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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

4.首都圏若者サポートネットワークが目指すもの(生活クラブ連合会常務理事 伊藤由理子)

季刊『社会運動』2020年4月【438号】特集:子どもの命を守る社会をつくる

一般枠と先駆的実践枠で2018年度は10団体に助成


 活動の軸となる「若者おうえん基金」は、募金とクラウドファンディングで支援金を集め、困難な状況にある若者たちを伴走支援している人たちに助成する試みだ。こうした伴走支援者への支援は、これまで先例がなかった。
 第1回の2018年度には、総額約1371万円(そのうち981万円が生活クラブ組合員のカンパ)が集まり、「一般枠」と「先駆的実践枠」で助成を実施した。一般枠は、伴走体制の基盤がすでにある団体が行う緊急性の高い活動、先駆的実践枠は、問題解決に向けて新たにチャレンジする活動を対象とした。応募団体と活動内容を精査し、できるだけ多くの団体に必要な助成金が届くよう選考した結果、各枠5団体にそれぞれ約30万円から150万円、総額約1000万円が助成された。
 一般枠では、養護施設出身者の学費を免除している大学に進学した若者の様子を遠方まで見守りに行く交通費、同じような境遇にあった若者どうしの結婚・出産を見守るための費用、自立援助ホームのステップハウスを準備するための初期費用など。先駆的実践枠では、社会的養護の網からこぼれ落ちてしまった若者たちの居場所づくりや就労支援の活動費、就労教育と自立支援ホームの運営費などだ。いずれもつつましやかな活動助成ではあるが、助成金の後押しが伴走支援者と子ども・若者のエンパワメントにつながっている。

社会的養護のもとで育った若者たちの現実


18歳で迫られる「自立」が生きる困難を増大させる


 社会的養護による支援は、原則として18歳までだ。大学に進学する場合は22歳まで延長が可能になったり、返済不要の給付型奨学金ができたりと多少の改善はされているが、多くの場合、18歳以降は施設や里親家庭を離れて一人で生活していく「自立」を迫られる。高校を中退したり、進学しない場合は、18歳前に自立しなければならないこともある。
 いまの日本は、若者にとって自立の難しい社会だが、社会的養護のもとで育った若者は、収入面でも生活面でもハードルがさらに高くなる。例えば、施設を出て就職するときに、部屋を借りるための貯金がなく、保証人もいないので、寮付きの会社に就職することが多い。しかし職場の人間関係がうまくいかなかったり仕事になじめなかったりして辞めてしまうと、仕事と収入と住居を一気に失うことになる。そして経済的にも精神的にもよりいっそうの困難に直面する。一人ひとりの状況に応じた細やかな支援が切実に求められているにもかかわらず、社会的養護を離れてからの支援制度は何もない。

施設職員の熱意だけが支える自立後の暮らし


 これまで、自立後に困難な状況に陥った若者たちを物心ともに支えてきたのは、養護施設の善意ある職員や元職員などだ。
 「社会的養護にかかわる人たちは熱い思いで携わっています。しかし、その仕事だけでは生活できずダブルワークをしていたり、遠方の作業所に通って若者のフォローを続けている人もいます。これまで、心ある人たちの持ち出しで制度外の支援がかろうじて支えられてきたと言っても過言ではありません。彼らは目の前の子どもたちに向き合うことに精いっぱいで、地域の市民活動と連携する余裕などありませんでした。何らかの理由で活動の継続が厳しい状況に陥ったときにも、地域でのつながりがあれば力や知恵を貸してもらえるはずです」と伊藤さんは指摘する。

(P.43~P.45記事抜粋)

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