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もうかるシェアビジネスから、分かち合うシェア社会を目指して(一般社団法人市民セクター政策機構 代表専務理事 白井和宏)

季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

シェアハウスブームが引き起こした詐欺事件

 

 複数の男女が「シェアハウス」に住みながら恋愛劇が進行するテレビ番組『テラスハウス』が話題になったのは数年前だった。その影響と、安い賃貸料金や、共同生活への期待感もあって、シェアハウスがブームになった。
 ところがそれに水を差したのが、シェアハウス運営会社「かぼちゃの馬車」の倒産だった。スルガ銀行から億単位の融資を受けて、多数の人びとがシェアハウスのオーナーに。ところが、この運営会社が倒産、賃料収入が途絶えたことで、1000人を超える人びと(その多くが会社員)が自己破産の危機に追い込まれた。「必ずもうかるビジネス」としてシェアハウスへの投資が誇大広告された詐欺事件と言えよう。

 

広がるシェアビジネス

 

 「シェア」という言葉の本来の意味は「共用、分配」だ。だから「シェア経済」によって、人びとがモノや技能を「分かち合う社会」が到来すると期待された。ところが現実に広がったのは、インターネットを使ってモノやサービスの仲介するニュービジネスだった。特に有名なのが、民泊を仲介する「エアビーアンドビー(Airbnb)」と、一般人が自家用車を使って他人を運ぶ「ウーバー(Uber)」だ。
 両社がアメリカのサンフランシスコで設立されたのはわずか10年前。スマートフォンで近くの車を呼んだり、民泊の予約が簡単にできることから、またたく間に世界中に広がった。利用者にとっては「便利で安い」というメリットがある上、「共同で利用する」と聞くとエコな感じもする。ウーバーは世界70カ国で展開し、売上高75億ドル。エアビーアンドビーは192カ国、売上高26億ドルにのぼる。

 

タクシー運転手の嘆き

 

 でも、こうしたビジネスが「分かち合いの社会」をつくる可能性はあるのだろうか。
 筆者が、昨年秋にニューヨークの協同組合を視察に行った時のこと。空港で乗ったタクシー運転手に、ウーバーの影響について尋ねてみたら、「いまじゃ街中では7割の人がウーバーを利用するようになったよ。結局、タクシー利用者が激減したので、俺も登録して利用者を探しているんだ。でもウーバーから受け取る報酬は安くてね」とため息をもらす。結局、運転手と利用者が自動車をシェア(共用)しても、その利益はシェア(分配)されずウーバーだけがもうかる仕組みなのである。

 

プラットホーム資本主義

 

 このように、インターネット上に商品やサービスを集めた場(プラットホーム)を介して利益を上げるビジネスは「プラットホーム資本主義(Platform Capitalism)」だという批判がある。これに対し、関係者で共同経営し、利益も分配する事業を広めようとする「プラットホーム協同組合主義(Platform Cooperativism)」という運動も、海外では生まれつつある。

 

0円生活の方へ

 

 本号が紹介するのは、「分かち合う」ことを基本原理とする、様々な日本の活動である。「お金に縛られない生き方」を考えている方々に、ぜひお読みいただきたい。

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