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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

4.気候変動の危機の前に私たちは何をすべきか(特定非営利活動法人 「環境・持続社会」研究センター(JACSES)事務局長 足立治郎

季刊『社会運動』2020年7月【439号】特集:いまなら間に合う!気候危機

貧困層・脆弱層が直面する課題に取り組もう

─複雑な利害が絡む国際交渉の進展を待っているだけでは、今後も対応は遅きに失するでしょう。今後、期待される関係者の役割について教えてください。


 国内の CO2排出の削減も必須ですが、それに取り組むだけでは不十分で、全世界のあらゆる温室効果ガスの削減に効果的・効率的に取り組む必要があります。また、途上国の貧困層・脆弱層の課題対応も必須です。そうした観点も含め、以下、お話しします。

〇日本政府は、全温室効果ガスの国内・世界での削減と、貧困層・脆弱層への支援を!


 日本を含む各国政府は、国際交渉・合意への対応、特に、主要トピックである「エネルギー起源 CO2削減策構築」「途上国への資金捻出」などに追われてきました。脱化石燃料の推進や目標設定も必須ですが、それに加え、日本政府が実施すべき重要なことは次の3点だと考えます。
 第1には、実態把握・透明性の推進です。効果的な気候変動対策の構築・支援には、実態把握が不可欠です。途上国で CO2の排出増に加え、冷暖房機器からのフロン類排出も急増しているのですが、これまでの国際合意では必ずしもフロン類の報告義務がないなど、途上国における実態把握は難しい現状があります。日本政府には、「透明性のための能力開発イニシアティブ」などの国連枠組も活用した、途上国の温室効果ガス排出量の統計整備・能力開発などの支援強化や、人工衛星などの先端技術を活用した世界全体の全温室効果ガス排出実態の正確な把握のための取り組み強化が期待されます。
 第2には、公的資金の有効活用です(資金拠出「額」のみならず「質・パフォーマンス」にもより焦点を当てるべきです)。二国間協力に加え、日本が資金拠出する「緑の気候基金」「アジア開発銀行」などの国際機関やNGOを、貧困層・脆弱層の適応策などに更に有効活用する必要があります。
 第3には、民間投資の支援です。 CO2以外の温室効果ガスの削減策や貧困層・脆弱層の適応策向けの民間投資(ESG投資)をより強力に後押しすることが必要です。

(P.73~P.74記事抜粋)

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