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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

9.各地の生活クラブから②自らの状況を客観的に捉えられるようアドバイス(一般社団法人生活サポート基金)

季刊『社会運動』2020年10月【440号】特集:コロナ下におけるマイノリティ -子ども、生活困窮者、障がい者、外国人-

自らの状況を
客観的に捉えられるようアドバイス

 

 生活サポート基金には感染拡大が始まった3月、収入が減り借金を返せないという相談が増え、件数は前年の2倍近い132件にも上った。個人の生活保障の施策はまだ何も打ち出されていなかった時期だったので、このままでは、多重債務者が急増すると懸念していた。当時の生活サポート基金の活動をNHKニュース全国版が報じたのが4月22日のことだった。
 4月以降の相談数は予想に反して、4月は82件(前年76件)、5月67件(前年79件)、6月73件(前年98件)と、例年より少ない。その理由は、4月以降は社会福祉協議会や行政、市民団体など身近な相談窓口が増えてきて、「住居確保給付金」(家賃数カ月分が給付される)や貸付条件が緩和された「緊急小口資金(無利息・保証人不要)」を申し込めるようになったからと考えている。
 相談内容は、多重債務から生活困窮にシフトした。事務所に「手持ち金が数百円しかない」とか、「何日も食べてない」といった相談の電話がかかってくるようになった。事務所までの片道の交通費があれば来てもらい相談を行い、とりあえずの交通費や食料などを渡す。相談者に継続した食料支援が必要であれば、日本初のフードバンクである「セカンドハーベスト・ジャパン」につないでいる。また、セカンドハーベスト・ジャパンの利用者で生活再建の相談につないだほうがよい人には、生活サポート基金を紹介する。そうした連携が必要なケースはこれまで相談者の10?20パーセントだったが、2020年5月の相談者67人のうち、35人(52パーセント)に食料支援をした。
 生活サポート基金では、コロナ感染拡大の最中でも、本人に直接に会って相談を行っている。相談者には、収入額、支出内容と額、借金額や返済期間など全ての情報を書き出してもらう。そのことで自分の経済状況を客観的に把握し理解できる。それをふまえてどの支出を圧縮するかをアドバイスしたり、弁護士の力を借りて債務の整理を考えていく。
 生活サポート基金には、自治体の相談窓口だけでは解決できない困難事例が持ち込まれることも多い。人との関係が希薄になってきているが、頼れるところはきっとある。一人で悩まず、ヤミ金融などに行かず、まずは近くの社協・行政・市民団体などの相談機関を訪ねてほしい。お金の問題は手立てとタイミング、順番さえ間違えなければおおむね解決できる。生活サポート基金の経験はそれを裏付けている。

(p.74-P.75 記事全文)

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