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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

2.不動産はもう儲からない空き家活用のポイント(中川寛子 住まいと街の解説者)

季刊『社会運動』2017年10月【428号】特集:空き家で街を元気に―困った住宅・店舗の活用方法

住宅の資産価値は3分の1に下がる

 これからの消費者はもっと賢くなる必要があります。「住宅は人生で一番高い買い物」(実際にもっとも高い買い物は住宅ローン)と言われるほど高額なのに、家を買う人たちの多くは自分が買う気になるまで勉強をしません。家を買う気になってから、ようやく情報を集め始めるので、「いまが買い時」とアピールする広告を見ると、そのまま信じてしまい、「いま、買わなくては」と思い込んでしまいます。でも私が住宅に関する仕事を始めた30年余前から、住宅業界はずっと「いまが買い時」と言い続けています。
 また、人は情報に影響されます。情報量は広告の量に比例する傾向があるため、たいていの人は一番多く見かける広告が正しいと思ってしまいます。だからでしょうか、家を建てようと思う人は、まず、大手ハウスメーカーが運営している住宅展示場に行きます。本当は地元の工務店さんに頼む手も、中古住宅を買う手も、建築家に頼む手もありますが、一般の人をもっともよく見かけるのは住宅展示場。本当はたくさんの選択肢があるのに、それを知らないがために、広告費にお金をかけている企業の意のままに操られてしまうのです。
 ただ、これには仕方のないところもあります。歴史的に考えると、様々な種類の住宅ローンが作られ、手元に現金がない人も誰もみんな、好きな場所に好きな形の家を買えるようになったのは、それこそここ十数年のこと。高度経済成長期、バブル景気時の住宅は高くて買えない。家は買える場所に買うものでしたし、そんな状況で住宅の質にまで目を向ける余裕がないのも仕方ありません。まして、バブル景気崩壊後も、住宅は政府による景気回復のためのアイテムとして「とにかく住宅を作れば日本経済も良くなる」と、質が悪かろうがなんだろうが、どんどん建てられてきました。しかし、これからは住宅の資産価値が下がる時代です。これまでのような、何も考えずに買ってもなんとかなる時代ではなくなります。

─今後、住宅の資産価値はどの程度下がると予測されているのでしょうか。

 資産価値の予測については2015年11月に、シンガポール国立大学不動産研究センターの清水千弘教授が発表した「人口減少・高齢化は不動産価格を暴落させるのか」という論文(注2)があります。そこでは、「2010年から2040年の30年間で現在の社会制度や国際的な人口移動の速度が大きく変化しない」ことを条件にして試算すると、「日本では平均マイナス46%、アジアの中で成長著しい香港でさえマイナス47%、シンガポールでもマイナス27%も不動産価格が下落する」と報告されています。10年と比べて30年間で不動産の価値が、半分から3分の1に下がってしまうというのです。

注2 http://www.tokiomarineam.co.jp/pdf/report_151116.pdf

(P.29~P.31記事から抜粋)

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