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6.「集団訴訟」を私たちの裁判とするために(編集部)

季刊『社会運動』2018年1月【429号】特集:あれから7年、福島の現実

「集団訴訟」を私たちの裁判とするために 

編集部

 様々な原発関連の裁判

 

 原発問題をめぐっては驚くほど様々な裁判が行われている。その概略を示したのが111ページの図である。

 そもそも福島第一原発事故以前から全国各地で「脱原発訴訟」が起こされてきた。国や電力会社を相手に原発の建設・稼働・再稼働の差し止めを求めており、訴訟の数は現在、38にのぼる。

 そしてさらに3・11以降は、東京電力の経営責任を問う裁判が行われている。一つは「東電株主代表訴訟」だ。東電の個人株主たちが約20年前から株主総会で脱原発を求めて発言してきた。今回の事故を契機に、東電が被った22兆円もの損害を、東電の役員が個人の財産で賠償することを求めている。

 もう一つが「福島原発刑事訴訟」である。おなじく東電の経営陣の刑事責任を追及する裁判であり、検察審査会によって強制起訴された刑事裁判である。刑法や特別法の刑事法令に違反した個人の刑事責任を検察官役の指定弁護士が追及している。民事とは違った厳しい形で事故の原因やその責任を浮かび上がらせようとすることが、裁判の大きな狙いだ。

 こうした東電と国の責任を追及する裁判はマスコミでも報道されたので、ご存じの方も多いだろう(最近はそれも少ないが)。

 

集団訴訟とは何か

 

 集団訴訟とは、同一の事件について利害関係を共有する複数の人間が、同時に原告となって起こす民事裁判のことをいう。ここで言う集団訴訟は、福島原発事故によって各地に避難した人びとが、それぞれの避難先の裁判所で国と東京電力に対して起こした、原告総勢1万2000人超という日本の裁判史上最大級の裁判である。

 ところがこうした集団訴訟を、自分とは縁遠い「被害者たちの裁判」と考えている人も多いのではないだろうか。事実、マスコミでもほとんど報道されないのが実態だ。

 しかし、集団訴訟の実態について知れば、それが「私たちの裁判」だということが見えてくる。審理を経て出された判決の賠償額はどの地裁でも極めて低く、福島地裁判決においては国が示した指針を上まわる認定額が最高で36万円、最低1万円でしかない。いわば、私たちの生活につけられた値段がこれである。この国では原発事故という大惨事の被害者さえ、すべてが「自己責任」として処理されるのだ。日本国憲法で謳われている「基本的人権」や、国民がその生活を保障される「生存権」などまったく尊重されないのである。

 

テーマを絞り込んだ裁判

 

 集団訴訟は現在20の地方裁判所と、二つの支部、二つの高等裁判所(東京、仙台)で審理されている。ただし訴訟内容は損害賠償を求めるものだけではない。

 テーマを絞り込んだ集団訴訟がある。その一つ、「20ミリ撤回訴訟」は、国の帰還政策に関する裁判である。今回の事故が起こる前まで、国は被ばく限度を年間1ミリシーベルトとしてきた。ところが事故後は、限度を20ミリシーベルトに引き上げ、住民たちを帰還させようとしている。この政策を批判し、被ばく限度の数値を撤回させようとしているのが「20ミリ撤回訴訟」だ。

 あるいは、「子ども脱被ばく裁判」という、子どもに焦点を絞った裁判もある。国や福島市などに対して、①子どもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利を保障する確認と、②原発事故後、子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り、無用な被ばくをさせた責任を追及している裁判である。

 

(P.109~P.112記事から抜粋)

 

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