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【総論】
自己目的化した安倍首相主導の憲法九条「改正」シナリオ(フリージャーナリスト 横田 一)

季刊『社会運動』2018年4月【430号】特集:改憲・戦争に反対する12の理由

 

 永田町ウォッチャーは「改憲論議の"第一ラウンド"は『安倍首相対石破氏』の構図です」と次のように話す。

「2009年誕生の民主党政権時代(〜2012年12月)、自民党が野党だった時にまとめた『自民党憲法改正草案(12年発表)』では、憲法九条2項削除となっています。九条2項維持の"安倍首相案"を石破氏が疑問視、憲法改正草案との整合性などについて議論を尽くすべきという立場です。そして今年秋の総裁選に出馬する意向で、その争点にしようとも考えている。メディアにも積極的に出て改憲問題について発信、『憲法改正は日米地位協定や日米安保と密接不可分』としてセットで議論することも提案している。元防衛大臣で安全保障問題のスペシャリストである石破氏は『様々な観点から徹底的な改憲論議をするべきだ』という考えで、年内発議を目指す日程優先の安倍首相と激突する形になっているのです」

 これに対し憲法改正が最優先課題の安倍首相が思い描く目標は、「今年秋の総裁選三選で21年までの任期延長を果たし、東京五輪開催の20年までの新憲法施行」といえる。この改憲日程を実現するのには、18年が天王山であるのは間違いない。憲法改正の手続きや種々の政治日程などを勘案すると、「秋の臨時国会での年内発議が最も好ましい」というのが永田町関係者の見方なのだ。

 憲法改正には、衆議院と参議院の3分の2以上の賛成が必要で、その上で憲法九六条には「国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とある。国民投票単独か、あるいは国政選挙と一緒に国民投票を行うことで憲法改正発議の賛否を問うということである。

 そして第一次安倍政権時代の07年5月に成立した「日本国憲法の改正手続きに関する法律」(いわゆる「国民投票法」)で、次のように定められた。

「国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内の期間内で、国会が決めた期日に国民投票は実施される」

 17年10月に衆議院の解散・総選挙が行われたばかりであるため、18年は国政選挙がない可能性が高い。そこで9月の総裁選で石破氏らに圧勝、その勢いに乗って「秋の臨時国会で発議」という日程が最も有力視されているのだ。

 ちなみに19年は、憲法改正に影響を与えそうな政治日程が立て込んでいる事情もある。7月には参院選があり、ここで与党で3分の2を割り込み、発議が出来なくなる恐れがある。また、春には天皇の退位と即位があり、その前後の数カ月は国論を二分する政治的対立は避けたい事情もある。4年に1度の統一地方選挙も19年春に実施される。「政治日程に余裕がある18年こそ、悲願の憲法改正を実現する絶好のチャンスだ」と安倍首相が意気込んでも全く不思議ではないのだ。

 (P.11~P.13記事から抜粋)

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