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ココがヘンだよ日本の学校(一般社団法人市民セクター政策機構 代表専務理事 白井和宏)

季刊『社会運動』2019年4月【434号】【特集:学校がゆがめる子どもの心ー「道徳」教科化の問題点

150年間、変化なし?
日本の学校制度

 

 日本の学校はかなりヘンだ。昔、私が義務教育を受けていた頃は、「普通」と思っていたけれど。朝礼、運動会、制服など画一的な行事や制度を、外国人に話すと不思議がられる。
 そもそも現代の日本の学校制度は、1872(明治5)年に始まった。「徴兵令」発布の前年である。
 「富国強兵」政策の一貫であり、「国を強くするためには国民に教育を施すことが重要である」と考えた明治政府によって、軍隊的な制服や儀式、上下関係、個人より集団を重視する教育方針が取り入れられた。その本質は、いまもあまり変わっていないのである。

 

広がる「ブラック校則」

 1980年代には管理主義教育に対する批判が起きて90年代になると、校則の見直しや緩和が進んだ。ところが結局、細かな規制は残されてしまい、子どもたちの個性を抑制する方針は変わらなかった。
 最近では、『ブラック校則』(注1)という本が話題である。「厳しい校則は昔の話だろう」「いまの子どもたちはのびのびと過ごしているのだろう」といった世間の印象とは反対に、厳格なルールや指導が、以前より増加しているらしい。
 例えば、「女子生徒の下着の色を検査」「日焼け止めやリップクリームの禁止」「生まれつきの髪を黒く染めさせる」等々、髪型・服装等に関する細かな管理は強化され、下着の色の指定など、昔はなかった校則も広がっているという。

 

「教育勅語」の復活!?

 さらに問題なのは、校則による「外見」の管理だけでなく、子どもの「内面(心)」まで指導する動きが進んでいることだ。それが昨年、小学校から始まった「道徳の教科化」である。
 17年には「森友学園」が運営する幼稚園で、子どもたちが教育勅語(注2)を朗唱していた映像がテレビで報道されて驚いたが、その直後の3月31日には安倍政権が、「(教育勅語を)憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」という答弁書を閣議決定したのである。

 

誰が進めているのか?

 ただしこの事件は突然、起きたわけではない。
 そもそも2000年代になると保守主義的な教育改革論が強まった。2006年に発足した第一次安倍政権では「教育基本法」が変更され、2012年からの第二次安倍政権で「特別の教科 道徳」の実施が打ち出されたのである。「この道しかない」と主張する安倍政権の下、教員の力は弱まり、教育はさらに管理的な傾向を強めている。
 いま、学校で何が起きているのか。「特別の教科 道徳」とは何か。毎日の生活と仕事に追われている、お母さん・お父さんたちにこそ知っていただきたい。 

注1 荻上チキ・内田良著、東洋館出版社2018年
注2 「皇室・国家のために身を捧げよ」と子どもたちに教え込ませた「教育勅語」は1889(明治22)年に発布されたが、戦後の1948(昭和23)年に失効が国会で確認されている。

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