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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

04:「地域と市民の復権」という視点から新たな経済を考える(明治学院大学名誉教授 勝俣 誠)

発売中!<最新刊>季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

「ウーバー」から見えてくる新たな労働者像

 次に、このビジネスモデルの展開によって生まれる社会関係はどんな特徴を持つのだろうか。
 まず言えることは、現行のシェアリングエコノミーは新たなビジネスモデルとして発展しつつあり、課金やアプリ使用料、手数料といったモノとサービスの商品化を前提とした社会的関係を形成していることである。旅行の際には民泊ユーザーが享受する利便性の「商品化」を主要動機としているのだ。
 つまりは市場交換とは動機を異にする、「贈与」や「公的再分配」によるモノの移転サービスの実践ではないのである。
 また、共用することで自動車や他の消費財を購入する必要がなくなり、廃棄されるものが減るので環境にやさしいという意味づけも、当面二義的にとどまっている。むしろ注目すべきは、例えば、自家用車のシェアリングから生まれる新たな社会関係である。米国や英国では近年、ウーバーのアプリで顧客の移動サービスをする運転手は自営業者なのか、ウーバーのアプリの元で働く労働者なのか、というこのビジネスのはらむグレーゾーン的社会関係が問われだしている。
 ウーバー専用の配車アプリを使って働く者は、本人の自動車やバイクを使用し、自由な働き方を選択している「個人事業主」だと、このプラットホーム運営会社は主張するが、働く側からは別の経済活動分類が見えてくる。日本でも労働政策研究・研修機構では、シェアリングエコノミーに関する法的課題として、このエコノミーを「労務提供者は仕事の発注者と直接マッチングされ、個人事業主として仕事を受注する。そのため、各種労働法と社会保障の適用外に置かれ、労働組合により団体交渉をすることもできない」と指摘し、労働の取引きである「レイバープラットホーム」と名付けている(『フォーカス』、川上資人、労働政策・研修機構、2018年1月)。
 この記事では、プラットホーム企業とそのアプリに従って労働を提供する側との間には、「使用従属性」が認められるのか、それとも労働提供側が自ら労働条件を決定し、自律的存在として経済活動を行う「自営業者」なのかを問うべきとしている。
 事故などの責任を自ら負いながら、接客態度、速度制限、車両整備などで定期的な指示がある以上、運転手は「被雇用者」であり、南アフリカやナイジェリアの裁判では「労働者だ」と原告は主張している(『週刊金曜日』、2018年2月2日、22ページ)。
 こうしてみると、シェアリングエコノミーとは、一見誰もが自由に自らの判断で労働する事業を促進するビジネスモデルというより、IT革命によって可視化しにくくなった新たな賃金労働関係の創出に過ぎないのではないかという問いが出てくる。

(P.52~P.53記事抜粋)

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