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「中断読み」で道徳教科書を無力化する(公立小学校教員 宮澤弘道)

季刊『社会運動』2019年4月<434号>【特集:学校がゆがめる子どもの心ー「道徳」教科化の問題点】

─2018年4月から小学校で道徳の教科化が始まりました。宮澤さんは公立小学校の教員として、学校現場の変化を直に感じていると思います。教員は教科化をどのようにとらえ対応していますか。

 

 教科化される前の「道徳の時間」にも副読本という教科書に似た教材がありましたが、あくまで補助教材なので使っても使わなくてもよく、自由に授業ができました。しかし、教科書がないのでどうやって授業をしていいか分からず困っている教員がいたのも事実です。教員は日常業務で多忙なので、自分で授業を組み立てるのはとても大変な仕事です。教員にとって道徳教科化への第一の不安と言えば、新しい教科が入り業務が増えることだったと思います。
 いま「道徳の教科化によって教員は苦労していませんか」という質問を受けることがありますが、実は教員の大半は困っていないと感じています。というのも、教科化されて、使用義務のある教科書が作られたからです。これにより、授業の進め方が丁寧に書き込まれた台本のような「指導書」ができ、ワークシート集が作られ、記述式となる評価のための文例まで揃いました。ですから教科化で教えることが明確になって、授業そのものはやりやすくなったと言えるでしょう。とにかく、教科書の内容に疑問を持たずに、教科書が導く「価値観」に沿って教えていれば、困ることはないのです。管理主義的な学校経営の中で、教員は枠内の仕事をこなすのは上手ですが、学習指導要領を超えて学ぶことや考えることに大変慎重になっているように思います。ですから、教科としての道徳で「子どもたちの内面にかかわる評価をしていいのか」「様々な状況の子どもたちがいるなかでセンシティブな内容をどう教えたらいいのか」と悩んでいる教員は少数派です。そしてそんな意識を持っている教員も2018年4月以降は教科書を使って授業をしなくてはいけないので、淡々と授業をしているのが現状です。

 

─保護者は道徳をどのようにとらえていますか。

 

 教科化が始まる前までは、保護者から「どう変わるのか」「評価の基準はあるのか」などの質問があり、関心を持っていました。文部科学省は「『特別の教科 道徳』の充実はいじめの防止に向けて大変重要で…、『いじめは許されない』ことを道徳教育の中でしっかりと学べるようにする必要があります」と言ってきました。そのため保護者の中には、道徳の教科化でいじめがなくなるという期待感―もちろんそんなことはあり得ないのですが―を持っていた人も少なからずいました。
 ところが、4月になって教科書を見ると、昨年までの副読本でとりあげられていた教材と、ほとんど変わりがありません。すると、「以前と何も変わらないのね」となり、一気に関心がなくなりました。実際には、授業の進め方も評価も変わったにもかかわらず、そこが伝わっていないため、保護者の現状は失望と無関心といえるでしょう。

(P.37~P.38記事抜粋)

 

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