生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

2.「かんぽ生命保険不正事件」が見せたNHK幹部人事(ノンフィクション作家 森 巧)

季刊『社会運動』2020年1月【437号】特集:もうテレビは見ない-メディアの変質とつきあい方

自ら検証もせずに白旗を掲げてしまったNHK


 公共放送としては、実にみっともない結果になったというほかない。かんぽ生命保険の不正販売(注)をスクープした「クローズアップ現代+」(クロ現)を巡るNHKの対応の拙さである。
 ことの発端は 2018年4月に放送した「郵便局が保険を〝押し売り〟!?」というクロ現の特ダネだった。番組で高齢者の保険料二重払いをはじめかんぽ生命の無茶な販売を特集し、この年の8月には、続編を予定して視聴者に情報提供を呼びかけるネット動画を公開したという。
 これに報じられた側の日本郵政が噛みついた。NHKの上田良一会長に抗議し、おまけに放送局のガバナンス検証まで求め、NHKの経営委員会にまで訴えたのだ。結果、上田会長が経営委員会から厳重注意を受け、日本郵政に謝罪文書を差し出して動画を削除。挙句に、さしたる理由もなく続編の放送を延期してしまったのである。
 NHKに限らず新聞、テレビ、出版のあらゆるメディアに対する抗議それ自体は、決して珍しくない。その場合、メディア各社が自社の報道内容を検証し、瑕疵があれば訂正、謝罪する。ことによっては、それが報道機関としての品格を疑われ、会社の価値を下げてしまうケースもあるが、それもまた自業自得であり、致し方ない。
 しかし、これはそんなケースとはまったく性質が異なる。そもそも報道そのものが正しい。のちに日本郵政側の長門正貢社長でさえ、「いまとなっては全くその(番組)通り。(抗議を)深く反省する」と謝罪会見までしたような見事なスクープなのである。
 日本郵政にしてみたら、大した社内調査もせず、うっかり抗弁したというお粗末でもある。だが、問題はそこではない。NHK側はそんな稚拙な抗議に対し、自らの報道現場を検証もせずに、あっさりと白旗を掲げてしまった。そこにこの問題の根深さがある。
 この騒動には、キーパーソンが二人いる。一人は、件のクロ現スクープを真っ先に問題視した日本郵政の鈴木康雄副社長である。
 情報提供を求めて動画を公開した翌月の18年9月、NHK経営委員会の森下俊三委員長代行に直談判。間髪入れずに10月5日付で抗議文を出し、NHKの石原進経営委員長がその要請に応じるかっこうで、23日、上田良一会長に向け、ガバナンスを強化しろと厳重注意した。番組スタッフにしてみたら、まるで誤報の濡れ衣を着せられたまま、トップの謝罪に追い込まれているのである。
(P.66~P.67記事抜粋)

インターネット購入