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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

声明:安保関連法の国会での採決に抗議し、即時廃止を強く求めます

季刊『社会運動』 2015年10月号【420号】特集:あなたが「下流老人」になる日

声 明

 

安保関連法の国会での採決に抗議し、即時廃止を強く求めます

2015年9月19日

市民セクター政策機構・常任理事会

 

集団的自衛権の行使を可能とする安保関連法案が、与党自民党・公明党により7月16日衆議院で強行採決、9月19日参議院において討論制限の上、採決されたことに強く抗議します。

 

私たち、市民セクター政策機構は、生産者と消費者が提携し互いに支えあって食料の生産と供給、生活と地域を次世代に持続可能な形でつくり出していく、生活者の視点からの「自治」を追求し続けてきた生活クラブ生協と、意思ある研究者でつくるシンクタンクです。私たちがめざしてきた「自治」のなかには、人が人を傷つけたり、他者の生存やくらしを脅かすような経済のしくみや社会の構造、政治制度を変えていく、という観点が太い柱として存在しています。ヨハン・ガルトゥング博士がいうように、積極的な意味での「平和」とは、戦争を引き起こす社会構造のゆがみや不平等、差別や偏見といった「構造的暴力」が取り除かれ、一人一人の人間がほんとうに尊重される社会の状態をさすものだと私たちは考えています。戦争は人々の生活を破壊し、国家に集中された軍事力は人々の手から「自治」を奪い、民主主義を空洞化します。私たちは国家への軍事力の集中、民主主義の空洞化に向かうこの安保関連法に生活者の立場から反対の意思を表明します。

 

今回、政府与党が提出した安保関連法案は、国際紛争を軍事同盟と武力によって解決するための法案であり、とりわけ日米安保条約を憲法的制約から解放して「自衛」の名のもとに無制限に拡大する法律であるといわなければなりません。憲法学者の9割が違憲と判断し、歴代の内閣法制局長官や裁判官からも違憲であるとする見解が続々と公表され、衆議院の憲法調査会では参考人のすべてが違憲であると語っただけでなく、世論の過半が違憲であり議論も不十分であるという見解を表明している中、徹底した内容的検討よりも数にものを言わせた強行採決の乱発によって議論を打ち切るという姿勢は、議会制民主主義に危機をもたらし、さらには立憲主義を空洞化する誤った政治行為です。日本国憲法は「集団的自衛権」の名のもとに語られる軍事行為を明確に禁止しています。そしてこのことは憲法をめぐるさまざまな議論や立場の違いを超えて広く共有された「国論」といってもよいものです。国家と政府は憲法によってその存立を認められ、憲法の枠の中で仕事をすることが義務づけられています。その政府が閣議決定によって憲法の内容を変更し、徹底した議論を「多数決」に置き換えて議会が追認する事態は、憲法に基づく政治、つまり立憲主義という国の基本的なしくみすら満足に運営できない、「国家」の体をなさない状態に陥っていることを世界に宣言しているものといわなければなりません。

 

民主主義を、自治を市民の手に取り戻すため、このような国家と議会主義の機能不全に対し、私たちは強く抗議します。また、国民、そして戦争の廃絶を願うすべての世界の市民とともに、立憲主義をないがしろにした現日本政府・与党に対して抗議の意思を表明します。戦争は多くの人々を傷つけますが、とりわけ未来を担う若い層に銃をとらせ、人を傷つける現場に押しやることになります。今回の安保関連法案に対し、若者たちが抗議の声を上げ、自分たちと、さらに自分たちに続く次の世代への責任も引き受けながらこの法案に反対していることに私たちは大きく励まされながら、民主主義の新たな可能性をともに考えていく可能性を感じています。

 

私たち市民セクター政策機構は、日本国首相、安倍晋三氏、そしてそのもとで法案に賛成票を投じた自民党・公明党の議員諸氏に対し、立憲主義と民主主義を破壊する法案と強行的政治への強い抗議を表明し、多くの心ある市民とともに、安保関連法の廃止を強く求めます。

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