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「想定外」ではない気候危機(一般社団法人市民セクター政策機構 代表専務理事 白井和宏)

季刊『社会運動』2020年7月【439号】特集:いまなら間に合う!気候危機

大丈夫か!日本


 日本政府による新型コロナウイルスへの対応のあまりのお粗末さを体験して、「日本はここまでダメな国になってしまったのか」と深くため息をついた人は多いだろう。それでも「新型コロナは初めてのことだったから、後手に回ったのはやむをえなかった」とアベさんを擁護する人は主張する。
 しかし「想定外」とは事業責任者の言い訳でしかないことは、福島第一原発の事故が証明した。「原子力発電は構造的に欠陥がある」ことは開発に携わった技術者たちがずっと前から指摘していた。また、グローバリゼーションの拡大によって感染爆発(パンデミック)が起こる危険性が高まっていることは、WHOや国立感染症研究所もかねてより予測していた。
 それにもかかわらず日本政府は医療費削減と称して、保健所、病院、病床数をせっせと削減してきたのである。

130年前から指摘されてきた気候危機


 日本でも毎年、被害が拡大している気候危機はもはや「想定外」ではありえない。そもそも産業革命によって二酸化炭素( CO2)が増え始めたのが1850年ごろ。スウェーデンの科学者が「このまま CO2が増え続けると地球の気温が上がる」と指摘したのは130年も前の1889年のことだ。ところが世界が地球温暖化に注目するようになったのは1980年代後半になってから。そして「2030年には世界の気温が産業革命前の水準より1・5℃高くなり、悲惨な結末を迎える。それを回避するには、約10年で CO2の排出量を半減させる必要がある」という報告書が公表された。残すところ10年しかないのだ。
 しかしネットでは現在も「地球は温暖化していない」というデマが溢れている。そしてアメリカのトランプ政権は、パリ協定を離脱したうえ、石炭火力への回帰を目指す政策を掲げている。

再生可能エネルギーに向かう世界、逆走する日本


 世界は確実に再生可能エネルギーへの移行を加速させている。いち早く舵を切った欧州では、イタリア、ドイツ、原発大国フランスさえも脱原発に向かい始めた。アメリカでもカリフォルニア州は2045年までに再生可能エネルギーを100パーセントにすることを目標にしている。中国、インドでさえ、大気汚染の原因である石炭火力発電の割合を大きく引き下げ、太陽光と風力発電を展開していく計画だ。相変わらず原発と石炭火力に固執しているのは日本だけである。

経済活動が縮小しても止まらない地球過熱化


 コロナ下で世界中の経済活動がストップし、 CO2の排出量が大きく減少したかのように思える。ところが年間の排出量は8パーセント減にとどまるという推計がある。 CO2排出量を半減させるためには、経済社会を抜本的に改革する必要があるのだ。しかしアベノマスクの配布さえ2カ月以上かかる、いまの政府に期待することは時間の浪費にしか思えない。残す10年という時間を有効に使うため、私たちはどのような社会を目指すべきなのか本腰を入れて考え、行動すべきときにある。

(p.4-P.5 記事全文)

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