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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

07:高円寺から世界に広がる人と人との0円経済(なんとかBAR)

季刊『社会運動』2019年1月【433号】特集:0円生活を楽しむ―シェアする社会

そこだけでお金が回る!?

 

「実は『なんとかBAR』をやってみてすごいことに気づいたんです。普通はみんなで飲み屋に行っても、お金は出て行くだけじゃないですか。でも『なんとかBAR』だと、例えば今日、自分が店長をやって、みんながお金を払って飲めば、自分のところにお金が貯まりますよね。で次の日に今度は自分が『なんとかBAR』にお客として行ってお金を払えば、その日の店長がもうかる。次の日にはその店長が次の日の店長にお金を払っているという具合で、けっこうお金を使っている気分になるんですけど、実はその中だけでお金が回っていたりするんですよね。多分、お金に印をつけておいたら、永久に出ていかないお金がいっぱいあるんじゃないですかね(笑)。湯水のようにお金を使って飲んでいるようで、実際は使っていないという謎の感じがおもしろいなと思います。鶴見済さん(24ページ参照)が国立でやっている『0円ショップ』(109ページ参照)は、お金を使わないものの直接のやりとり、ここは一応、あいだにお金が入るので全然違うように思えますけど、結局それはこの店に関係する人たちの中で回ってるだけで、それぞれは大してお金を使わずに飲んでるワケですから、結局よく似ているんじゃないですかね。みんな飲み代をものすごく使っているようで、実は大してお金は動いてないんです」
 確かにすごい話だ。小さな経済圏の中で貨幣が回っているだけなのに、その中にいる人は楽しく飲めて、ものもムダなく回っていく。「0円経済」のいろんなヒントがここにあるのではないだろうか。

 

バーからゲストハウスへ

 

 「なんとかBAR」が高円寺+α的な人のつながりの場とすると、それが国際的なものへと広がりつつあることが、ゲストハウス(世界各地を放浪するバックパッカーなどが利用する安宿)のオープンにもつながった。
「2011年の原発事故を受けて、僕らは反原発デモなんかをやっていたんですが、日本人のほとんどが原発に反対している中で、結局政府は原発推進にどんどん戻っていきましたよね。それを見て、この国の病んでいる部分は根深いというか、本当に変わらないんだなと思ったんです。だったら日本単独じゃなく、世界レベルで同じような境遇の人たちと国を超えたコミュニティを作ったら力になるんじゃないかと考えて、海外に行きまくったんですよ。
 2013年以降、1カ月に1回くらい海外に行って、1週間とか10日間とか毎日飲み歩きました。最初はソウル、次は北京、その次はクアラルンプールという具合で、そうやっているとどんどん知り合いができて、今度はどこにおもしろい場所があって、どこにおもしろい人がいるという情報が集まるようになって、アジア中に友だちができたんですよね。後々何かにつながればと思って、日本に戻ったんですが、今度は向こうから続々と高円寺に遊びに来るんですよ。最初は自分の家に泊めていたんですけど、すぐにそれでは無理なことが分かって、ゲストハウスを作ることになったんです」
 たまたま「素人の乱12号店」が入っていたビルの4階と5階が空いて貸し出しているということで、そこをゲストハウスにしようということになった。当時はまだ民泊の制度もなかったので、旅館業法の認可を取るべく、消防署や保健所などをかけずり回り「簡易宿泊所」としてオープンした。

(P.131-P.133記事抜粋)

 

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