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市民セクター政策機構

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【核拡散】
核兵器が世界に拡散したことで、先制攻撃の必要性が主張され「核の抑止力」は機能しなくなった。目指すべきは、核なき世界だ。

「『核兵器禁止条約』で核なき世界の扉が開かれた(ICAN国際運営委員・ピースボート共同代表 川崎 哲)」

季刊『社会運動』2018年4月【430号】特集:改憲・戦争に反対する12の理由

 

核不拡散条約(NPT)があっても核は拡散している

 

 核兵器保有の9カ国のうち5カ国は、核不拡散条約 (NPT)によって公認された国(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国)です。核不拡散とは、「核兵器保有国以外の国は核を持ってはいけない」という条約です。しかし、1998年にインドとパキスタンは核兵器を持ち、2006年に北朝鮮は核実験を初めて行いました。核を持った時、インドの国民は喜びました。なぜなら、それは大国の仲間入りを果たしたことを意味するからです。北朝鮮も国を守るために核が必要だと主張しています。1970年に核不拡散条約は発効しましたが、インド、パキスタン、イスラエルなどは締結を拒否し、実際に核兵器を持つ国は広がり、公認された核兵器保有国の核軍縮も進んでいないのが現状です。

 

いま、世界の終わりまで残りわずか2分となった

 

─いま、なぜ「核兵器禁止条約」なのでしょうか。

 

 核戦争などによる人類の絶滅を午前0時になぞらえて、終末までの残り時間を示す「世界終末時計」があります。いま、世界の終わりまで残り2分です(2018年1月現在)。これは1953年にアメリカとソ連が水素爆弾開発を行った時と並ぶ最悪な危険の高まりを示しています。北朝鮮の核開発やトランプ米大統領の軍事行動の可能性を示唆する発言が影響しているからです。

 世界には「核抑止論」という考え方があります。これは「核を使うと言っておけば、相手国は軍事行動を思いとどまる」という軍事理論です。ところが、2001年9月11日に「アメリカ同時多発テロ」が起きました。1万発の核兵器を持っているアメリカであっても、飛行機で突っ込んでくるテロリストの前では無力でした。自爆テロという死ぬことを恐れない人は、核兵器によってその行動が抑止されることはありません。また、核の危険性で言えば、誤作動という懸念があります。そして17年にアメリカにトランプ大統領が登場しました。

 つまり2000年代に入ってから、極めて不安定で、不確実、予測不能で暴力的な勢力が次々に現れたということです。テロしかり、北朝鮮しかり、トランプ情勢しかりです。このような恐ろしい状態の中にあっては、核不拡散条約だけではダメだという認識が世界に広がり、核兵器禁止条約が生まれました。

(P.68~P.69記事から抜粋)

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