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書評③『人新世の「資本論」』/『カール・マルクス「資本論」(100de名著)」(斎藤幸平著)
市民セクター政策機構理事長 加藤好一

季刊『社会運動』2021年7月【443号】特集:ワーカーズ・コレクティブ―労働者協同組合法を知る

 私は40年前に、日本で初のワーカーズ・コレクティブ(以下「ワーカーズ」)の事務局長という仕事にかかわりました。ワーカーズは原理的に労働者協同組合ですが、当時は日本で馴染みが薄く、困惑した経験があります。斎藤幸平・大阪市立大学准教授の著作(『人新世の「資本論」』/『カール・マルクス「資本論」(100分de名著)』)のようなテキストが当時あったならと、つくづく思います。
 斎藤理論は、今後は貨幣論、国家論などに広がるようですが、これまでの理論の中心は「資本主義からの脱却」であり、システム・チェンジ(脱成長)、「コモンの再生」等でした。本稿ではコモンの解体と再生に絡めて、労働者協同組合(ワーカーズ)について考えてみます。

 

労働者が持っていた何が解体されたのか

 

 高名なマルクス経済学者の宇野弘蔵は、ある本のインタビューで「資本主義の特殊性」を問われこう答えています。「全経済を商品形態をもって処理するという点。それは労働力を商品形態としているということが軸になっている。……だから、労働力の商品化をなくするということが社会主義の基本的問題となる」
 この「社会主義」という言葉は、斎藤理論的に「アソシエーション」と読み替えますが、そのような社会では労働力が商品化しないと宇野は説いています。労働力が商品化しない労働のあり方とは? その主たるものこそ労働者協同組合です。
 斎藤理論は「資本主義の暴力性」を強調します。この暴力が過剰に発動されたのが、コモンの解体をともなう産業資本形成の歴史的経緯においてであり、この暴力は国家と連動していました。マルクスは『資本論』第一巻の「いわゆる原初(本源)的資本蓄積」(第24章)でこれを詳述し、「いわゆる原初的資本蓄積は、生産者と生産手段の歴史的な分離過程以外のなにものでもない」と断じています。この結果として労働力商品が誕生しました。

(中略)

 自治・自律の原理を貫きながら、生協や農協など、すでにある協同組合同士、さらには小規模事業者等とも連携し、地域協同社会(協同の多軸重層化)に向けて、なにが可能かの議論と実践を強めるべきです。労働者協同組合法の成立を「コモンの再生」につなげること。これが私たちの課題です。

(p.80-P.82 記事抜粋)

 

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