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マンションの大暴落を見据え目の前の空き家問題を考える(市民セクター政策機構 専務理事 白井和宏)

季刊『社会運動』2017年10月【428号】特集:空き家で街を元気に―困った住宅・店舗の活用方法

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マンション大暴落を見据え目の前の空き家問題を考える

市民セクター政策機構 専務理事 白井 和宏

いまが住まいの買い時!?
 都心や湾岸などでは高層マンションの建設ラッシュが続いている。住み替えを検討している人に対する調査によると「買い時」と感じている人が39・5%もいるという。
 理由の1位は「消費税率の引き上げが予定されているから」。2位「お金が借りやすい(金利が低い)から」。3位「景況感が上昇しているから」(注1)。しかし本当は、不動産業界、建設業界、金融業界、政府一体となったPRに煽られているだけではないのか。

住宅バブルは必ず弾ける

 「2020年のオリンピックまでにバブルは弾け、不動産価値は暴落する」と多くの専門家が予測している。19年には日本の総世帯数が5307万とピークになり、その後は減少が見込まれるからだ(注2)。
 人口減少社会に突入した日本では、これ以上、住宅建設は必要ない。地方では空き家の増加だけでなく、土地さえ捨てられている。土地の所有者が死亡した後、都市に住む親族が、相続未登記や相続放棄することによって「所有者不明」になっている土地が増えている。それは日本全体で410万ヘクタールに達する。九州を大きく上回る面積だ(注3)。

3戸に1戸が空き家に?

 いまや全国の空き家率は15%を超えている。今後は都市部でも空き家が急速に増え、33年には空き家率が30%を超える(注4)。誰も住まず、放置された空き家は廃墟と化して、景観の悪化だけでなく、倒壊や火事、犯罪の危険性も増加する。いつも「買い時」と煽って膨張してきた日本の住宅政策がついに破綻の時を迎えつつある。

意識改革が鍵になる!

 それにしてもシャッター通りやゴミ屋敷は話題になるが、空き家利用の成功事例がほとんど聞こえてこないのは、なぜだろう。中川寛子氏は「空き家になっても手放そうとしない所有者に問題あり」と指摘する(本誌32ページ)。確かにマイホームを購入することは、高度成長期における日本人の夢だった。ようやく住宅ローンを払い終わり、思い出の詰まった我が家は、空き家といえど簡単には手放せない。だが荒れ果てた家は廃墟になるだけだ。他方、借り手の側も発想の転換が必要だ。廃業した飲食店を居抜きで借りて、同様の商売を始めても失敗する可能性は高い。新たな活用方法を考えよう。所有者と借り手の発想が変われば空き家は地域を元気にする新たな資源となる。全国各地で始まった明るい事例をご紹介しよう。

注1 (株)リクルート住まいカンパニーによる『住まいの買いどき感』調査による(2017年6月度)。
注2 国立社会保障・人口問題研究所の推計。
注3 一般社団法人国土計画協会・所有者不明土地問題研究会の推計。
注4 野村総合研究所の試算。

(P.6~P.7記事全文)

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