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07.<世田谷トラストまちづくり>区民の主体的なまちづくりを丁寧に支援したい

季刊『社会運動』2017年10月【428号】特集:空き家で街を元気に―困った住宅・店舗の活用方法

 地域を元気にするために、空き家を活かす取り組みが様々な自治体で始まっている。空き家をいち早く地域の資産としてポジティブにとらえ、有効活用しているのが東京都世田谷区だ。
 世田谷区では空き家事業を「迷惑空き家対策」と「空き家を地域貢献に活かす」の二つに分けており、迷惑空き家対策は区役所が、空き家を地域貢献に活かす事業は区から委託された「一般財団法人・世田谷トラストまちづくり」が行っている。区民とともに様々なユニークな活用を生み出してきた世田谷トラストまちづくり(愛称トラまち)を訪ね、まちづくり事業担当の松本伸さん、角屋ゆずさんに独自のシステムをどのように作り出してきたのかなどについて話を聞いた。

住宅地から生まれる交流の拠点

 世田谷トラストまちづくり=トラまちが誕生したのは、2006年。世田谷区都市整備公社と、せたがやトラスト協会の二つの財団が統合し「ひと、まち、自然が共生する世田谷」を目指した事業を進めている。
 空き家が問題になる前から、小学校改築時に子どもたちに参加を呼びかけて整備プランに関するワークショップを行ったり、公用地だった官舎を緑地にするにあたって住民参加で取り組むなどの試みを行っていた。
 「そんななかで区民の参加を促しながら、さらに区民の主体的なまちづくり活動を後押しするような仕組みを充実させるほうがいいのではないかと当時の担当者などが考えるようになり、1992年に資金的支援として『公益信託世田谷まちづくりファンド』、専門的支援のための『まちづくりセンター』が公社内に設けられました」と角屋さんは説明する。
 世田谷区は都市計画法上の用途地域で、第一種低層住居専用地域が5割、住居系用途全体でみると9割以上を占める。個人の住宅を活用することで、ひともまちも活性化するのではないか、そう考えて生まれたのが家主(オーナー)が自己所有の建物をまちづくりに活かす「地域共生のいえ」だ。また、50平方メートル以上の庭を持つオーナーが年に数回オープンガーデンを開く「小さな森」などもある。地域に次々と、小さなコミュニティスペースが誕生した。

オーナーが家を開く「地域共生のいえ」

 2004年にスタートした地域共生のいえは、家屋などのオーナーが主体になり自己所有の建物の全体または一部を、営利を目的としない地域コミュニティに活用するというもので、現在区内に21カ所を数える。
 オーナーの自宅の空いた部屋や、親が亡くなったあとに誰も住まなくなった家などを主体的に活用、イベントスペースやワーキングスペースにしたり、音楽鑑賞会、読書会、手芸サロンなど様々な催しを行っている。囲碁のコミュニケーションサロンや、講師を呼んで工房を開いているところも人気があるという。介護に携わる人たちが集うサロンもある。もともとはトラまちが地域貢献に資する住宅のあり方の調査研究をしていたことから始まったのだが、オーナーがふだん使っていない空間を有効利用し、高齢者の介護予防や地域交流の居場所としても現在注目されている。
 「公共性のある場をどうつくり、どう運営すればいいかわからないオーナーさんには、財団職員や専門家が相談に乗るようにして開設のサポートを行っています。オーナーさん自身が主体性をもってこんな地域貢献をしてみたいとビジョンをお持ちの場合はこの地域共生のいえは最適ですね。庭があればオープンガーデンを年に1?2回開く小さな森制度なども一緒にお勧めしています」(角屋さん)

(P.114~P.116記事から抜粋)

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