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2「日本水没」が起こる日 殺人級大雨と巨大複合災害(京都大学名誉教授 河田 惠昭)

季刊『社会運動』2020年7月【439号】特集:いまなら間に合う!気候危機

津波による浸水で、東京、大阪では10万人以上が犠牲に


 東日本大震災の被害の調査・分析から、津波の高さが1メートルを超えると死者が発生し、2メートルを超えると家の全壊・流失が始まることが明らかになりました。また、浸水域の住民の30パーセントが避難しなかったことが、津波による死者を1万5000人にまで押し上げたこともわかりました。
 この解析結果をもとに、大都市部における津波の被害を計算すると、高さ3メートルの津波が来た地域では、死者が居住者の4・5パーセントになることがわかりました。その比率を東京と大阪にあてはめてみると、東京では23区のゼロメートル地帯を中心に死者15万9000人、大阪では9万2000人になります。
 大阪府防災会議でも、マグニチュード9・0の南海トラフ巨大地震が発生すると、大阪市臨海区を高さ3・8メートルの津波が襲い、それが満潮時であれば大阪市内だけで11万9000人が死亡すると推定しています。
 ゼロメートル地帯は、東京湾沿岸では川崎市、横浜市、千葉市など、大阪湾沿岸では尼崎市や西宮市など広範にあり、ここでも多数の死者がでます。
 明治維新の当時、3000万人弱だった全人口が、現在では4倍の1億2600万人に増えました。災害に弱い平野や盆地、海岸低地さらには、土木技術の進歩でそれまで人が住めなかった地域にも多くの人が住むようになりました。とりわけ大都市における浸水対策は脆弱で、今後、大水害が予測されます。

(P.28~P.29記事抜粋)

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