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1.現在のテレビではこんな問題が同時多発的に起きている(ジャーナリスト 金平茂紀)

季刊『社会運動』2020年1月【437号】特集:もうテレビは見ない-メディアの変質とつきあい方

天皇の即位とテレビショー


 2019年10月22日、新天皇が即位しました。日本国憲法上、天皇というのは、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」となっています。即位した日のテレビ報道の一体どこに国民がいましたか。「天皇陛下万歳」と三唱するのに合わせて撃った自衛隊の礼砲のタイミングが見事だとほめたり、即位の礼で使われるという三種の神器の解説もしていました。でも、「政教分離」については、誰一人触れませんでした。要するに、国民の視点がない。全部、〝お上の視点〟です。天皇制の歴史的な経緯や視点、政教分離の話といったことをなぜ放送できなかったのでしょうか。
 その後の11月の国民奉祝のセレモニーは、壮大なテレビショーになっていました。ニュースキャスターを名乗っている有働由美子さんが総合司会をしていました。古事記の国づくりの神話を語っていましたよね。アイドルグループの嵐の奉祝曲も披露されて、ショーとして最大級の盛り上げを図っていました。天皇・皇后の退席時に、セレモニー参加者が万歳を16回も繰り返していたことは、一種異様な「戦前的な」シーンだと僕は思いましたね。
 祝賀パレードでは、天皇・皇后が乗っていたオープンカーの前には、安倍首相が乗った車が配置され、首相は窓をあけて、沿道の人びとに手を振っていました。奇異な風景だと僕は思いましたが、NHKの生中継番組では、NHKの岩田明子記者が「今回、首相は、できるだけ沿道の人たちに近い立場で共にお祝いしたいということで、車の窓を開けて走行したい考えです」と解説していました。こういう記者がいまの世の中で大手を振って道の真ん中を歩いているのです。
 僕はこれらの報道を見て、もう駄目だなと思ってしまいました。僕にとって天皇というテーマは大きい位置を占めているので、これまでもいろんな報道をしてきたのですが、やはり無力さを感じることが多かったですね。皇室の弥栄を奉祝するのがテレビの役割だと思っている人たちが大多数です、特にNHKでは。天皇制の政治利用について、きちんと批判する人が誰もいない。安倍首相の代弁者になっている岩田記者のような人間が解説委員に抜擢されて、会社の中で力を持っていること自体、異常ですよ。
 もちろん、NHKの一部には、そうじゃない人たちも結構います。2019年夏に放送された「NHKスペシャル昭和天皇は何を語ったのか 初公開・秘録“拝謁記”」(注4)や、とりわけその拡大版を見ると、天皇の戦争責任についての議論にきちんと触れようとした努力の跡が見えます。その他にも一生懸命やっている人たちがたくさんいます。けれども大部分は見えないものに「忖度」しています。それがNHKの現状です。
(P.19~P.21記事抜粋)

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