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市民セクター政策機構

市民セクター政策機構 市民セクター政策機構は、生活クラブグループのシンクタンクとして、市民を主体とする社会システムづくりに寄与します。

①まだまだ増やせる地域の自然エネルギー(環境エネルギー政策研究所主席研究員 松原弘直)

季刊『社会運動』2021年10月発行【444号】特集:再生可能エネルギー――気候危機と生活クラブ

10年間に2倍 日本の自然エネルギー

 

─日本でも自然エネルギーの割合が増えてきましたが、どのような現状なのでしょうか。

 

 環境エネルギー政策研究所(ISEP)(http://isep.or.jp)では「(速報)国内の2020年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況」(http://isep.or.jp/archives/library/13427)を発表しました。2020年度の全発電電力量における自然エネルギーの割合は21・2%で、前年の19・2%からさらに増加しています(図1)。内訳は太陽光8・9%、風力0・9%、バイオマス発電3・4%、地熱発電0・3%。水力は昔からあるダムを使った大規模水力と小水力を合わせて7・8%です。とくに太陽光は2010年の20倍近くに増えています。
 10年前まで日本の自然エネルギーのメインは水力発電でしたが、2012年から始まった固定価格買取制度(FIT)により太陽光発電が急激に伸びました。ヨーロッパではまず風力発電が先行し、太陽光発電に広がるので風力が主流ですが、日本は太陽光発電に偏っており、世界的に見ても非常に珍しいケースです。日本の太陽光の設備容量は、2020年末には中国、アメリカに次いで世界第三位で、7000万kWほどです。
 風力発電が伸びないのは国のエネルギー政策の影響です。大型の火力発電と同様に1万kW以上の風力発電が環境アセス法の対象とされたので、手続きに5?6年もの長い期間を要することがあります。そして多くの場合、人口の少ないところに建てるので、発電された電気を利用者に届ける送電線の容量が小さく(電力系統が弱く)、接続が制限されることがあります。それに比べて太陽光発電は個人でも手軽に始められ、環境アセスの制限もないため、都市部に近接する電力系統が整ったところで次々と広げることができて自然エネルギーの主流となりました。
 しかしFITによる買取価格が徐々に下がり、入札制度が始まり、系統接続にも制約が出始めて、太陽光発電の伸び率は鈍化しています。2019年にはじめて風力発電の伸び率(12%)、地熱発電の伸び率(13%)が、太陽光発電の伸び率(6%)を上回るなど、今後自然エネルギー導入のバランスに変化が生じる可能性があります(図2)。
 この10年で自然エネルギーが全体の電力供給量に占める割合は、2倍になりました。とはいえ太陽光の設備を見ると、認定されても稼働していないものがまだ3割ほどあります。風力も環境アセスなどで時間がかかり、未稼働の設備が多い。木質バイオマスについては、国内の森林資源を利用した設備が増えていますが、海外からの燃料の持続可能性の問題もあります。このように自然エネルギーの導入には、まだまだ多くの課題があります。

(p.117-P.120 記事抜粋)

 

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