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二度と同じ被害を繰り返さないために(望月 瑠菜さん、千鶴さんインタビュー)

季刊『社会運動』 2017年7月号【427号】特集:ワクチンで子どもは守れるか?

「子宮頸がんワクチン」薬害を伝える

二度と同じ被害を繰り返さないために

 

望月瑠菜さん、千鶴さんインタビュー

 

 東京から特急電車を乗り継いで2時間あまり。山梨県甲府を過ぎた無人駅に降り立つと、そこへ母親の千鶴さんが柔和な笑顔で迎えに来てくれた。川を渡り、山腹を少し登った先にある一軒家が望月さんのお宅だった。中へお邪魔すると、そこに立つ瑠菜さんがいた。ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(「子宮頸がんワクチン」)による副反応で歩行困難になったと聞いていたが、一見その気配はなかった。とても緊張している様子の瑠菜さんと、その緊張を優しく解くように気にかける千鶴さんに、簡単なあいさつをした後で話を聞かせてもらった。

 

ヒトパピローマウイルスワクチンの副反応と現在

 

─ヒトパピローマウイルスワクチンを打った時と、それからの症状について教えていただけますか。

 

瑠菜 私は小学6年生だった2010年8月から2011年3月にかけて、3回接種を受けました。小学生の頃はスポーツが好きで、男女共同の少年野球チームのキャプテンもしていました。ワクチンは無料で受けられると自治体から勧められ、接種券を3枚もらいました。がんを予防するワクチンだと聞いただけで、詳しい説明は聞いていません。他のワクチンのように打たなければいけないものだと思っていました。学年のうちに3回済ませれば無料で、それを過ぎると有料になると言われ、接種した病院でも、1回目の時に2回目と3回目の予約を取られました。注射した上腕が腫れ、しばらく引かなかったので本当は受けたくなかったのですが、3回受けないと意味がないと言われて、仕方なく受けたのです。

 接種後すぐに光に敏感になり、サングラスが欲しいと、母に言っていました。まだ暑い夏だったので、涼しくなればよくなるよと言われましたが、涼しくなっても眩しいことは治りませんでした。その後中学1年の9月頃から膝に痛みが出はじめました。そして、中学2年の4月頃には膝や脇腹など、体のあちこちに痛みが出てきました。頭痛もひどく、頭の頂点に鋭い痛みがよく出ました。また、指先を針で刺されるような痛みも出ました。中学2年の9月頃には、臭いがわからなくなり、耳鼻科も受診しました。

 中学では、担任の先生に体調がよくないことを話していましたが、原因がわからないし、あまり言うと変に思われそうなので、我慢していました。しかし、段々と体調のよくない日が増え、脳神経外科と整形外科で診てもらいましたが異常なしと言われ、「受験によるストレス」ではないかと診断されました。とても不安でしたが、痛みを我慢して受験勉強をしました。

 

─高校には行かれたのですか?

 

瑠菜 高校には無事に入学できましたが、1年生の夏休みに、車を降りようとしたら突然、右足の膝が抜けるような感じで、力が入らなくなりました。すぐに整形外科に行きましたが原因がわからず、そのうち全く歩くことができなくなり、起き上がることも大変になりました。ペンや箸を持つ手が震え、手足が青白く冷たくなっていました。なぜ私がこんな体になったのかわからないのがとてもつらく、「いつになったらよくなるの」と何度も母に聞きました。夜中に何度も泣きました。父も「瑠菜の人生はどうなるんだ」と嘆いて、夜中にぼろぼろ涙をこぼして泣いたそうです。何カ所も病院を回りましたが原因はわからず、「精神的なもの」「病気ではないから大丈夫」だと言われたのですが、納得できずにいました。

 その後、ようやく立ち上がって、ゆっくりですが歩けるようにはなりました。けれども、夏休みも終わるので、宿題をやろうとエンピツを握ってもミミズが這うような字しか書けませんでした。2学期が始まるのに、治るのかどうかわからない不安と苦しみで涙があふれました。2学期の初めに先生に相談して休ませてもらい、治療に専念することにしました。10月下旬からはなんとか学校に通い始めましたが、通院日は休み、リハビリの時は早退させてもらいました。車いすや杖は使わず、痛いのを我慢しながら階段を上り下りしていました。学校の送り迎えは母が車でしてくれました。その他には、母と話したことを忘れたり、毎日使う箸なのに自分の物がどれなのか忘れたりする症状も出ました。

 高校1年の3月に、リハビリをしていた病院でワクチンの副反応ではないかと教えられて、その後、信州大の池田修一先生を紹介され、診てもらった結果、ワクチンの典型的な副反応と診断され、ようやく原因がわかったのです。

 

─それまではワクチンの影響を疑ったりはしませんでしたか?

 

千鶴 ヒトパピローマウイルスワクチンを接種してから、色々な症状が出てきて不安でした。特に、突然歩けなくなった時には、「この子このまま死んじゃうのかな」って、私も夫も不安だったし、本人も「明日の朝になったら家族の姿が見られなくなってしまう」と泣いていました。

 ワクチンの副反応については、瑠菜もネットで調べたりしていて、少し疑いを持ちましたが、打ってからもう4年も経っていましたし、私は副反応で治ったという話を聞いたことがなかったので、これが副反応だとすると、この症状は治らないんじゃないかという思いから、絶対違うって自分に言い聞かせていました。だから正直、副反応だと言われた時には、すごいショックでした。「この子はずっとこのままなのかもしれない」とも思ったのです。

 しかし、泣いていてもしょうがないので、一番最初に治った前例になろうと気持ちを入れ替えて、治療とリハビリを続けました。そして、薬が合っていたのか、グルテンや化学調味料を摂らなくなったのがよかったのかわからないのですが、段々とよくはなってきています。

 

─段々とよくなっているということですが、今はどのような症状がありますか。

 

瑠菜 3、4kgだった握力が10‌kg以上までになりました。歩くスピードもだいぶ回復しました。ですが、まだ足の力が抜ける感じはありますし、長く歩くと膝が痛くなります。買い物に行った日とかは、足が痛くなったり、夜になると痛みを感じます。昨日も誰かが肩に太い針を刺しているような痛みがあったり…。そういうことが前に比べたら減ったんですが、まだまだあります。あと、疲れてくると足の震えがすごいです。腕に力が入らなくなって、ものをつかむのが大変なときもあります。頭痛は日常的にあります。

(p.66~p.70記事から抜粋)

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