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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

12.性風俗で働く女性たちの現実(ぱっぷす<ポルノ被害と性暴力を考える会>スーパーバイザー 宮本節子)

<発売中!>季刊『社会運動』2020年10月【440号】特集:コロナ下におけるマイノリティ -子ども、生活困窮者、障がい者、外国人-

性風俗で働く女性が休業補償から外された

 

─新型コロナウイルス感染症拡大を理由とした安倍首相の休校要請を受けて、3月2日から急に学校が休みになりました。厚生労働省は保護者の休暇取得のための助成金を新設しましたが、当初、性風俗業などで働く人は対象外とされました(4月7日に撤回)。宮本さんはぱっぷすの活動で、AV(アダルトビデオ)業界や性産業にかかわって困っている女性からの相談を受けていますが、どんなことを考えましたか。

 

 この助成金は学校の一斉休校により子どものために仕事を休まざるをえなくなった親への補償金です。従来からある厚労省の各種の雇用関係助成金では、「性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業」「暴力団とかかわりのある場合」を受給対象から外しています。暴力団関係者や性風俗産業を存続させるために公的な資金をつぎ込むわけにはいかないという理屈ですが、今回もそれをそのまま適用したため、そこで働く女性たちが排除されてしまいました。以前から、性を売る女性に対する政策は売春防止法に代表されるように男目線でなされてきました。性風俗産業で女性たちがどんなふうに苦しんでいるかなんて、政策担当者はわかっていないのではないでしょうか。
 休校で子どもの面倒を見るために、仕事を休むことを余儀なくされた親に対する補償なのですから、子どもの生活を一番に考えなければいけないのに、それをしなかったということです。
助成金からの除外に対して、4月2日に当事者団体のSWASH(注)が、また4月5日には私たちぱっぷすが「接待を伴う飲食業」や「性風俗業」という不支給要件を撤廃するよう要望書を出しました。当事者などから抗議がくれば、厚労省としても対応せざるをえなかったのでしょう、意外とすんなり撤廃しました。
 ただ性風俗産業で働くどのくらいの人が実際に申請して補償を受け取れたのかは、よくわかりません。

 

─この問題をめぐって、松本人志氏や高須克弥氏から、接待を伴う飲食業や性風俗などで働く女性たちへの休業補償に税金を投入することへ否定的な発言がされました。国による差別的な対応が助長したのでしょうか。

 

 芸能界では以前から「女を買う」のが当たり前になっていますから、差別的な意識が表に出たのでしょう。彼らの発言に対して女性は異議申し立てをしましたが、男性自身から「そういう発言が男性の尊厳を貶める」という反論はありませんでした。つまり彼らは特殊なわけではなくて、「男の意見」を代表しているに過ぎないのです。
 4月下旬にはお笑いタレントの岡村隆史氏が、ラジオ番組で「コロナが明けたら美人が風俗嬢やる」などと発言しましたが、それもものすごく平凡で素朴な男性の意見でしょう。言っていることはいわば「まっとうな」現状分析だと思いますが、それをそのまま放送してしまうマスコミも、何が女性蔑視になるのかという感性が崩れてしまっている。社会の根底で倫理的な地崩れが起きているのが、コロナによって表面化したのです。
 また、彼らの発言は、性風俗やクラブなどいわゆる「夜職」で働く女性についての差別意識がたまたま現れたものですが、実は女性全般を差別しているのだと思います。
 1989年に「セクシュアルハラスメント」がユーキャン新語・流行語大賞に選ばれてから30年。いまだにセクハラ、つまり女性差別が男性にとっては我が事になっていないのです。それはそういう発言をする人の個人的な問題というより、社会全体にある女性に対する差別感、女性を性的な対象とのみ見ていて、対等な人間として見ないという風潮が悪化してきているからではないかという印象を受けています。

 

注 SWASH(Sex Work And Sexual Health:スウォッシュ)セックスワーカーとして働く?たちが安全・健康に働けることを?指して活動する当事者とサポーターによる団体。

 

─新型コロナウイルス感染症拡大を理由とした安倍首相の休校要請を受けて、3月2日から急に学校が休みになりました。厚生労働省は保護者の休暇取得のための助成金を新設しましたが、当初、性風俗業などで働く人は対象外とされました(4月7日に撤回)。宮本さんはぱっぷすの活動で、AV(アダルトビデオ)業界や性産業にかかわって困っている女性からの相談を受けていますが、どんなことを考えましたか。

 

 この助成金は学校の一斉休校により子どものために仕事を休まざるをえなくなった親への補償金です。従来からある厚労省の各種の雇用関係助成金では、「性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業」「暴力団とかかわりのある場合」を受給対象から外しています。暴力団関係者や性風俗産業を存続させるために公的な資金をつぎ込むわけにはいかないという理屈ですが、今回もそれをそのまま適用したため、そこで働く女性たちが排除されてしまいました。以前から、性を売る女性に対する政策は売春防止法に代表されるように男目線でなされてきました。性風俗産業で女性たちがどんなふうに苦しんでいるかなんて、政策担当者はわかっていないのではないでしょうか。
 休校で子どもの面倒を見るために、仕事を休むことを余儀なくされた親に対する補償なのですから、子どもの生活を一番に考えなければいけないのに、それをしなかったということです。
助成金からの除外に対して、4月2日に当事者団体のSWASH(注)が、また4月5日には私たちぱっぷすが「接待を伴う飲食業」や「性風俗業」という不支給要件を撤廃するよう要望書を出しました。当事者などから抗議がくれば、厚労省としても対応せざるをえなかったのでしょう、意外とすんなり撤廃しました。
 ただ性風俗産業で働くどのくらいの人が実際に申請して補償を受け取れたのかは、よくわかりません。

 

─この問題をめぐって、松本人志氏や高須克弥氏から、接待を伴う飲食業や性風俗などで働く女性たちへの休業補償に税金を投入することへ否定的な発言がされました。国による差別的な対応が助長したのでしょうか。

 芸能界では以前から「女を買う」のが当たり前になっていますから、差別的な意識が表に出たのでしょう。彼らの発言に対して女性は異議申し立てをしましたが、男性自身から「そういう発言が男性の尊厳を貶める」という反論はありませんでした。つまり彼らは特殊なわけではなくて、「男の意見」を代表しているに過ぎないのです。
 4月下旬にはお笑いタレントの岡村隆史氏が、ラジオ番組で「コロナが明けたら美人が風俗嬢やる」などと発言しましたが、それもものすごく平凡で素朴な男性の意見でしょう。言っていることはいわば「まっとうな」現状分析だと思いますが、それをそのまま放送してしまうマスコミも、何が女性蔑視になるのかという感性が崩れてしまっている。社会の根底で倫理的な地崩れが起きているのが、コロナによって表面化したのです。
 また、彼らの発言は、性風俗やクラブなどいわゆる「夜職」で働く女性についての差別意識がたまたま現れたものですが、実は女性全般を差別しているのだと思います。
 1989年に「セクシュアルハラスメント」がユーキャン新語・流行語大賞に選ばれてから30年。いまだにセクハラ、つまり女性差別が男性にとっては我が事になっていないのです。それはそういう発言をする人の個人的な問題というより、社会全体にある女性に対する差別感、女性を性的な対象とのみ見ていて、対等な人間として見ないという風潮が悪化してきているからではないかという印象を受けています。

 

注 SWASH(Sex Work And Sexual Health:スウォッシュ)セックスワーカーとして働くたちが安全・健康に働けることを?指して活動する当事者とサポーターによる団体。

(p.95-P.97 記事抜粋)

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