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低下するメディアの信頼度(一般社団法人市民セクター政策機構 代表専務理事 白井和宏)

季刊『社会運動』2020年1月号【437号】特集:「もうテレビは見ない~メディアの変質とつきあい方」

低下するメディアの信頼度─その背景を考える

一般社団法人 市民セクター政策機構 代表専務理事 白井 和宏
 「政府が問題を起こして、マスコミがネタにし始めると決まって芸能人が逮捕されるのは、政治の問題から国民の目をそらすためだ」といった「政府の陰謀論」がよく話題になる。 真偽のほどは不明だが、ワイドショー化した報道番組が、政権の問題を追求するより、芸能人の事件を詳細に扱っていることは確かだ。第二次安倍政権発足以降に辞任した閣僚は10人にのぼる。麻薬の使用で逮捕された芸能人より、不祥事を起こした閣僚の方が数多いし、社会にとって問題のはずだが、閣僚は辞任さえすれば後追い報道もされなくなる。 安倍政権が「政治とカネ、行政の私物化、公文書の偽造・廃棄」という3点セットの事件を何度も繰り返しても、テレビはほとんど報道しなくなった。「これまでの内閣ならとっくに倒れていた」と言われる大事件が起きても、テレビが報道しなければ支持率が下がるはずもない。
歴代最長の在職日数はテレビの功績 こうして安倍首相の通算在職日数が、戦前の桂太郎首相を抜いて歴代最長となった。その最大の功労者はテレビだろう。安倍首相が、テレビや新聞の社長や会長と宴席を囲む「社長懇」は日常行事になった。歴代首相も大手メディアと会食してきたが、お相手は自民党と親しいメディアに限られていた。それがいまではNHK、テレビ朝日、朝日新聞、毎日新聞などの幹部とも高級料理店で会食を繰り返している。 安倍首相は「短命に終わった第一次政権(2006~07年)の深い反省の上、政治を安定させるため日々全力を尽くしてきた」と語ったが、その核心はメディア対策にあり、安倍氏が議員時代から「日本会議」と戦略的に進めてきたのである。
NHKが沈黙し、社会が自粛する 「公共放送であるNHKは、権力の弾圧が迫った時にはそれをいち早く察知する『坑道のカナリア』だと思います。NHKで番組が作れなくなると、他のテレビ局、さらに新聞など他のメディアにも自粛やタブー化は広がります。やがてそれは社会の隅々にも及び、例えば公共施設で行われる講演会や展示会のタイトルに『慰安婦』という言葉が入るとクレームが来るからという理由で、『慰安婦』という言葉自体を使わなくなる現象も起きています」 と語る元・NHKディレクター池田恵理子氏の指摘は、いまの日本の状況を端的に説明している(本誌58ページ)。
テレビを疑う
 2019年11月に公表された「メディアに関する世論調査」(注)によれば、NHKテレビの信頼度は新聞に次いで2番目(68・5点)に位置しているが、10年前(73・5点)に比べると5ポイントも低下した。それでも、視聴率1パーセントで数十万人に情報を届けるテレビは、新聞などの活字媒体が持たない強い影響力を持っている。テレビが変質した背景を知り、テレビの見方を考え直したい。・
注 ・公益財団法人新聞通信調査会が毎年実施。
(P.4~P.5記事抜粋)
 

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