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3.NHKから国民を守る党とは、何者なのか(フリーランスライター 畠山理仁)

季刊『社会運動』2020年1月号【437号】特集:「もうテレビは見ない~メディアの変質とつきあい方」

「NHKをぶっ壊す!」と言うが放送内容には関知しない


 N国に対して、「反NHKの団体」という漠然としたイメージを抱いている人は多いだろう。この認識は一部正しいが、全てではない。N国の実態を知るためには、新聞・テレビなどの既存メディアだけでなく、インターネットからも情報を得る必要がある。
 実はここが大きなポイントだ。立花は「嘘はつかない」と豪語するが、立花が1日に何本もYouTubeに上げる動画情報は膨大だ。そのため、有権者が大事な話を聞き逃す可能性がある。
 本来であれば、既存メディアによる監視があってしかるべきだろう。しかし、N国のように政党要件を満たさない政治団体は、メディア側の自主規制で「諸派」として扱われてきた。実態どころか、立候補の事実すら十分に伝わらない。そのため、新規参入を目指す新興勢力は圧倒的に不利な状況にあった。一方で、メディアによる黙殺は、売名目的での立候補を抑制するフィルターの役割も果たしていた。
 しかし、インターネットの登場が環境を大きく変えた。N国はマスメディアに頼らず、インターネットを活用することで、選挙の高い参入障壁を乗り越えた。スマホの普及も流れに拍車をかけた。
 N国は自分たちの主張を一方的に訴えることができるYouTubeを使い、ネットユーザーが「面白い」と思う動画を頻繁にアップした。炎上商法と言われても、「反NHK」のイメージを売り込むことで、テレビの影響力を超えることを目指した。既存メディアからの情報がない有権者には、N国が伝えたい情報しか伝わらない仕組みを利用した。
 もし、テレビが報道の多様性を重視していれば、今よりはN国の実態が視聴者に伝わっていたはずだ。しかし、テレビは自らに課した自主規制の枠を壊すことができなかった。今、テレビは新興勢力を黙殺してきた自らの報道姿勢に逆襲されているといってもいい。
 N国のインターネット活用方法は「悪名は無名に勝る」の一言だ。放送法で縛られたテレビが標榜するような「公平性」や「中立性」ではなく、「話題性」を優先するのが特徴だ。
 たとえば、NHKの集金人を撃退する場面や、集金人を追い回して「私人逮捕」する動画をアップする。筆者がこうした衝撃映像についての説明を求めると、立花はこう答えた。
 「NHKの放送受信規約には、受信の契約は『受信機の設置日から』とある。同時に放送法64条2項には『受信料を免除してはならない』との規定もある。ところがNHK集金人は『今からでいい。過去の分はいらない』といって犯罪になる説明をしている。これが詐欺罪にあたるので、刑事訴訟法213条を使って、現場で『私人逮捕』させていただいています」
 常識では思いつかない過激な行動だが、緊張感のある動画は視聴者を釘付けにする。また、過激な言動を繰り返すことで、世間には「関わりたくない」という意識が蔓延する。こうした無関心が「N国は反NHKの団体」という曖昧なイメージを独り歩きさせることになり、N国躍進に大きな役割を果たしている。
(P.76~P.78記事抜粋)

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