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複雑な仕組みで権力統制を隠す教科書づくりの舞台裏(日本出版労働組合連合会教科書対策部事務局長  吉田典裕)

季刊『社会運動』2019年4月<434号>【特集:学校がゆがめる子どもの心ー「道徳」教科化の問題点】

道徳の教科化をすすめる宗教右派と日本教科書

─今回の道徳の教科化にともない設立された「日本教科書」とは、どのような会社なのでしょうか。

 

 「道徳専門の教科書会社」として設立された「日本教科書」は、育鵬社の教科書の著者で「日本教育再生機構」理事長の八木秀次氏が立ち上げた会社です(15ページ参照)。この会社がつくられたのは、それまで歴史修正主義的な歴史や公民の教科書を出してきた育鵬社が、道徳の教科書発行を断ったからだと推測しています。八木氏が設立した日本教育再生機構は、育鵬社が発行する教科書を実質的に作っている団体です。道徳の教科書も育鵬社から出そうとしたはずです。その証拠に、教科書を出版する前にパイロット版として『初めての道徳教科書』や『13歳からの道徳教科書』が育鵬社から一般書として発行されています。このようなやり方は、歴史や公民の教科書に参入した時と同じ戦略です。
 育鵬社が所属するフジサンケイグループは経営にシビアで、グループ内に「乱立」していた出版社を扶桑社に整理統合しました。教科書部門を分社化して育鵬社を作ったのも、そのような経営政策でしょう。けれども教科書には多額の先行投資が必要で、お金がかかる割に価格が安い、採択で失敗すれば次の採択までの4年間は投資が無駄になるなど、様々なハードルがあるのでなかなかペイしません。小・中学校の教科書の採算分岐点は10万冊と言われていますが、育鵬社は7万冊ほどです。1985年以降、子どもの人数、つまり教科書の市場は縮小し続けています。そんな状況なので、「道徳教科書が失敗したら、誰が責任を取るのか」と育鵬社に迫られたのでしょう。八木氏は、朝日新聞のインタビューで「頓挫した」と言っていました。「だったら自分で会社を作ろう」ということだったと思います。2016年4月に日本教科書が設立されました。当初は日本教育再生機構と同じ住所でしたが、現在は『マンガ嫌韓流』などのヘイト本を出版している晋遊舎が経営を引き受け、晋遊舎と同じビルに入っています。

 

─道徳の教科化に影響を与えたのは、いわゆる宗教右派だと言われていますね。

 

 道徳の教科化に影響を与えた宗教右派とは、「日本会議」というよりは「モラロジー研究所」です。創始者の廣池千九郎は、もともと天理教の信徒でしたが、そこから分かれてモラル(道徳)とロジー(学問)を組み合わせた「モラロジー」を提唱しました。「道徳科学で、宗教ではない」と言っていますが、中味はどう見ても宗教です。創始者の教えを絶対化して、その正しさを証明する「研究」をやっているからです。宗教の教義を広める方法と同じですね。本部は、千葉県柏市の麗澤大学と同じ住所にあります。
 モラロジー研究所は公益財団法人なので、行政としては催しへの協賛金なども断れないという関係です。文科省の関係者はじめ、道徳教科書への影響が大きい人たちが所属している「日本道徳教育学会」ともかかわりが深く、学会の大会に資金を提供し、分科会でメンバーが発表するなどしています。学会のようすは、モラロジー研究所のウェブサイトに、毎年掲載されています。日本教科書にはモラロジー研究所の機関誌に掲載された題材も使われています。

(P.100~P.102記事抜粋)

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