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大阪「維新」体制下、 学校教育に競争原理が持ち込まれた(大阪府公立中学校教諭 平井美津子)

季刊『社会運動』2019年4月<434号>【特集:学校がゆがめる子どもの心ー「道徳」教科化の問題点】

点数競争の全国学力テストで失ったもの

 

──「維新」体制は、学校教育にどのような影響を与えているのでしょうか。  一言で言えば、徹底した競争原理が持ち込まれたことです。  2007年から文部科学省は「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)を実施し、都道府県別、政令指定都市別の結果が公表されています。大阪府、大阪市共にいつも下位です。  橋下さんは、大阪府知事になった直後に「大阪の子どもたちの学力がこんなに低いのは教師たちの怠慢だ」と言いました。でも、低いのは当たり前なんです。大阪府、大阪市は全国平均と比べて貧困率が高く、生活保護や就学援助を受けるなど厳しい状況に置かれている家庭が多い。生活することに精いっぱいで勉強どころじゃないのです。  その部分を見ないで、「学力が低いから、大阪の教育を変える」と橋下さんは言いました。しかし、大阪府知事のままでは公立の小・中学校の教育に直接手をつけることができません。だから、大阪府知事を辞めて大阪市長になり、教育へ具体的に介入しようとしたのではないかと思います。  橋下さんが言う「子どもたちの学力を上げる」とは、全国学力テストの点数を上げること。大阪市では、13年から全国学力テストの学校別正答率を公表しています。  教員のだれもが「点数を上げろ」と校長や教育委員会からも迫られ、全国学力テストが近づくと、子どもたちに過去問をさせたり必死です。しかし、学力テストの成績は簡単には上がりません。  子どもたちは地域から大きな影響を受けます。大阪には過去に差別を受けてきた地域もありますし、日雇い労働者の町、釜ヶ崎もあります。鶴橋、生野は在日韓国朝鮮人が多く住む町ですし、大正区は住人の4人に1人が沖縄にルーツがあるという地域でもあります。そういう意味で大阪は多様性に富んだすごく面白い都市で、教員たちも地域に根ざして学ぶことをとても大事にしてきました。  ところが、カリキュラムの中に、「学力テスト対策授業」が組み込まれたので、教員はその進捗を気にかけ、履修もれがないかばかりに気を取られるようになっています。いままで子どもたちに豊かな感受性や文化的な教養を身につけてほしいと多様な授業をしていた時間が、これに取られていきます。  大阪府は16年度の高校入試に全国学力テストの結果を反映させました。そもそも全国学力テストは、学習の定着度を見て教育内容を改善するためのもので、子どもに評価をつけるためのものではありません。さすがにこれは文科省も認められないということで、次の年からは、大阪府教育委員会は府下の公立中学を対象に「大阪府統一テスト(チャレンジテスト)」を実施し、このテストの結果で内申が決まることになりました。  チャレンジテストは府内の学校とそこに通う子どもたちをランク付するものに他なりません。そして学校ごとの競争を煽ることになります。  さらにチャレンジテストを「俺、アホやから受けない」と言う子がいたり、「お前は受けるな」と言われたりして新たないじめも生まれます。特別支援学級の子どもの保護者の方が、「うちの子を受けさせたらみんなの迷惑になるから受けない方がいいのでしょうか」と担任の教員に聞かざるを得ないような悲しいことも起きています。

 

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