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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

3.アマゾンの森林破壊と乾燥化が止まらない(RAINFOREST FOUNDATION JAPAN 代表 南 研子)

季刊『社会運動』2020年7月【439号】特集:いまなら間に合う!気候危機

どこまでも広がる緑の熱帯雨林と、その間を流れる大河、アマゾン川。そこでは太古の昔から、先住民族が自然と調和した生活を営んできた。しかし、彼らが守ってきた伝統的な暮らしや生態系は、大規模開発による森林破壊や、周辺社会から流入する貨幣経済などの影響により、近年様々に変容しつつある。
速いスピードで進む森林破壊は、2018年8月からの1年間で、青森県に匹敵するほどの消失面積となった。
この危機的状況に、私たちは何ができるのか。アマゾン熱帯雨林保護活動に30年前から取り組んでいる南研子さんにお話を聞いた。

「森がなくなれば、インディオもお前たちも滅びる」


 「初めは特に環境問題に関心があったわけではなかったのです。アマゾンがブラジルにあることさえ知らなかったくらいですから」
 南さんは、なぜ自らアマゾンの奥地に足を踏み入れ、30年も支援活動を続けることになったのだろう。
 「1989年5月、アメリカ人の友人から『アマゾンの森が破壊されて、大変なことになっている。イギリスのロック歌手スティングと、アマゾン・カヤポ族の長老ラオーニが、アマゾンの森林危機を訴えるワールドツアーを行っていて、明日、来日する。手伝ってくれ』と突然電話がありました。その時にボランティアとしてかかわったのが縁で、その後RFJ(熱帯森林保護団体)を立ち上げ、活動を始めました」
 ツアーを行った直接的なきっかけは、アマゾン川流域の104カ所のダム建設計画に反対してインディオたちが抗議行動を起こしたことだった。スティングと一緒に来日したラオーニはこう言った。
 「森がなくなればインディオも死ぬ。でも、お前たちも滅びることを忘れてはならない。森を守ることは世界の人びとを守ることでもある!」

(P.104~P.105記事抜粋)

保護区を守る法律を無視し大規模開発を進める新政権


 2019年1月、ジャイル・ボルソナロがブラジルの大統領に就任した。大きな問題は、「金になるアマゾンの森は、どんどん燃やして畑にすればいい」と、開発を奨励する政策を推進したことだ。それが違法伐採や放火の横行をますます助長することになった。南さんはこう語る。
「本来、森を持っている地主は、80パーセント森を残さなければいけないという法律があります。耕地にしていいのは20パーセントです。ところがボルソナロ政権は、その法律を全く無視しています。それに乗じて監視の目をすり抜け違法伐採や森林への放火が行われています。乾燥化は加速していますから、いったん森に火をつければ瞬く間に広がり、消すに消せなくなります。そして、大火災になっても地主は知らんぷり。法律もザル法になってしまいましたから、誰も責任を取ろうとしないのです。
 新政権はパリ協定からの離脱さえ示唆し、アマゾン地域における大規模農業開発や鉱山開発をさらに推進すると表明しています。先住民族保護区内では先住民族しか土地の利用ができず、基本的に先住民エリアの地下資源にタッチしてはいけないと憲法で定められているのに、政府はそれを反故にして保護区の解除と保護区内の開発を強引に推し進めようとしています」
 アマゾンはこれまでの開発(大規模農牧業、木材伐採、鉱物採掘など)によって、もとの面積の15パーセントをすでに消失したといわれる。 CO?を吸収する森林の消失で乾燥化はますます進行し、温暖化促進にも追い打ちをかけることになった。アマゾンの「砂漠化」は、同時に水資源の枯渇にもつながり、ここで生きる者たちの死活問題だ。

(P.111~P.112記事抜粋)

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