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市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

6.「世間を気にするのがテレビのお笑い。そうした場で勝負するのは、やめました」(お笑い芸人 松元ヒロ)

季刊『社会運動』2020年1月【437号】特集:もうテレビは見ない-メディアの変質とつきあい方

刺激の強い政権批判ネタはライブではウケてもテレビではウケない


 同番組では、固有名詞こそ出してはいないものの、「さる高貴なご一家」=天皇家を想起させるコントや政治風刺ネタを披露。それでも、特にクレームはなかったという。
 「少なくとも僕は、聞かなかったですね。当時は制作側の肝が座っていたから、多少のクレームがあったとしても、演者には伝えなかったのかもしれません。その後、いろいろな番組に呼ばれるようになってからも、竹下登を"ちくした"と言ったり、金丸信を"きんまる"と言ったりしながら政権批判ネタをやっていたんですが、制作サイドから何か言われるということはありませんでした。
 ただ、いま思えば、それはテレビに出られるレベルの批判ネタだったんですよね。僕らも何となくテレビの空気を読んでいた。テレビ局や番組スポンサーへの配慮というより、テレビで刺激的なネタをやってもウケないからです。公開番組でも、『テレビでそんなこと言っちゃっていいの?』と、お客さんが引いてしまう。僕らは芸人ですからウケを取りたいし、変なクレームが来ても困るから、『誰とは言ってませんよ?』と、政治家の名前をはっきり言わないことで、逆に笑いを取っていたわけです。村山富市に扮して『消費税が3パーセントから5パーセントに上がりましたが、少ししか変わりませんね。計算はしやすいですね』と言ってみたり、『最近右寄りになってきたと言われますけどね、皆さんから見たら右ですけど、私から見れば左に寄っているんです』とか。そんなネタをやっていました」
 そうした"テレビの笑い"は、毒が薄められているが故に、観る客を選ばない。「ザ・ニュースペーパー」も例外ではなく、自民党系の青年会議所から富裕層が会員のロータリークラブ、労働組合系の集まりにも引っ張りだこだった。
 「例えば国旗ネタだったら、学校の先生になりきって、『国旗を揚げたら組合の人たちに怒られるし、降ろしたら教育委員会に何と言われるか……』と悩んで見せ、途中まで揚げて『これじゃ半旗(反旗)だな』とかね。角が立たないように工夫して笑いを取っていました。ただ、組合系の集まりでは日の丸をおちょくって、日の丸を揚げている人たちの集まりでは、『シンプル・イズ・ベスト』なんて、ちょっと迎合してみたりする自分が、だんだん嫌になってきたんですよね。仲間内でも、意見の食い違いが出てきました。
 昔はより迫力があるネタのほうがよいとされるムードがあって、『中途半端なオチじゃ批判にならないだろ?』って言うと、じゃあオチを変えようということになった。でも、仕事の場が広がり、スタッフが増えてくると、ムードも変わってくるんです。だって多数派にウケるネタのほうが、より仕事は増えるわけですから。だんだん意見が合わなくなり、僕はグループ内の少数派になり、出番が減り、最終的に辞めることになりました。そして、『これからは本当に言いたいことを言い、やりたいことをやろう』と思ったんです」
(P.108~P.110記事抜粋)

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