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調べ考えモノ言って、社会運動しましょうぜ(芸人・記者 おりどりマコ)

季刊『社会運動』 2017年7月号【427号】特集:ワクチンで子どもは守れるか?

 きちんと私たちの監視の目が、知ろうとする力が必要なのが、原発事故後の健康調査です! 6月5日は「県民健康調査」検討委員会が大詰めでした。小児甲状腺検診の結果が3巡目も出始めました。これは2011年3月11日に福島県にいた18歳以下の全てのお子さんが検査対象。20歳以下は2年に1回、20歳以上は5年に1回の検査をしていきます。1巡目では116名が甲状腺がんの悪性ないし悪性疑い(うち1名は良性)。2巡目の結果は前回報告から2名増えて71名が悪性ないし悪性疑い。3巡目は今回から新たに結果が出始めて4名が悪性ないし悪性疑い。合計191名(うち良性1名)となりました。ああ、もう200人近い…と思いきや、これが全貌では全くないことが、今年3月の報道で分かったのです。

 福島県立医科大で甲状腺がんの手術をしたお子さんが事故当時4歳で、そのケースは全く公表されていなかったことが分かったのです。これは二つの大きな意味を持ちます。一つは、今まで「福島第一原発事故と小児甲状腺がんは関係がない」ことの論拠として、「事故当時5歳以下の小児甲状腺がんは出ていないから」と説明され続けていたのに、事故当時4歳の患者さんが公表されていなかったこと。2016年12月に山下俊一教授らから福島県に提出された、日本財団主催の甲状腺課題に関する国際専門家会議の提言にも「甲状腺がんの明らかな増加が、福島第一原発事故に起因するとは考えられない」とあります。その状況証拠の一つとして次のような文章があります。

 「チェルノブイリ事故の経験が示唆するものは、放射線被曝による甲状腺がんの増加は、まず事故時に非常に若い年齢(ゼロ歳から4歳)であった児童に発見されるということである。したがって、もし放射線被曝が甲状腺がんの増加を起こしているのであれば、症例の増加はまず、甲状腺超音波検査を受けた中でも年少の児童にみられるはずである。しかし、そのような事実はない。現在にいたるまで、甲状腺がんの症例の多くは、小児とはいえ⓾代後半が大半であり、最も放射線の感受性が高い低年齢層でのがん発見は無い。

 この甲状腺がんの明らかな増加が、福島第一原発事故に起因するとは考えられない」(傍点筆者)

 けど、実は、事故当時5歳の方が甲状腺がんとなっていた上に(これは2016年6月に発表されました)、今回3月の報道では事故当時4歳の方の公表がされていなかったことがわかったのです。ではなぜ公表されなかったのか。

 それが今回わかった二つ目の重要なこと、県民健康調査の仕組みにブラックボックスがあったのです。甲状腺検査は、まず一次検査を受け、そこでA判定(A1:甲状腺に何もなし。A2:甲状腺に何かあるけれどサイズが小さい)であれば、次回の検査を受ける(次回は、20歳以下は2年ごと、20歳を超えれば5年ごと)。B判定以上(結節5ミリメートル以上、のう胞20ミリメートル以上)であれば二次検査に進みます。二次検査では、詳細なエコー検査、血液検査や、穿刺細胞診といって、甲状腺の組織に注射をし、組織を採取して悪性度の判定をしたりするのです。そこで、悪性ないし悪性疑いと診断されれば、手術をし、その結果は県民健康調査で公表されます。あまり問題ない、と診断されれば2年後または5年後の次回検査になります。しかし、もう少し経過観察が必要となれば、3カ月ごとや6カ月ごとの短いスパンでの診察に切り替わります。するとそれは個人の保険診療となり、県民健康調査の枠組みから外れる、と。そこで甲状腺がんと診断された場合、公表対象ではないと。事故当時4歳の方は、このケースに当てはまっていたんです。

 福島県立医科大が主体となって甲状腺検査を行っていますが、県民健康調査がきっかけで県立医科大で甲状腺がんの手術をした場合でも、経過観察中の間にがんと診断された方はこれまで公表されてこなかったことがわかりました。事故当時4歳の方の報道のあと、県立医科大のホームページには以下のようなQ&Aが掲載されました。

 

Q:二次検査で経過観察となり、保健診療を受けていた方が、経過観察中に甲状腺がんと診断されて手術を受けた場合、さかのぼって県民健康調査の「悪性ないし悪性疑い」の数に反映されたり、手術症例数に加えられたりするのですか。

A:ご質問のケースの場合、県民健康調査の「悪性ないし悪性疑い」や手術症例数には反映されないことになっております。(以下、略)

 

 えええ! 原発事故から6年たち、甲状腺検査が3巡目に入った今更??

(P.140~P.143記事から抜粋)

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