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04:高齢者と薬のつきあい方-医者と患者の信頼関係がカギ(医療法人社団つくしんぼ会理事長 鈩 裕和)

季刊『社会運動』2019年7月【435号】特集:医薬品の裏側 クスリの飲み方を考える

─高齢になると不眠に悩む人は多く、睡眠薬を常用している人もいます。どのような問題があるのでしょうか。

 

 加齢によって睡眠の質と量は変化します。高齢になると活発に動くことが少なくなり、疲れてぐっすり眠ることもなくなります。生理機能も徐々に低下するため、必要とする睡眠時間は短くなります。睡眠自体が浅くなり、昼寝も増えます。夜8時に寝て夜中の2時に目が覚めたとしても、6時間は寝ているので、十分な睡眠時間は取れています。高齢者は5、6時間も眠れば十分なのですが、若い時と同じように7、8時間眠れないから不眠だと思う人が多いのです。お昼ご飯を食べた後にウトウトする高齢者をよく見かけます。本人には寝ている自覚がないのですが、「テレビを観ながらコタツに入っていて、知らない間に番組が変わっていませんか」と聞くと、「変わっている」と答えるし、家族も「昼間、よく寝ています」と言うのです。昼間も寝て、夜も寝ようとするのは無理な話です。
 一般内科や整形外科などでも多く処方される睡眠薬の「ハルシオン」「デパス」「ロヒプノール」「マイスリー」などは依存性が高く、なかなかやめられない薬です。更年期障害や腰痛などで、一般内科や整形外科で一時、処方されて飲み始め、そのまま飲み続けて依存症になっている人も多いのです。催眠鎮静薬・抗不安薬の副作用には、「ふらつき─筋肉が緩み転倒するなど骨折しやすくなる」「健忘─薬を飲んだ後の行動を覚えていない」「翌日の眠気─朝の目覚めがすっきりしない、日中も眠い」「依存症─やめた時の深刻な睡眠障害、不安の増大、震え、動悸などの離脱症状でやめにくい」などがあります。
 2019年4月に厚生労働省がまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針」で、催眠鎮静薬・抗不安薬を長期にわたって処方することができなくなり、これからの動きが注目されます。しかし、医師が「依存症になってしまっているのでやめましょう。減らしましょう」と話しても、患者自身がやめようとしないケースが多いのです。実際にたくさんの睡眠薬を飲んで、夜中に足がもつれて転倒・骨折し、そのまま寝たきりになるというのが一般的です。

(P.97~P.98記事抜粋)

 

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