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06:路上のコミュニティとお福わけ券(くにたち0円ショップ/カフェ潮の路)

季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

ゆるやかに人が集う空間0円ショップを体験する

 

 南口前の横断歩道を渡ると、ロータリー正面のビルの前に、なにやら人だかり。右隣には、ツイッターに目印として示されていた「たましん」という看板のビルもある。近づくと、5、6人の人たちが広い歩道の片側にレジャーシートを広げ、一見、フリーマーケットのような雰囲気。
 「あの?、0円ショップってここですか」と恐る恐る声をかけると、「そうですよ」。「鶴見さんという方はいらしてますか」「はい、僕です」。気さくに答えてくれたのが、くにたち0円ショップの主催者の一人である鶴見済さん(24ページ参照)だった。
 取材のアポも取らず、鶴見さんに会えるという保証もなく、突然押しかけた私だったが、最初に声をかけたその人が鶴見さんで、しかもあとで分かったことだが、私の投稿に答えてくれたのも、鶴見さんだった。
 うす曇りの日で、立ち並んだ大きな街路樹が日差しを遮ってくれることもあって、路上といっても思ったより涼しく、人の行き来も多かった。一橋大学に近い大学通りでもある。もっと広い場所をイメージしていたが、幅2?3メートルの歩道の一角に、長さ10メートルほどのこじんまりした空間。そこに、靴、本、帽子、服、石けん、ラーメン、CD、LP、オモチャ、健康機器、台所用品、生地、キックボード、カンバッジ、ソーラーライト、専門書など、様々なものがぎっしりと並べられている。
 「すべて0円」と書かれた紙が、シートの上に置かれているが、「本当にタダなんですか」と聞かれることも少なくないそうだ。出品する人も、ずっとその場にいる必要はない。残った物は持ち帰るというのが唯一の約束事だ。
 家の前に、「ご自由にお持ちください」と花の苗が置かれた光景は見たことがあるし、同じ路上でも値札のついたフリーマーケットは何度も目にしている。けれど、こんなふうに何人もが「無料でお持ちください」と並べているのは見たことがない。しかも、もののやり取りだけでなく、のんびり話しこむ人、ただ黙って座っている人、ギターをつま弾いている人もいる。もちろん常連もいるが、誰一人顔見知りのいない私でも、全く違和感なく溶け込んでいる。不思議な感覚だ。
 ツイッターを見て初めて来たという親子連れ、今日で出店3回目という若者、スタンディングデモの帰りに寄ったという夫婦。老若男女、様々な世代の人が、何かしら会話を交わして帰っていく。こんなに気楽な交流はたぶん、何の制約もないオープンな路上だからこそ可能なのだろう。

(P.110~P.112記事抜粋)

 

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