生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

05:地域通貨がつくり出すお金に頼らない豊かさ(藤野地域通貨よろづ屋)

季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

「事務局は何もしない」のが楽しく続けるポイント

 

 多くの地域通貨が行き詰った要因の一つは、運営側の疲弊だと言われている。「萬」を始める際にそのことを知った事務局メンバーは、「事務局は極力何もしない」を運営方針にしているという。
 現在は、入会金を支払えばその後は年会費などを徴収することはなく、事務局の支出も説明会と連絡の経費程度なので決算報告はしていない。6人いる事務局メンバーの主な仕事は、月1回の説明会の開催とメーリングリストの管理。会員数も大雑把にしか把握していないし、総計で何萬のやりとりがあるのかも分からない。高橋さんは「もともとプラマイゼロのやりとりですから、総計を知る必要はないのです。地域通貨の数値を把握するために取引を事務局経由にして、増大する事務量に対応できず破綻した団体は多い」と言う。
 事務局が何もしないのに運営できているポイントは「入り口」にあると池辺さんは言う。新規加入者の説明会では、「『萬』に参加する目的は自分の損得ではない。相互に利用し合った結果、地域の人がつながりコミュニケーションの底力を高めることができる。それに、運営を誰かに頼ると自分の思いとは違うものになり、楽しくなくなってしまう」と話している。「誰かがいないと続かないものにはしない、そのために皆で努力しようと伝えています。だから、事務局に負担感はないです」(池辺さん)

マイナスだって「助け合うって楽しい」

 通帳にマイナスの「萬」が増えることを気にする人は多い。まるで借金が増えていくように思えるからだ。そこで説明会では、「萬」のマイナスは誰かの特技を見つけ出し、その力が発揮された証だと説明する。「住民どうしの交流があって助け合えることに意味があるので、マイナスは引け目ではないと思えるようになった」と、高橋さんは自分の価値観の変化を実感している。小山さんは通帳を使い始めて8年で3冊目だが、「現在、マイナス5万4208萬の『マイナス長者』です。プラスの人は頼られるのを待っているタイプ。マイナスの人は自分からコミュニケーションを取りに行くタイプ。私はなんでも気軽に頼んじゃうからマイナスが増える」と笑う。だからといって依頼者だけが増えることはない。

(P.104~P.106記事抜粋)

インターネット購入