生活クラブグループ
市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

1.2030年は人類の分岐点になるのか(東京大学未来ビジョン研究センター教授 高村ゆかり)

季刊『社会運動』2020年7月【439号】特集:いまなら間に合う!気候危機

後戻りができない「ティッピング・ポイント」を防ぐ

─気候危機を考えるにあたって、「2030年こそが人類の大きな分岐点となる」とよく言われます。どういうことでしょうか。


 いま、世界の気候変動(温暖化)対策を進める中軸になっているのが、「パリ協定」です。パリ協定は世界共通の長期目標として、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1・5℃に抑える努力をする」をはじめとする目標を掲げ、今世紀後半には温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを明確に記しています(図1 「主要先進国の2050年目標」参照)。
 この長期目標に向けて、各国がそれぞれ目標を決めて取り組んでいますが、各国の目標はなかなかパリ協定の長期目標を達成するのに十分な水準になっていません。このままのペースでいくと早ければ2030年には気温上昇が1・5℃に達してしまうと予測されています(気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1・5℃特別報告書」による)。気温が1℃上昇した場合と比べると、わずか0・5℃の違いでも、1・5℃の上昇による気候変動の悪影響はずっと大きいとも予測されています。
 気温の上昇によって様々なことが起こります。ここ数年、私たちも台風や洪水の被害が甚大になることなどで温暖化を実感していると思いますが、より心配なのは後戻りできない気候の変化、「ティッピング・ポイント(Tipping point)」が起こりうることです。
例えば、南極やグリーンランドの氷が大規模に溶けると、氷床融解も海面上昇も、もう後戻りができない。ですからこの先10年の取り組みが非常に重要になるわけです。

(P.37~P.38記事抜粋)

インターネット購入