医師会や世界保健機関(WHO)もワクチン接種推進の立場。そのため、いつまで厚労省が積極的勧奨を中止し続けられるのかが焦点になっている。

 戦略国際問題研究所の目の敵にされた「子宮頸がんワクチン被害者連絡会」の池田氏は、森友学園問題で一躍有名になった安倍昭恵夫人と首相官邸で面談、被害実態を訴えたことがあった。

 昭恵夫人はフェイスブックにこう書き綴った。「『ワクチンを接種することがなければ、夢に向かって楽しい学生生活をおくっていたか』と思うと本当に胸が痛みます。激痛や麻痺、記憶障害等々の症状に苦しめられているにもかかわらず、医師達からの心ない言葉に打ちのめされてきたと言います。早く治療法が見つかり、元の生活に戻れるといい……」。

 しかし夫婦で一緒に称賛した森友学園と違って、昭恵夫人から被害実態を伝えられたはずの安倍首相は、日本が“実験場”と化している状況にメスを入れようとはしない。

 安倍政権はワシントンにある戦略国際問題研究所が出す政治提言報告『アーミテージ・ナイリポート』にある対日要求、具体的には安保関連法制・原発再稼働・TPPを忠実に実行したため、「報告書の完全コピー」と山本太郎参議院議員(自由党)に追及されたことがあった。

 戦略国際問題研究所はジャパン・ハンドラーと呼ばれる知日派の拠点で、米国政府に大きな影響力を持つ製薬会社に好都合な提言をしているといえる。

 米国最大のロビー団体である製薬業界の意向が、戦略国際問題研究所経由で日本に伝えられていた形になっているのだ。安倍政権がヒトパピローマウイルスワクチンをめぐる政官業の癒着構図に斬り込まないようでは、「日本の女性たちの健康よりも外資系製薬会社の利益を優先している」と批判されても仕方がないだろう。

(P.030~P.032記事から抜粋)

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