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オランダの学校から考える「道徳教育」ではなく「シチズンシップ教育」を(教育・社会研究家 リヒテルズ直子)

季刊『社会運動』2019年4月<434号>【特集:学校がゆがめる子どもの心ー「道徳」教科化の問題点】

世界で最も自由裁量権があるオランダの学校
─オランダの学校と日本の学校では、何が違うのでしょうか。学校の運営について日本との違いを教えてください。

 

 オランダの公教育は、学校や教員に対し、世界で最も自由裁量権が高く認められた制度の一つです。学校や教員が現場で自らの感覚を使い、臨機応変に問題解決に当たる自由が認められています。
 一方、日本の教員は、教科書や教材の選択、学級編制の仕方も自由に選べません。授業案も分刻みで作らなければならないような状況です。これでは、一人ひとりの子どものニーズや気質、その日の体調や心の変化に臨機応変に応じることはできません。教員たちは、校長の指導の下、管理と事務仕事、課外活動で疲れ切っていることは、最近ではマスコミでよく取り上げられていることです。
 もし、教員が息苦しさを感じて教壇に立てば、子どもたちはそのことを敏感に感じ取ります。本来、「本音で生きる」ことを教える教員が、管理された学校で本音で子どもに向きあわず、建前の規則を押しつけていたらどうでしょう。子どもたちは「本音と建前を使い分ける」ことを学んでしまうのではないでしょうか。教員自身が、管理行政の中で自由に生きることを認められていないことは大きな問題です。


「文科省」とは独立した機関が、子どもの発達を監督する


 オランダでは、学校の教育の質を三つの仕組みで維持しています。一つ目は、学校を自由に選択できる保護者の目。学校は保護者に選んでもらえないと廃校措置にすらなりかねません。ですので、常に「良い教育とは何か」を保護者にアピールしなくてはならないのです。
 二つ目は、生徒の権利を代弁する保護者と教員の代表でつくる「経営参加評議会」(全校に設置が義務づけ)です。この評議会には、法律で、職員の採用・解雇・異動、教材選択などに大きな発言権が認められています。自治体や理事会の恣意的な決定に保護者や教員が歯止めをかけることができるのです。
 三つ目は、文科省からは独立した機関として設置された「教育監督局」です。国内の全ての学校が、一人ひとりの子どもの健全な全人的発達を保証しているかを厳しく監督します。つまり、子どもがいじめの犠牲や不登校になることなく、快適で安心できる環境を保証したうえで、認知的能力、及び非認知的能力(注)の両方がバランス良く発達しているかを見ているのです。
 また、教育監督局は、国の施策が学校に与える影響に目を凝らし、国内の教育状況について年次報告を出しています。教育監督局が、国の教育施策を決めるうえでの材料提供をしています。学校教育の現状には、教員だけでなく、政治家や行政官にも責任が問われることを意味しています。

注 認知能力とは、数を数える、字が書けるなど、IQなどで測れる能力。非認知能力とは、人と関係性を作る力、感情をコントロールするなど、認知的能力以外の、人間として社会で生きていくうえで必要な能力。

(P.156~P.159記事抜粋)

 

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